このページの本文へ

このページの位置:
ホーム > 各地の取り組み(ケータイ所持規制) / インターネットの安心・安全をめぐる動き > いしかわ子ども総合条例改正について

「いしかわ子ども総合条例改正について」
石川県議会議員 盛本芳久氏インタビュー

カテゴリー: 各地の取り組み(ケータイ所持規制) / インターネットの安心・安全をめぐる動き

携帯を持たせないことへの違和感

石川県議会議員 盛本芳久氏

「いしかわ子ども総合条例」に反対討論した盛本芳久県議会議員に、条例に対しての違和感、条例化の問題点、今後について意見を伺った。県内保護者から当惑の声が聞かれたという盛本議員は、条例が携帯所持率が他県よりも低いからすばらしいといったことになりかねないと危惧している。

小中学生に防災や防犯以外の目的で携帯電話を持たせないようにする保護者の努力義務を盛り込んだ「いしかわ子ども総合条例」。これを決めた県議会で反対討論を行なった盛本芳久県議会議員に、東京でようやくお会いすることができた。09年も押し迫った、12月20日のことである。
盛本氏は公立中学校の先生を経て、県教職組合役員から現職となった、教育畑出身の議員である。忙しい中を縫って、月10本程度blogのエントリーもご自身で書く。条例改正の経緯からその未来に至るまで、携帯所持規制反対派の立場からご意見を伺う。

条例改正の経緯

—所持規制を条例に盛り込むという具体的な動きは、いつごろ始まったのでしょうか?

盛本:議員提案の条例を作れるような議会にしていかねば、という話自体は2~3年前からあり、その中で、携帯電話の所持規制というのが出てきました。子どもたちと携帯の関係を考えて、何か条例を作っていこうと。

—いつぐらいのことでしょうか。

盛本:条例が出来る1年以上前かと思います。その時点では継続した話にはならず、各会派の中で何人かが話をしている程度だったと思います。

—きっかけとなるような出来事はあったのでしょうか?

盛本:特にそういうわけではなく、自民党会派の皆さんがとにかく決めねばならない、携帯を持たせない、子どもを守る、と、こういう話になりまして、話は一気に進んだという感じです。僕らもインターネットと子どもについては、事件も問題もあるし、何とかしなければとは考えていました。しかし4月に国の法律が出来たこともあり、フィルタリングの話もあったので、いったん、様子をみて考えようとその時点では思っていました。

規制に関する条例案が自民党会派から出てきて、それをどうするか、という話し合いを行っていくなかで、これ(携帯の不所持を条例化すること)はちょっとなじまないな、という意見を言ってみたのですが、最終的には数で押し切られてしまいました。

—石川県では、議員提案で条例の改定を行うことはよくあるのでしょうか?

盛本:いや、ないですね。初めてに近いかと思います。県によっては相当作っているところもありますが。やはり自分達で条例を作るとなると、色々調べたり、他の法律との整合性も考えたりしなければならないから、事務局体制などいろいろ作らなければならないのですが、石川県では体制が十分に出来上がっていないのです。

条例に対する違和感

—努力義務とはいえ、条例になったわけですから、他県にも相当影響を与えると思います。これをどうお考えですか?

盛本:そんなにたくさん電話がかかってきたというのではないですが、他県からは「なに作ったの?!」、「ばかじゃねえの?!」という反応が一部ありました。僕も「そうやねえ」といってるんですが。それから県内の保護者の方からは、「こういった事情で持たせているのですが、それが悪いってことなのでしょうか?もう持ってはだめってことですか?」といった怒りというか、当惑というのは感じられましたね。

—携帯所持規制派の宮元議員は、上のお子さんが高校生なので、家庭の中で持たせる持たせないで、そうとうもめたそうです。

盛本:そりゃ、もめるでしょ。うちの子どもはもう大学まで卒業している年だけど、当時2人とも高校卒業まで持たせなかった、私は。うん、もちろんちゃんと話し合った上でだけど。

こういうことは親と子どもが相談して、話し合って決めればよいことだと思う。さらに条例によって話し合いが進むことが良いと言う主張もわからんじゃないんだけど、そしたらそういう買う買わないの問題を含めて話し合う、といったキャンペーンを県や教育委員会がやればよいのであってね。僕らはそういったことを条例でスパッと決めてしまうやり方に、違和感を覚えている。

—条例だけが一人歩きする状況ではなく、石川県議会での議論や経緯も含めて、全国に周知していくことが必要だと思うんです。

盛本:条例提案会派からすれば、ちょっときわどい条例を作ったことをアピールして、波及して、業者もあわてて対応、などというのが効果だというかもしれませんね。

条例化の問題点

—そもそも条例の目標としては、青少年が犯罪に巻き込まれないようにすることですよね?

