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「ケータイ小説とネットの関わり」
ケータイ小説家 サトインタビュー

カテゴリー: 子どもの利用実態

子どもは大人を受け入れようとしている、大人は?

ケータイ小説という新たなジャンルが生まれ、書籍化、アニメ化などそのニーズは高まっている。ケータイ小説家であるサトさんのストレートに発せられる言葉からはケータイを取り巻く環境に対して強いメッセージが込められている。

作家プロフィール:サト
2008年6月『ご主人様と私』(アスキー・メディアワークス刊)でデビュー。爽やかなタッチで描く等身大のラブストーリーが人気。

ケータイ小説を執筆し、書籍化された方々は"ケータイ小説家"と呼ばれますが、実は本当に普通の学生さんやお勤めをしているお嬢さんが多いのです。ケータ イ小説を書いている方々が、どのようにしてインターネット上に情報を発信し、コンテンツクリエーターとして活躍するようになったのか。それを知ることに よって、多くの若い方々がどのように自己表現ツールとしてケータイを利用しているかが見えてくるのではないでしょうか。

彼女たちは、ひたむきに自分たちの気持ちや心にあることを、物語を通じて表現しています。きっとケータイがインターネットにつながっていなかったら、この 心の表現を同世代の若い人たちと共感しあうということはなかったと思います。彼女たちのとても素直で自然な語りをぜひ聞いてみてください。

ケータイは、いつからもっていてどのように使っていますか?

—いつごろからケータイを持ち始めました?

サト:家が高校からじゃない(携帯電話を持つことが)とダメだったので、高校一年からです。

—今はおいくつですか?

サト:今は二十歳です。

—じゃあ携帯電話を持ち始めて5年くらいですね?

サト:そうですね。

—周りの友達は中学から携帯電話を持っている人も多かったですか?

サト:中学からの人もいるし、高校入ってから持っていない人は2、3人でした。

—中学のときから小説を書いていたんですよね?最初はノートに書いていたんですか?

サト:いや、書いてはいなくて、頭の中で考えていました。

—読むのは?

サト:読むのは全然。読書感想文に書く時ぐらいしか(本を)読んだことがないです。

—映画とかテレビ、マンガは好きですか?

サト:映画がすごく好きです。テレビはあんまり見ないんですけど、マンガは小学校低学年ぐらいから読んでました。最初はギャグマンガばっかりで、だんだん少女マンガに。

—ケータイはどんな風に使っていました

サト:普通に。

—どんなふうに普通に使っていたの?

サト:友達とメールしたりとかですね。

—インターネットは利用していました?

サト:そうですね。いや、でも絵文字とかダウンロードするためにサイトに飛んでみたりとか、そんなぐらいですね。

—じゃあ、主にメールとか電話で使っていてインターネットは、あんまりという感じですか?

サト:そうですね。

—それが何故突然、ケータイ小説 ※1 を書くことになったのかしら?

サト:(ケータイ小説の)存在を知らなくて、友達が教えてくれて、こんなのがあるんだよって。もともと(小説を)書きたかったんですけど、それまで使っていたパソコンよりケータイの方が身近に持っていたので。

—パソコンはいつごろから使い始めましたか?

サト:小学校の5年か6年から。

—じゃあケータイ使うよりもパソコンの方が先?

サト:そうですね。

—インターネットはもともとパソコンから利用していたんですか?

サト:パソコンのときは(書いた小説を)フロッピーディスクに保存していて。(今、ホームぺージにある作品は)パソコンで書いていたものとは内容が全然違うんですけど。


●現在の中学生から高校生の子どもたちにとって、初めての自分のインターネット専用端末はパソコンではなく"ケータイ"です。パソコンは家庭にはありますが、自分専用のパソコンを持っている子はまだ少なく、ケータイを持った時に初めて自分専用のインターネット接続機なのです。

しかし、保護者の方は、インターネットはパソコン、ケータイは電話とメールと認識し、ケータイがパソコンと同じようにインターネット環境に接続可能であることを把握できないままケータイを与えていることが多いのです。


—ケータイで書くときは最初に考えてから打って(打ち込む=文字を入力する)いるの?

