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「いしかわ子ども総合条例改正について」
石川県県庁インタビュー

カテゴリー: 各地の取り組み(ケータイ所持規制) / インターネットの安心・安全をめぐる動き

「持たせない」という言葉の裏側

「いしかわ子ども総合条例」を実際に所管する石川県庁、条例改正に伴い県として、その周知活動や効果測定はいかにして行われているのか、現在までの活動から見えてきた課題などを含め伺った。

「いしかわ子ども総合条例」を実際に所管するのは、石川県健康福祉部少子化対策監室であるという。全国で初めての携帯所持規制条例を運用するにあたり、県ではどのような方策を取っているのだろうか。
今回は石川県庁にて、健康福祉部少子化対策監室子ども政策担当課長 清水健次氏、保護者に対する周知・啓蒙を担当する立場から教育委員会事務局 生涯学習課 課長補佐 宮﨑謙治氏、学校に対する指導を担当する教育委員会事務局 学校指導課 生徒指導担当 課長補佐 川内斉氏にお話を伺った。

条例のそもそも

—いしかわ子ども総合条例は、いわゆる「青少年健全育成条例」のようなものかと思うんですが、どうして少子化対策監室で所管することになったのでしょう?

清水:以前から青少年健全育成条例は別にあったんですけど、平成15年に「次世代育成支援対策推進法」が出来て、各都道府県で少子化対策のプラン作りをしなさいということになりました。そこで平成17、18年とプラン作りを進めてきたんですけど、ただプランを作るだけではなく、その実効性を高めるために、組織体制づくりを確固たるものにし、条例に恒久的な対策として位置づけていくんだという意味もあって、青少年健全育成、子育て支援、子どもの権利擁護及び若者の自立支援などを一本化して、平成19年に総合的な条例を作ったんですね。これが「いしかわ子ども総合条例」になります。

今回の条例改正には2つポイントありまして、いわゆる所持規制に係わる部分と、フィルタリング規制強化(保護者からの申出書がなければフィルタリングが解除できない)の2点があります。フィルタリングの部分は知事の提案、所持規制は議員さんの提案でありましたが、青少年の健全育成を旨とすることは同じであり、今回いっしょに改正がなされました。

—改正の内容に関してはかなり細かく精査されたと思われますが、メリット、デメリットはどのように考えられますか?

清水:所持規制に関する努力義務の規定は、青少年の携帯電話の使われ方について、保護者の方々に問題意識を持っていただくことへのインパクトが大きく、また、特に小中学生に携帯電話を持たせないという運動を地域で活動されている方には、よりどころになるかと思います。デメリットとしては、確かにこれまで他県の条例には規定されていない部分があるので、未知数のところはあります。

条例の周知の方法

—新しい改正ポイントの具体的な周知の方法は?

宮崎氏:パンフレットは小中学生の保護者、高校生の保護者向け2種類作りました。前者は所持規制について、後者はフィルタリングの徹底について、それぞれウェイトを置いた形としています。

保護者に対しては、昨年度も携帯電話に潜む危険性から子どもたちを守るために、フィルタリングの徹底と携帯電話の適正な利用を啓発のためにリーフレットを作成しています。これは昨年の夏休み前の保護者懇談会等で配布したもので、担任から直接保護者の方にお渡し頂き、説明もして頂きたいということで、同時に教員向けの解説用資料も作りました。

小中学生保護者向けパンフレット

高校生保護者向けパンフレット

—周知状況というのは、把握していらっしゃいますか?

清水:小中高校生の全保護者に周知をやっていただいております。さらに、今後は、あらゆる機会を通じて、理解を深めていただけるような努力をする必要があると思っています。

—他に取り組んでいらっしゃる周知方法はありますか?

清水:条例が変わりましたということで、ポスターを作っています。保護者に対しては、今後どのような行動をとるべきなのかということが見えづらい部分があるので、そこら辺を解説したリーフレットを作りたいなと思っています。

またフィルタリングについては、保護者の方々に申出書を出す手続きが新たに必要なので、事業者の方々にもその説明のためのチラシを販売店の店頭に置くような形で準備しています。

—事業者、販売店には対しては、行政の方からこうしてくれみたいな要請は出されるんでしょうか?

清水:まず販売店に来られるのは携帯電話を買おうという方なのですが、こういった条例が出来たので一回考えて下さいねという働きかけを事業者の方にしてもらうことは、求めていません。周知は行政できちっとやりますということなのですが、改正条例のリーフレットを店頭においていただくなどの協力はしていただくことになっております。

事業者の方々に関しては、法律に基づいて販売するのであればフィルタリングをかけて下さい、解除の申し出があれば理由をつけた申出書が必要ですよとお話しはしてあります。

—既に携帯電話を所持している子ども達はどうすべきですかね?

