「インターネットの安心・安全について」
小僧com 平松庚三氏インタビュー
カテゴリー: 情報モラル・リテラシー教育 / インターネットの安心・安全をめぐる動き
2010年8月 3日 | 高橋誠
成熟していない日本の社会
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インターネットの世界はオープン。しかし、そこに自己規制があってもオープンな世界の一つである、そこに国家や警察が規制をかけることは憂慮を覚える、と述べる平松庚三氏。運営する40代を中心としたコミュニティサイトでは会員たちが自ら規範を作っているが、今回の規制についてどう考えているのか話を聞いた。
記事 #1
インターネットの安全安心に関する動きについては、自主的な取り組みで問題を解決を図る事業者、教育周知活動を行う学校、条例制定を目指す自治体など、昨今、各プレーヤーの動きが多く報道されている。コミュニティサイトではどのような対策が取られているのか、あるいは実態はどうなっているのか。
今回は、コミュニティサイト「小僧SNS村」を運営している小僧com株式会社 代表取締役会長兼社長 平松庚三氏にお話を伺った。
平松氏はライブドア(現LDH)の元社長で、私の元上司でもある。「小僧SNS村」は、シニア層をターゲットにしたSNSであり、アットホームな雰囲気が特徴。違法有害情報とは無縁の世界にも見えるが果たしてどうだろうか。
—小僧comでは、インターネットの違法有害情報に関してどのような方針で運営されていますか?
平松:ネットの良いところというのは、オープンであるところだと、僕は考えています。小僧SNS村は本当の意味でのオープンにしており、何にでもオープンにしているわけです。小僧SNS村のテーマは「50、60はハナタレ小僧。30、40はヨチヨチ歩き」っていうんですけど、小僧SNS村の利用者層は、50、60歳以下が半分以上で、平均が40の中間ぐらいです。で、大人のサイトなので、例えば公序良俗に反するというものは、ほとんどないんですね。それらしきものがあったとしても会員からは無視されるんです。だから問題になったことはないんです。ただ、数回、明らかにいかがわしい仕事をする女性がいて、強制的に退会させたことはありました。
また、明らかに個人ではなく、バックに反社会的勢力があるかもしれない会員がいたこともあるんですけど、それは内容についての改善を通告した上で会員資格の剥奪を行ったことはあります。だけど基本的に大人のサイトなので、本当にオープンにしているんだけど、特に問題は起こっていないんです。
その他にPVをかせぐために自分のブログにバナーを貼ることをしている人もいて、それは良いのかと業界をよく知っている人から言われることもありますけど、「いいんじゃないの」って言ってます。だってそういったサイトも、読むか読まないかは会員が決めるわけだから。
基本的にはインターネットの世界はオープンであるべきだと考えていますけど、大人ではなく、子ども達を対象としたビジネスをするならば、考え方が変るかもしれない。24時間パトロールはつけるでしょうね。
—コミュニティサイトのトラブルがあったこともあり、携帯電話上のコミュニティサイトの基準を第三者機関が設定し、認定を受けるといった仕組み作りが出来ました。それでもコミュニティサイトに大人が入り込むなどのトラブルが出てくることもあるんですね。
平松:そういったことは、モラルの問題なので、いくら法律を作っても、同じような事件は起こり得るんです。
—インターネットサイト上の規制が厳しくなってきている動きがあり、特に児童ポルノに関わるものは共通リストを作成して、規制される(ISPによるブロッキング)という動きが出てきています。
平松:これはプロバイダ(ISP)の責任で、彼らが基準を決めるべき。それぞれの倫理というのが、分からないわけですよね。倫理っていうのは、国でも違う、個人でも違う、時代によっても違う。日本だってつい、この前だったら女性のヌードがだめだったものが、地下鉄の中刷りに出るわけなんだから。
記事 #2
—インターネットの安全安心を目指し、一昨年安心ネットづくり促進協議会が立ち上がりました。
平松:協議会を作って自浄作用を高めていくのは非常に大切。ただ、こういった協議会にはアングラでやる人たちは入ってこないですよね。
でも、アングラで何か悪いことを行おうとしている人たちについては、あまり考えなくても良いのでは。それが、社会というものではないでしょうか。実社会を見渡すときれいなものだけではなく、悪いもの、例えば、印刷物、雑誌、DVD、ビデオの世界もあるわけです。社会とはそういうものなんです。
僕はポルノ反対派ではないんですけど。ポルノはポルノで見たい人だけが見ればいいわけですよ。この国においては、カップ麺とポルノが一緒にコンビニで売っているんですよ。コンビニで成人雑誌として棚が区別されていますが、逆に子どもたちに成人雑誌の存在をアピールしているようなものです。ヨーロッパでは、そういった成人雑誌はコンビニでは売っていません。ニューススタンドや専門店で売っているんです。
コンビニで簡単に成人雑誌を買えてしまう、そういう国の人たちがネットの世界だけに限定して規制を強めているのはどうしてでしょうか。大手コンビニが成人雑誌を置くことを容認しているわけですよね。