サト:考えて打つ時と、すごく頭の回転の調子が良い時は考えながら打っていくみたいな。それで最後に確認して載せています。

—書きながら考える?

サト:基本的に書きながらだったんですけど、最近、忘れちゃうんで、おおまかな内容をノートに書いています。それを見て、打っているうちに考えながら。

—ストーリーが出来るまでどのぐらいかかりますか?

サト:半年ちょっとです。

—一日どのぐらい書くの?

サト:書けないときもあれば、6~7ページ書くときもありました。

—学校から帰ってきて書いていたの?

サト:やることをやって、寝る前とかにゴロゴロしながら書いていました。

—いつごろから書き始めました?

サト:高校の2年の終わりくらいですね。

—『恋空』 ※2 が流行っていた時期ですか?

サト:そうですね。友達が最初、『恋空』か『teddy bear』 ※3 が良いからって教えてもらって。

—それは読んだ?

サト:読まなかった(笑)。小説が読めなくて。読むより書いているほうが好きなんで。

—ほかのケータイ小説は全然読まない?

サト:読まないです(笑)。

—その頃、まわりのみんなはケータイ小説を知っていました?

サト:知っている子は知っているんですけど。知らない子は知らないという感じで。

—どんな子がケータイ小説を知っていました?

サト:活発な子が多かったですね。ホームページ(以下、HP)とか立ち上げたりするのも。

—みんなケータイからインターネットを利用するの?

サト:そうですね。パソコンを持ってない子が多いので。あと、授業で、パソコンでHPの作り方を習ったんですけど、あまりにもごちゃごちゃして難しい感じなので。こういうケータイのサイトだと作り方から載っているし。

—今の学校の友達はどんな感じで使っています?

サト:学生はサイト、HPをつくる子が多いです。歳をとるにつれて、写真を載せるのが面倒くさくなって、ブログに移る子とかが多いですね。

—女の子だとケータイではHPが一般的だと思うけどブログも書いているの?

サト:ケータイのHPはリンクがあるから楽しかったりするんですよ。大人になるとHPをやる人が少なくなって。だんだん知らない人に知ってほしくなくなるし。今は知っている人だけにブログを公開しています。

—SNS ※4 (ソーシャル・ネットワーク・サービス)は? たとえば、mixi(ミクシィ)とか。

サト:mixiはみんなやっています。でもmixiだけをやっている人と、それ以外にもやっている人が半々ぐらい。

—友達とはインターネット、メールでつながっている感じ? 地元の子とのやりとりは?

サト:メールはあんまりしないです。年末とか帰る時期になると「いつ頃、帰るの?」みたいなことはやりますけど。ブログで帰る時期とかを書いて連絡もらう感じ。

—こっち(専門学校)のお友達は?

サト:個人的なブログを教えてないです。mixiとかはみんなやっているから教えていますけど、個人的なブログは地元の友達にだけ教えています。

—ブログとかSNSを使い分けている時は、何人もの自分がいる感じ?

サト:そういう訳ではないですね。地元だと方言出しまくって、思っていることも書けるけど、mixiは学校の友達もいるんで。

—オフィシャルとプライベートを使い分ける感じかな?

サト:そうですね。

—ブログはクローズですか?

サト:クローズではないんですけど、友達だけに教えて、周りには探されないようにもしています。

—一日どのぐらいメールしたりインターネット見たりしますか?

サト:自分からメールすることはあんまりないんで、向こうから届かないとメールしないし、メールもらえばずっとしているし。電話はあまりかかってこない。メールが届くことはありますけど。

—ところで、パソコンでメールします?

サト:必要最低限のときしかしないですね。

—サトさんはケータイを使っている方だと思いますか?

サト:使っていない人から見ると使っていますけど、ニコ動 ※5 とかにはまっている人から見るとそれほどではないと思います。

—動画にはまっている子は多い?

サト:外見はオタクじゃないけど、中身がオタクの子はこっそり見ているみたいですよ(笑)。

—動画を作ったりとかは?