清水:条例は基本的に施行日以降の新たな契約者を対象としていますけど、条例の趣旨からいって、携帯電話を青少年の方が持つことをもう一度考えてほしい、これを契機に携帯電話の利用について考えてほしいと思っています。

持たせないということが全面に出ていますけど、条例の趣旨は青少年に利用させるにあたり、子どもの意識、理解度によって、保護者が責任を持って取り組んでほしいというのが基本です。特に小中学生に対しては持たせないことを基本として考えてはどうかということを、条例は言っているんだと理解しております。

—所持規制に関しては小・中学生が対象で、高校生はフィルタリングに関してだけの規制になりますか?

清水:所持規制については、小中高校生すべての保護者に年齢などに応じて考えてくださいというふうになっています。ただ、特に小中学生については持たせないことを基本に考えましょうとなっています。

条例の効果測定

—石川県全体で所持規制を行ってしまうと、比較対象が他県になってしまうので、条例の効果測定が難しくなってしまうのではないかと思います。石川県ならではの事情や特性を加味できないですよね。

清水:所持率が下がるのが目的ではなく、青少年が加害者、被害者にならないのが一番大事なので、そういったことが1件でも減ることが一番の効果かなと思っています。

—消費者センターや警察への相談件数も、効果を測る目安になりますか?

清水:警察の方ではいわゆる青少年に関わる事案が何件かあって、そのうち携帯電話がきっかけという事案が何件あってという統計はとられているので、その辺は参考になると思います。要は青少年が犯罪に巻き込まれないこと、加害者になったりすることはないようにということですんで、その辺は一つの指標にはなるのではと考えております。

—携帯電話、インターネットに関する意識調査などは行なっていますか?

川内:本県は平成20年10月に、公立の小・中・高等学校、私立の高等学校の児童生徒約13万人を対象に、携帯電話に関するアンケート調査を実施し、そこで児童生徒の利用実態が見えてきました。

また平成21年4月から、ネット上の巡視を行っています。本県の場合は、県立高校の情報技術に詳しい教員8名が4名1組で週に2回、半日かけてパソコンと携帯を使って、ネット上の巡視をしています。アドバイザーとして弁護士、県警少年課の方、携帯電話事業者にも加わっていただいております。

これによって、アンケート調査の数値からでは読み取れない子どもたちの携帯電話の利用実態が見えてきました。誹謗中傷、いじめの書き込みも若干ありますが、個人情報やふさわしくない画像などの掲載が多いです。

問題があると判断した書き込みについては、学校にすぐ連絡して、直接、学校の教員が保護者の協力を得て指導するようにしています。こういう直接的な指導の中で、情報モラルや規範意識を一つ一つ指導していくことが、本来の生きた生徒指導になると考えています。

情報リテラシーの教育プラン

—条例を文面通りに読めば、高校で携帯電話を持つことになると思いますが、特に小・中の段階で情報リテラシー教育のプランはありますか?

清水:よく子どもから携帯電話を取り上げといて、いきなり高校で与えてどうするんだというお話をお聞きしますけど、いずれどこかで持つわけですし、それがどの時点で必要かというのは難しいと思います。実際に、小中学生は持っていないのが大半で、高校生になって急に大部分が持つようになって、高校生が事件に巻き込まれてしまう形になっています。情報リテラシーに関しては、今ではパソコン、携帯電話でもインターネットの面では同じになっていますが、そういった教育というのはこれまでやってきたわけですし、持っている、持っていないにかかわらずリテラシー教育は必要です。

—リテラシー教育は、県として何かカリキュラムがあるのでしょうか?

川内:特別なカリキュラムはありませんが、学習指導要領に則り、小学校では道徳や総合的な学習の時間、中学校では技術・家庭、高校では情報などの授業で行っています。
実際に携帯電話で起こっている様々な諸問題について、具体的にこんなことが起こっているから、こういうことに気をつけようと、分かりやすく子どもたちに指導していくことが大切だと思います。

本県では平成15年度にも携帯電話の実態調査をやっています。その結果を踏まえて、小中学校では携帯電話の学校への持ち込み禁止、高等学校では使用の制限などについて学校できちんと校内ルールを設けるよう指導しています。

特に小中学生の場合は、保護者を対象とした非行被害防止講座などにおいても、有効性だけでなく危険性もきちんと伝えて、必要のない限り、できるだけ携帯電話を持たせないように慎重な判断をお願いしてきました。そのような状況の中で条例改正がありました。高校生については非行防止教室というのをやっておりまして、我々と県警が連携して携帯電話の危険性や情報モラルの教育を行っています。

—携帯電話と非行というのは、どういう関係にあるのでしょう?

川内:生徒指導担当の指導主事や関係者が集まった会議等では、携帯電話を使うことで子供たちの動きが非常に広域化しているという話は出ています。

—広域化というと?