盛本:もちろん、それはそうです。また、家でメールばかり打って、本を読むとか、友だちと遊ぶとか、勉強するとかいった時間が、携帯に食われているという話もある。そういうことは携帯がなければやらないわけだから、それも目標にはなるかとは思います。

—しかしそれは、効果測定が難しい目標ですよね。

盛本:それは言えますね。これもまたばかばかしい話だが、全国学力テストの質問項目にも、携帯電話所持が入っています。石川での調査はなくなるかと思うが、石川がいわゆる学力テストの点数が良いのは、携帯不所持のおかげだ、と単純にいいほうに彼らは結びつける。そういうこともあるかもしれないが、単純に朝ごはん食べたら成績がよくなる、みたいなね。そんなふうにして、「親は毎日朝ごはんを食べさせるように努力するように」なんて条例作るのと似ているな、なんて感じがするんだけど。そこまで決めるのかっていう。

—まあ、朝ごはんは作って欲しいと思いますけど、条例化というのは、ちょっと。

盛本:そうでしょう?そういう感覚なんですよ。だから要約すると、感覚の問題なんですよ。やっぱり、ちょっとねえ。今の進んだ市民社会の感覚とはいえない発想だと思うんだよね。もちろん教育界には、「だめなものはだめなんだ」という強制も教育には必要だとおっしゃる方もたくさんいるし、それも、まったく間違いとはいえない。学校で話し合いをしましょう、とか、親に呼びかけるとか、その程度ならいいと思っているのですが。

—呼びかけなら、昨年石川県PTA連合会が「原則、小中学生に携帯電話を持たせない」という宣言文を発表してますよね?

盛本:そうですね。そういった中で子供達自身が、「やっぱり、これは僕らにとって大切なツールなんだ」といえば、子どもに正当に表現させ、大人は受け止め、対等に議論して、ということが子どもを育てるということになると思っているんですけどね。一方的に、「だめなんや!高校になったら買ってやるし!」というのはちょっと。

条例の今後

—条例がスタートするにあたり、周知の動きはありますか?

盛本:県ないし、県教育委員会が、1月からはこうなりますよ、というリーフレットみたいなものを出します。この前、議会の委員会でリーフレットに、もっと「持たせない」ということを前面に書かなきゃいけないんじゃないか、といった自民党の方々の意見があったと聞いています。すでに持たないことになりました、とは書いてあるのですが、持たせないことが保護者の義務だと強調しようという話はありました。

ただ、それが町の中でもそういう話になっているかといえば、そうではないと思います。まあ、中学に入るとか、これから中三になるとか、そういった当事者の中では話題になるかもしれませんが、県民全体の大きな動きや話題にはならないかもしれません。

—石川県は、夫婦共働きが多い県なんだそうです。そんなことから子どもに携帯を持たせる家庭の事情もまた、あると思うんです。

盛本:給食費を払っていないのに、携帯を持たせるような家庭もある、なんて話もありますが、そうはいってもそうした家庭だからこそ、携帯をもたなければならないような事情があるのかもしれない。ぜいたく品だ、という見方がまだまだありますが、携帯でやっとつながっている親子関係のような、厳しい家庭環境だってある。簡単に所持することが悪、と決めるのは、やはりよくないと思います。

—今まで条例規制されたものといえば、本ですよね。有害図書規制と携帯が同じ視点で扱われるというのはどうなのでしょう?

盛本:むしろ悪いのは違法・有害サイトなのだから、違法サイトの指定に取り組むのはどうか、という質問をしたことはあります。まあ県単位では難しいとは思いましたが。

—今後、条例の改正部分の取り消しを求めて、何かなさいますか?

盛本:今のところ、考えていないです。ただこれからの先を、彼ら(自民党会派)はどう考えているのかと、質問はしました。ですがこれからさらに高校生などに広げるという展望などがあるようにもみえないし、かといって中学でスパッときるというのも、しっくりくる理屈がないし。これからその規制によって、どうしていこうという先が見えない。努力規定として条例化したものが、有名無実化していくのも困ったものだなと思うし。

僕らとしては今後、すっきりといろんな対策も採られ、情報リテラシー教育も行われ、保護者の意識も高まってきたら、条例を再び改正してもいいんじゃないかと思うんだけど、自民党の人が取り下げるとは思えないですね。

単に条例が出来たから、所持率が何%と、ただ数字を追いかけるだけになるのではないかと。石川県は他県より所持率が低いからすばらしいといった、そんなところだけにこだわるような結果になるのではないかと、懸念しています。

アーカイブ

ページトップへ