サト:全然しないです。


●「ケータイ小説作家でも、インターネットの世界に没入することなく適度な距離をもってネットに接していることがよくわかります。 大人の感覚では、ホームページを立ち上げ、小説を書き、コミュニティを創り、運営していくことはかなりハードルが高い感じがしますが、若い皆さんにとってはとても自然なアクションなのではないでしょうか。」

※1 携帯電話を使用し、執筆、閲覧される小説のこと。携帯電話という画面上で閲覧するコンテンツであり、会話形式をとった小説が多く、またスペースも表現方法の一部として用いられ、書籍上の小説とは形態が異なる。単純に携帯電話を経由した電子書籍とケータイ小説とは区別される。筆者、読者の中心は、いずれも女子中高生や主婦、OLである。また、ケータイ小説サイトでは、小説を書くサービスだけでなく、掲示板など読者からのコメントを受け付けるサービスを同時に提供しているサイトが多く、筆者が読者の意見を聞きダイレクトに小説の内容に反映させ、読者と共にケータイ小説を執筆していくことも可能である。多くのケータイ小説が集まるポータルサイトとして、鎌田が属する株式会社魔法のiらんどが運営する『魔法の図書館』ほか、スターツ出版株式会社運営の『野いちご』などがある。

※2 こいぞら。原題は『恋空~切ナイ恋物語~』。著者:美嘉(みか)。2007年に映画化、2008年にはTVドラマ化された人気ケータイ小説。

※3 テディベア。著者:べあ姫。『恋空』と並ぶ人気ケータイ小説作品。

※4 リアルでの知人同士のネットワークをインターネット上でつなげたコミュニティサービス。当初は紹介制のクローズな環境が多かったものの、最近はオープン化が進んでいる。

※5 株式会社ニワンゴが提供している動画共有サービス。非同期でのコミュニケーションが可能で人気を集めている。

ケータイはどういった存在ですか?

—サトさんにとってケータイ自体はどういう存在ですか?

サト:執着とかはないんですけど"相棒"みたいな感じですね。

—何の相棒?

サト:私の場合は小説を書いているので、(ケータイを)けっこう気にしたりはしますけど。もしケータイ小説をやってなかったら、あってもなくても大丈夫。

—表現のツールとしての相棒という感じですかね?

サト:そうですね。あとは目覚まし(笑)。

—ケータイは可愛く飾っていますか?

サト:前までプリクラとか貼っていたんですけど、最近、新しくして。ドコモの、何か最近、CMしている...。初めてドコモにしたら全然分らなくて。

—サトさんはお風呂の中にもケータイ持ってく?

サト:それはないですよ。後で拭くのが面倒くさい。メールとか逆にちょっと止めたぐらいの方が楽しい。

—もしもケータイがなかったらどうでしょう?

サト:ケータイがなかったらケータイ小説に出会ってはないと思うんで。ひたすらパソコンに打っていたのかなって感じで。自分で物語を作ってたろうけど、サイトは作ってなかったかなと思います。

ケータイを使っていて、困ったこと、負の面はありますか?

—ケータイを使っていて困ったことは何かありますか?

サト:一回、高校生の時に「こういうサイトに登録したのに、登録がまだ解除されてないから、いくらいくら払わないといけない」っていうメールがきたことはありましたけど。

—変な人とかに誘われたことはない?

サト:そういう事は、なかったんですけど。知り合いの人ですが、新しい携帯にしたら、前に使っていた人がやくざ関係の人で追われていたみたいで、それで怖い電話がかかってきて。その友人は、そういうのを怖がらない人だったんで、「違いますよ」って教えたら、相手の人は納得してくれたみたいなんですけど。そういうことを聞くと怖いなと思います。

—逆にケータイに支配されちゃうとかはないですか?

サト:そういうことはなかったです。

—学校の中でインターネットについて学んだことは?

サト:まだ、私たちが中学生くらいの時は、ケータイをクラスの半分以下ぐらいしか持ってなかったので、そういう授業は特には、なかったんですけど。ただ、出会い系とかで何十万とか請求されたって話が全校生徒の話し合いみたいな時に出たりして。出会いをネットに求めるのはどうかなぁって。

—学校の中では特に情報モラルとかを学んだことはない?