—東京都青少年育成条例案の中には、コンビニで書籍の販売をやめなさいといった内容も盛り込まれていたようです。この条例案ではマンガ、アニメに関して非実在青少年であっても青少年の健全育成にそぐわないものは、規制をかけるという部分がフォーカスされました。一方で、ネット企業に青少年の被害を誘発する事例を削除するような依頼も出すといったものでした。「Aちゃんかわいい」という内容もいじめにつながるからダメという内容です。これについては、3月議会で審議継続となり、6月議会で否決されましたが、今後も同様の条例を出そうとする動きがあります。
平松:国や官憲の力で規制するのは良いんだけど、何が良いのか悪いのか判断はするなと。そういう判断するならば、今のコンビニをどうにかしろと思いますね。ヨーロッパでは、店が別なんですから。日本は、差別化が出来ていないんですよね。アダルトを取り扱う店は区別されるという社会の仕組みになっているわけですから。学校の近くで作ってはいけないとか。
日本の場合、社会が成熟していないということが言えるのではないでしょうか。成熟度が低いから子どもと大人の世界は分かれていない。ヨーロッパだって思春期になれば、出入りする子どもも、もしかしたら中にはいるかもしれない、ただ、ポルノショップに子どもは入れないですよ。まず、店員が入れない。それが社会の成熟度なんだよね。
—SNS等のサイトでは、携帯電話の契約者情報から年齢認証を行おうといった動きもあります。
平松:携帯ではできるかもしれないですけど、パソコンではどうすれば良いんでしょうかね。
18歳以上のボタンを作っても、見たい17歳以下がいたら押すでしょう。社会全体で子ども達の見る目を教育しないといけないですよね。
インターネットというオープンな環境下では、厳しい基準を設置して、規制をかけるサイトがあっても良いと考えています。自己規制であれば、いくらでも。ただ、それを国家や警察が行うことに対して憂慮を覚えるんです。小僧にも、もちろん規定があるわけです。
オープンというのが建前であるが、自己規制があってそれはオープンの一つなわけです。その次に任意の団体があってそれで基準を作るというのは分かります。任意の団体ですし。
国家の権力が規制するということに関しては、憂慮を覚えますね。ここが今日の一番のポイントかなと思います。
携帯の方はキャリアで遮断できますよね。ただ、遮断しすぎちゃうとそこのキャリアの人気がなくなっちゃうかもしれないよね。ただ、スパムとか、スパムブロッカーだって不十分じゃないのにアダルトブロッカーなんて作ったとしても十分な対策をたてることができるのか?自分で少しずつ、アダルトサイトを登録して積み重ねていかなければならないですよね。
記事 #3
—小僧comでは最近「集客小僧モバイル」が好評のようですね。
平松:主に飲食店に使われています。雨が降ってお客さんが少なくなりそうな日など「今日お店に来てくれれば割引しますよ」という情報を送ることができます。床屋さんや美容室は、ウィークデイに椅子が埋まらないときもある。そういう時に割引等の情報を送って集客することができるサービスが、集客小僧モバイルです。
—小僧SNS村はサービスの特色として大人が使うサイトで成熟した仕組みが成立しているわけなんですね。
平松:怪しげなことをするような大人は、このサイトには来ないわけなんです。つまらないから。小僧SNS村では成熟した大人が良し悪しを決めるわけです。今日なんかは政治の話でワンワンやっているわけです ※1 。基本的には規定を決めているわけですが、規制は、ほとんどないものに等しいんですね。ルール、規範は会員間で作られている。また、会員間は小さな社会でもあるわけですよ。幸いなことに小僧SNSでは大きな問題は起こっていません。
—会員間で自浄作用を持って運営しているんですね。
平松:欧米の社交クラブのように、用意された場の雰囲気や使い方など会員達が作るものです。バーとかホテルも、そうですよね、顧客が作る部分がある。そういったところへ行ってみると、自分と合わない場合には分かりますよね。
アウトサイダー的、アングラで商売している人が入ってきていると思うがあまり商売にならないと思うんだでしょうね。書いたりしてもみんな無視だから。無視するというのも権利ですからね。オープンな場であれば「無視する」という姿勢であっても良い訳ですからね。無視すれば、より、見えないところに行くわけですよね。
ライブドアだってそういった大人向けのサイトがあっても、サイトの深い層にあって、能動的に見にいかなければ見られないですよね。行かなきゃ良いわけですよね。
児童ポルノに関しても、そういった情報に行こうと思わなきゃ、見られないわけですよね。見たい人だけ見に行けばいいんじゃないかと思いますよ。 Yahoo!、Googleのような検索サイトや、一流企業のトップページにそういったものがあれば問題になるだろうけど、サイトの深い層に置かれていることが多いわけですし。
—普通のブログにも児童ポルノのリンクが載ってしまう可能性もありますよね。
平松:そういった情報を見ようと思わなければ、普通のブログに、そういった情報は載らないですよね。知らない人の情報、URLを、クリックしないというのはインターネットユーザーの常識ですよ。その常識を啓蒙しないといけないですよね。あやしげなサイトをクリックするとウイルス感染してしまう可能性はあるわけなのだから。
仮に利用者全員を把握するために国民背番号制になっても、大人の番号を使って海外のサイトにアクセスしようと思う子ども達がいるかもしれない。結局、どのような規制をかけたとしても、子どもが能動的に「ポルノ」とか検索してしまえば止められないんですね。これは、インターネットの世界に限られたものではないんです。
※1 インタビュー日時は6月3日で鳩山氏辞任直後だったため。