川内:いつでも、すぐに連絡がとれることによって、今までは狭い地域の中で遊んでいた子供たちが、お互いに連絡を取り合うことによって非常に動きが広域化しているということです。一方で、携帯電話を使うと、子供の動きが保護者から見えなくなります。潜在化していくと言いますか、保護者の方も自分の子どもがどんな友達とつきあっているのか、見えにくくなっています。したがって、これまで以上に大人同士が連絡を取り合って連携していくことが大切になると思います。

—携帯電話を持たせている親は、非行被害も含めて緊急対策で持たせている面があると思うんですけど、それに変わるシステムなんかはあるんでしょうか?

清水:何回も繰り返しになりますが、持たせないことが非常にクローズアップされていますけれど、条例の中でも基本的に防犯や防災などから、必要があれば持たすことは当然としています。条例で持たせないことを強制しているわけではないので、代わりのシステムが必要ということにはならないのかなと思っています。

—夜道が暗いなどやむを得ない理由があればということですか?

清水:はい。

—やむを得ない事情の正当性を判断するのは、誰ですか?申出書を受け取るのは販売店になるわけですが。

清水:正当性の判断は、販売店はしません。保護者が自主的に判断することになります。

地域活動のあり方

—子どもたちの活動が広域化しているということは、地域の広い範囲で大人がちゃんと子どもを見ていく活動が必要になりますよね?

川内:そういうことになりますね。学校だけではなかなか対応しきれない。学校間の連携が必要ですし、それだけでは十分でありませんから、やはり地域や保護者に加わっていただき、連携の中で子供たちを見守っていくことが必要になっています。

—何か市民運動みたいなものは計画しているんですか?例えば長崎県では大規模な声掛け運動などが行われているようですけど。

川内:そういった市民運動が計画されているかどうかは、把握できておりません。

—第三者の大人が声をかけて不審者扱いされてしまう、いわうる「声かけ事案」の頻発と、地域の大人が子どもを見守るというのはうまくかみ合わない部分があると思うんですけど、そのあたりの対策というか手段はありますか?

川内:難しいご質問で、申し訳ありませんが、根本的な解決方法は思いつきません。

—石川県では不審者の声かけ事案はあまりないんですかね?

川内:時々あります。車で近づいてきた不審者に、下校中の小学生が声をかけられるということがあります。重大な被害に及ばないまでも、声をかけられたということは時々あります。

注目を集める条例

—県としては、所持規制について全国から注目されて、困ったなという感じなんですか?

清水:確かに見た目というか、感覚的には条例で持たせるな、ということを規定するのは非常に特異というか、珍しい規定であるので、注目されるのは仕方がないかとは思います。ただ、中身は持たせてはいけないという規制ではないので、何らかのアクションを起こす必要があると県民の方々にアピールする効果は大きかったのかなと思います。

—「持たせない」という言葉自体にインパクトがあるんですかね。

清水:やっぱりマスコミなどで、何で持たせないんだという報道をされます。条例では何が何でも持つなとは言っていないので、そこは正直、誤解されている面もあります。あまり知られていないのは、子ども向けケータイがあるんですよね。メールやネットが使えないとか、そういった端末の情報もどんどん提供していくべきなのかなと思いますね。

—携帯だけではなく、今はゲーム機などネットに繋がるいろんな情報機器がありますけど?

清水:問題意識としてはありますが、今は普及率の高い携帯電話にターゲットを絞っています。

—条例見直しの期間とかきっかけは、何かもうけられているんでしょうか?

清水:条例そのものが、「3年たったら見直しますよ」となっていますので、その期間で見直すということも想定されます。また青少年インターネット環境整備法が見直しされて影響を受けるならば、見直しをする必要があるかもしれません。

無関心な保護者への対策

—我々も保護者の方に情報リテラシーの普及・啓発シンポジウムをやっていますけど、なかなか保護者の方に関心を持ってもらうのは難しいですよね。

清水:そういうところに参加される方は、関心を持っていただいているのでよいのですが、問題は、無関心で来られない方に本当は周知すべきだと思います。

—私が模索した中では、入学準備説明会あたりが一番保護者が全員集まって、話もしやすいんじゃないかと思うんです。

川内:おっしゃるとおりですね。高校では、仮入学の機会などを利用して保護者に、生徒指導や特別活動などの高校生活の基本を担当の教員からお話しすることがあり、携帯電話についても話をする学校があると聞いています。

—全県的な活動としては、今のところないんですよね?

川内:今のところないですが、今後は対応していく必要があると考えています。

—石川県が一番やらなくちゃいけない立場のような気がしますけど。

川内:そうですね。携帯電話の所持率が高い高校生に対しては、そういう方法が効果的だと思いますが、小中学生に対しては、やはり地域の理解と協力も大切ではないかなと思います。本県では野々市町が「小中学生に携帯電話を持たせない運動」に取り組んでいるように、基本的には地域や保護者の方々の気運が大切であり、この条例が子どもの携帯電話に関する諸問題について大人が考えるきっかけにもなればと考えています。

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