サト:学校の中で情報処理の時間にウイルスとかハッカーとかについては勉強しました。モラルとかについてはなかったです

—自分が今、中学生ぐらいだったらケータイとの付き合い方はどうかな?

サト:普通にしていたと思いますけど。特に学校で習ってなかったけど、周りにこういうトラブルにあった人がいたからこういうことに気をつけよう、みたいなことはありました。こういうメールが来たけど携帯の会社の名前が入ってないと偽物らしいよ、とか。

—自分達で学んできているんだよね

サト:そうですね。


●ケータイという大変身近なツールが、情報発信の有能な道具となること。そのことに意味があることがよくわかりますね。

今の中学生や高校生は、授業でインターネットの危険性やケータイのことなどを授業で勉強している場合が多いですが、サトさんの世代は、ほとんど学校で正式なネットに関する勉強をしてない世代だと思います ※6

この世代の若者たちは、自分たちでインターネットを利用しながら自力で学んできた、サバイバルな世代です。

この世代の子どもたちは、情報科という授業は受けていますが、情報リテラシーやモラルについて正式に学ぶことができなかった世代でもあると思います。情報モラル教育は、まだまだ遅れています。徐々に整備されていくと思いますが、啓発教育の機会をもっと早いうちに、広く普及していかなければならないと感じます。

※6 魔法のiらんどが実施した2007年12月webアンケートで「ケータイルール・マナーを学習したことがありますか?」という問いに対して中学生以下は学校で習ったと答えた割合が40%近くなっている。一方で高校生以上では学校で習ったと答えた割合が15%を下回った結果となっている。

ホームページ運営について

—自分のHPを運営する上で気をつけていることはありますか?

サト:変なサイトに簡単に飛べたり(飛ぶ=移動する)するじゃないですか。そういうのを減らそうと思って気を付けています。読者の人から、手紙をもらった際、結構低い年齢の人が読んでいたのを知ったので。リンクとかランキングサイトの誘いが来るんですけど、断って、変なページに飛ばさないようにしようと思っています。

—健全な感じで運営しているのね。

サト:一応(笑)。

—自分のHPを読んで貰うために努力していることは?

サト:最初、なるべく小説を多く更新しようと思って、頻繁に更新していたんですけど、今はあまり更新してないです...。日記やブログ的なものを更新してみたり、イラストを描いてみたりしました。

—素材を集めてじゃなくて自分で書いたんですね?

サト:素材屋サイトの素材を貼ったらバナーとかつけなきゃいけないので使っていないです。自分で簡単にできるので。

—HPの作りはすごいシンプルなんだよね?

サト:自分で真夜中に、部屋が暗い状態で見たりするので。背景を黒くして。夜寝る前に見るので背景が白いと目がチカチカしちゃうので(笑)。

—読者さんからの要望に応えることはありますか?

サト:更新情報のところに更新したページ数を書いてほしいって言われて。それまで面倒でページ数を書かなかったんですけど、確かに読んでいる方にしたら、そっちのほうが親切かなって思って最近は書くようにしています。

—読者さんとの交流は?

サト:最初はちょっとありましたけど。スレッドを立てたりもされて、交流できるのはすごく良いと思うんです。ただ、忙しかったり、私が面倒くさがりだったりで、あんまり返信できなくて。今、交流は全くないです。

—掲示板は?

サト:一応、(自分のHP上で)コメントを載せる場所もあるんですけど、掲示板は、ないです。

—読者さんからのメッセージというのはそれほど気にしてない?

サト:あんまり。貰えると嬉しいですけど、そうでないコメントもあるので、やる気がそがれちゃう。

—応援メッセージをもらったときはどうですか?

サト:それは嬉しいです。

—HPを運営して良かったことは?

サト:自分が書ける場所があったというのが嬉しかったし、人が見に来てくれるのでやる気がでるし。

—他にもHPをもつことで大きく変わったことは?

サト:そうですね。毎日が楽しくなりました。


●ケータイ小説家はケータイ小説を書くだけではなく、HPを作成し、コミュニティをうまく運営できないと、人気作家にはなれません。

自分の作品のファンの感想や意見やコミュニケーションを管理し、意見を参考にし、またサイト運営・・・作家でありながら、コンテンツ配信者であり、編集、営業も含め自分でプロデュースするのですね。

ケータイ小説の面白さは、多くの人たちの感想、コメントが寄せられることによって、ファンの方と作者さんとが交流しあいながら創作が進むということがとても大きな特徴でありメリットです。

今までにない形です。ケータイ小説を書く若い人たちは自分で意識している、していないにかかわらずみんな大変高いレベルを要求されるインターネット上の情報発信者、サイト運営者、コンテンツ配信者となるのです。インターネットの専門知識をあまり理解していなくても、彼女たちは直観的に、感覚で理解しているようです。

ケータイ小説を書き始めた理由

—では、ここで、サトさんがケータイ小説を書き始めた理由を教えてください。

サト:最初、マンガを描きたくて。でも難しいじゃないですか。人だけじゃなくて背景も描かなきゃいけないからあっけなく挫折して。でも何か書きたくて、小説なら簡単だから。

—それは、他の人のHPの小説を見てこれなら書けそうって思ったんですか?

サト:少し読ませてもらって。こんな感じなんだというのを読んで。

—小説を書いているときは楽しい?

サト:何か、ノレる話とか楽しそうだなとか想像できているときは楽しいんですけど。書いても終わりが見えない話だとなかなか...。

—実話を書く人も多いけどサトさんの場合はどうですか?

サト:実話ではないです。

—自分の経験も入れず、全部創作なんだよね?

サト:でも現実に暗い気持ちの時に書いたら、暗い路線にもいきます。

—学校生活の中で小説を書いて良かった点とかは?

サト:秘密があるのが楽しかったりします。女の子とかが、たまに、自分の作品のこと「次、どうなるんだろう」って話していたりするのをこっそり聞いたり。知らない顔して聞くのが面白かったり。
後は何ですかね...何だろう、何か、うんと自由な場所というか、余裕を持てる場所なので。現実で焦っていても書いているときは楽になれるというか。

—実際、学校生活の中で辛かったりした訳ではないんだよね?

サト:それはないです。

—普通に学校生活の中で落ち込んだ時とかに書くことで自由になれるということかな?

サト:先生とけんかしたりとか、そういうときはイライラするんですけど。先生に知っている風なことを言われるんだけど、「何も知らないくせに」と言い返しそうなときもあるんです。

—自分は違うんだぞっていう感じかな?

サト:自分は先生が思っているような人間とは違うというのを(先生が)知らないのが嬉しい。

—余裕とか、自信が持てるのかな? 友達はサトさんが小説を書いているのを知らないんだよね?

サト:知らないです。言うつもりもないです。

—今の学校の友達もみんな知らない?

サト:友達は一人も知らないですね。

—一切秘密ですか?

サト:そうですね。

—秘密にしているってどんな感じ?

サト:私は、楽しいです。

—友達にケータイ小説書いてみたらと勧めたことは?

サト:ないですね。

—高校生の時はテスト期間中とかどうしていたの?

サト:親とかに小説を書いていることを知られたら、テストの点が悪かったら絶対そのせいにされるじゃないですか。やることもやっておきたいんで、勉強の時は更新しないときもあったし、読者の人にはこういう事情なんでって書いて更新を少なくしたりとかしていましたね。

—お母さんにも秘密だったんだもんね。

サト:(何かの時に)ケータイ小説を書いているせいだって言われるのが目に見えていたので。

—成績悪くなったりはしていない?

サト:いつも上がったり下がったりを繰り返していたので、変わらずでした。


●サトさんから、なぜ書くに至ったかの理由を詳しくお聞きすることはできませんでしたが、サトさんが喜びや達成感を感じながら書いていること、また秘密を持っていることの楽しさや自信、やりがいなどを素直に表現してくれていると思います。

書籍化されたことでの変化

—お父さんとお母さんは、今はサトさんが小説を書いていることをご存知ですよね。書籍化の時に初めて知ったのかな?

サト:はい。最初、意味が分らないって(笑)。

—書籍化の話が来た時はどう感じました?

サト:「あぁ、はぁ~」みたいな。特に何も考えずにやっていたので。そういうことがあるのを知らなくて。それで、魔法の図書館のトップとか見て、こういう事もあるんだな、みたいな。

—魔法の図書館のポータルトップを見に行ったということ?

サト:トップを見たことがなくて。こういうサイトがあることもあんまり知らなくて。ランキングもよく分らなかったです。

—書籍化されたのはいつですか?

サト:2008年の6月ですね。

—お姉さんにもそれまで秘密だった?

サト:秘密で。メール打っているとしか思わなかったんじゃないかな。電池パックがパンパンになって、ケータイが変形しちゃって、お母さんに「何これ?」って言われたことはありましたけど、何も変に思われることもなくって。

—書籍化されたことで変わったことは?

サト:特にないです。

—嬉しくはなかった?

サト:ランキングを見ないように、見ないようにしていたんで。

—見ると気になっちゃうの?

サト:気になっちゃいます。あとやる気にも比例しちゃう。

—書籍化されて読者の方の反応は?

サト:そうですね。反応もありますけど、誹謗中傷の数も増えてきたので、それで書きこみのスペースを減らしてという感じですかね。

—今はケータイ小説家って自覚みたいなものはありますか?

サト:特にないです。けど、高校の時に、友達の日記の題名に自分の本のタイトルがもじった感じで使われていたのを見て「私が書いているとは知らないだろうな」って思って楽しかったです(笑)。

—本屋さんで書籍化された自分の小説を見たときは?

サト:不思議な感じでした。お母さんが「ないのかな」って探すのを「やめて!やめて!」って。地元の本屋さんで探そうとするから「もういいから!」みたいな(笑)。

—お母さんは読んだのかな?

サト:読んでないと思います。読ませたくない。お母さんはインターネットは使わないんじゃないかな。お父さんはネットを使うけど、ケータイ小説とかは見ないです。パソコンも株とか釣りとかそういうのを見るくらい。


● サトさんにとって表現の場があることが、心のゆとりや自信につながっていることを理解できました。多くの子どもたちから魔法のiらんどに寄せられるメッセージの中にも、ホームページは自分の居場所、本当の自分、女の子である自分を表現できる場と送ってくれる子どもたちが多く、ケータイでの表現行為は子どもたちの生活にプラスに働くことはあってもマイナスではありません。また、書籍化された後も、とくに生活が変わることはないようです。書籍化は嬉しいけど、特別なことではなく、一生懸命表現していたことが一冊の本という形になったということなのですね。

将来の夢

—将来の夢について、ケータイ小説に関してとそれ以外のことについて教えてください。

サト:小説はずっと書き続けられたらいいなと思います。将来的に自分は何になりたいとか、まだ、はっきり決まってはいないんだけど、好きなことが出来る生活を送りたいので、そういうふうに生活できる経済力も持ちたいし、しっかりとした大人になりたいなと思います。

—書くことを職業にとは考えないの?

サト:職業にできたら幸せなんだろうと思いますけど。でもずっと書き続けることも同じくらい幸せですよね。

—マンガの原作を書こうとかは?

サト:考えられたらすごいですね。自分の小説がマンガになったらおもしろいでしょうね。

—マンガ化された作品もありますよね? その時はどんな感じ?

サト:ニヤニヤが止まらなかったです(笑)。

—今後、どんな作品書きたいですか

サト:絶対にハッピーエンドがいいんですよ。楽しい話が書きたいです。男の子目線で書いてみたいです。自由に、いろいろ書けたらいいなって。

—自分が男の子になって想像して書くのか。周りの男の子たちを見て書くの?

サト:そうですね。そういうのも含め、男の子ってどういうこと考えているのか分らないんで。その辺が難しいですね。

—大人の批判を聞いたことありますか? ケータイ小説に対する批判。

サト:ないです。大人じゃないけど、すごく冷めている子に「こんな話ありえないし」って感想を書かれたこともありますけど、あり得ないからみんな読んでいるんであって。あり得る話を読んでも面白くないし。

—瀬戸内寂聴 ※7 さん知っていますか? 瀬戸内さんのケータイ小説があること知っています?

サト:ニュースで見ました。この人も書くんだ!って。全部読んだ訳じゃないけど、すごい少女っぽい感じの内容だったんで、瀬戸内さんも女の子なんだなって(笑)。

—瀬戸内さんも書くんだって驚きましたよね?

サト:ちょっと親近感がわきました。

—物語をすべて書き終えた時には?

サト:放心状態に近い状態ですね。もう終わったのかぁって。

—次に至るまでは?

サト:次を考えてなくて。ひとまず終わったことで達成感でした。

—また、次の話も自然に生まれてくる感じなのかな?

サト:そうですね。

—サトさんの作品には『夏色』 ※8 みたいにテーマが先にあって書かれたものもありますよね。お題をもらって書くというのはどんな感じ?

サト:すごく緊張します。締切もあるので、大丈夫かなとかプレッシャーで書けなくなったりっていうのもありましたけど。『夏色』は、お風呂上りにタオルでガシガシ髪の毛を拭いているときにすんなり出てきました。


●奇しくも、瀬戸内さんは、初めてケータイ小説を書いた時に「秘密」というときめきを感じられたと、ある講演で表現されていましたが、サトさんも自分が小説を書いていることが「秘密」であり、ひそかな喜びと表現していました。これは、女性共通のときめきなのかもしれません。書くこと、表現することは、人生の喜びであることがサトさんの表現から伝わってきます。けっして職業として考えているのではないということがとても自然に伝わってきます。

※7 せとうちじゃくちょう。小説家。2008年「ぱーぷる」の名前でケータイ小説を執筆、刊行。プロの作家がケータイ小説を書いたことで話題になった。

※8 「夏の恋」をテーマにした短編小説

子どもたちへのメッセージをお願いします

—今、大人がケータイを持つなと言ったり、ケータイ小説も大人から見ればあまり良くないと感じる部分もあるじゃないですか、ぜひ後輩達にメッセージというかエールを送ってもらいたいんですが。

サト:あまり、束縛されずに正しく使ってほしいですね。余裕ある使い方をして欲しいです。メールに縛られたりとか、ケータイ小説を書いていると余裕がなくなっちゃう時もあるけど、五分五分ぐらいで。休みのときはすごく更新できるけど、平日はやることをやってから、みたいな感じで使ってほしいです。

—大人たちからの、「ケータイは良くない」という声に対しては?

サト:ある程度の免疫というか、大人になってから、いきなり良くないサイトとかに触れるほうが危ないと思います。友達同士でトラブルについて話したりとか、身近な大人達の経験談もありますし。実際に使っているほうがより身近に感じて、怖いところを避けるようになりました。

—大人が子どもたちを心配することに対しては?

サト:心配するのは良いけど、心配しすぎると逆に子どもをダメにするじゃないですか?。携帯を買うときに販売店の人に「フィルタリングサービスがあるんですけど、どうですか」って勧められて、よくわからずに「別に変なサイト見ないし、いいよ」っていったら(フィルタリングで)mixiが見られなくて。mixiが見られない!って解除しました。

—大人に対してのメッセージは?

サト:成長していく上で、子どもは大人のことを理解しようとしていて、大人とか社会とか受け入れられない部分もあるんですけど、それも、全部受け止める中で考える部分もあると思うんです。そういうことを繰り返して大人になるわけじゃないですか。

だから、子どもは大人のことを受け入れようとしているのだから、大人も子どもたちのことを受け入れてあげてほしいんですね。ケータイが悪いわけではないですけど、そういう知識をもっと一緒に子どもたちと考えていけばもっとよくなるじゃないと。


●サトさんが最後のメッセージを語っている時、私はとても心がゆれ、感動しました。ストレートにサトさんの気持ちを感じます。子どもたちは、自分のお父さんやお母さんも大好きだし、周りの大人たちを一生懸命理解しようとしていることは、小学校、中学校、高校で子どもたちの話を聞かせてもらったり、彼ら(彼女ら)に書いてもらったことを通し、ずっと感じていました。いつも子どもたちの優しさを感じるのです。本来分かってあげなければならない立場にあるのは大人たちです。

そのことをもっと大人は理解し、努力しなければならないと心から感じます。

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