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「これからの学校におけるICT教育について」
文科省 鈴木寛副大臣インタビュー

カテゴリー: 情報モラル・リテラシー教育 / 学校内のICT

熟議カケアイから見える教育現場

文科省が主催する「熟議カケアイ」では、現場の先生のリアルな声を届けることに成功している。そのアイデアを提唱し、15年前から教育の情報化に取り組んでおられる文科省 鈴木寛副大臣に「熟議カケアイ」について、また今後の教育現場はICT技術を取り入れることでどう変わっていくのか、その展望を伺った。

文科省副大臣鈴木寛氏と鎌田真樹子デスク

鈴木寛氏
文部科学副大臣 参議院議員 民主党 東京選挙区選出
1986年 東京大学法学部卒。通商産業省入省。
1999年 通産省から慶應義塾大学環境情報学部助教授に転身。
2001年 参院選に民主党公認で東京選挙区から立候補し初当選。
2009年 文部科学副大臣に就任。
著書に『先生復活-にっぽんの「先生」を再生する』、『コミュニティ・スクール構想』,『研究開発力強化法』(共著)、『コンクリートから子どもたちへ』(共著)、『「熟議」で日本の教育を変える 』(9月刊行予定)などがある。

(1)新しい取り組み「熟議カケアイ」について

皆様、文部科学省のホームページを開くと、政策創造エンジン「熟議カケアイ」というコミュニティサイトのバナーがあることをご存じですか?

「熟議カケアイ」は、インターネットを活用し、リアルとネットで、ハイブリッドに熟議をしながら、教育現場の声を政策に取り入れていくという画期的な試みをしている文科省主催のコミュニティサイトなのです。

このプロジェクトには安心協のメンバーでもあるコミュニティサイト運営会社も、数社、運営面で参加しています。この取り組みは、インターネットのよりよい活用の例として大変素晴らしい取り組みであると感じています。ここで話し合われているテーマには「ICT教育」ももちろんありますし、「未来の学校」はずっと続けられているテーマです。学校の先生方が自らコミュニティサイトでネットの議論に参加し、インターネットのよりよい面を享受していただく機会は貴重です。また多くの大人たちにとって、インターネット、とくにコミュニティサイトについてのリテラシーを学び深めていただける機会ともなることでしょう。この熟議カケアイのアイディアを温め、提唱し、自ら進めてこられた文科省 鈴木寛副大臣にお話を伺いました。大変深い内容です。ぜひ皆様お読みになってください。

—文部科学省では新しい取り組みとしてインターネットを活用し、現場からの意見を政策にという趣旨でコミュニティサイトを運営されています。その「熟議カケアイ」についてお教えいただけますか?

鈴木:「文部科学省政策創造エンジン熟議カケアイ」 (以下、熟議と略)は平成22年の2月に懇談会が立ち上がり、4月17日から運営しています。サイト上での熟議と並行して、毎週、リアルでも熟議を開催しており、100名ほど集まり熱い語りを行っています。その熱気がネットに溢れだし、またリアルな場での議論が深まっていく。リアルとネットの良い共振、共鳴関係が築けており、理想的な関係がつくられていると考えています。主催者としてはこの上ない喜びを感じます。

ネットというのは、垣根をとっぱらい距離を縮める役割を果たします。文部科学省(以下、文科省と略)は現場の教師からみると非常に遠い存在であったのが、ネット、熟議の場を借りて心の距離を縮めたと言えるのではないでしょうか。

—熟議は、まれにみる、荒れない安全なコミュニティサイトだとお聞きしましたが?

鈴木:それは、運営している熟議懇談会のメンバーが、魔法のiらんど、グリー、ヤフー、マイクロソフトと安全なサイトを作るための日本におけるチームジャパンと言えるような最強チームですから。みなさん社業を捨ててご協力頂いています(笑)。皆さん、安心ネット作り促進協議会のメンバーでもありますね。

ネットで良いコミュニティを作る実践例としてはこの3カ月、おそらく歴史的に見ても驚くような安定したオペレーションではないでしょうか。100の演説よりも、事例、実践を作っていく方が重要ですからね。

—「熟議カケアイ」の特徴として、コミュニティ運用において、システムオペレーターというか、ファシリテーターを配置していていらっしゃることがあげられると思いますが、そういった試みが安定につながっているのでしょうか。

鈴木:そうですね。やはり仕組みをしっかりと作っておけば、ネットの良いところを活用して心配を最少化できるわけです。

今まで、学校内の管理職、市町村単位、都道府県単位の教育委員会と2枚、3枚の壁があった現場の先生の声が、それを超えて、ダイレクトに文部科学省に届くことになったわけです。僕らも教員の皆様が本当のところ、どう考えているかを知ることができる。この前、実際にネット上の熟議をきっかけに、提言をみんなでまとめて文科省まで持ってこられた現場の先生もいたんですね。マスメディアでは、現場の先生を悪いイメージでしか取り上げないけれども、ほとんどの先生は真面目にやっているわけで、その息遣いがネットを通して聞こえてきますね。

—ネットの世界でも同じですが、良い点というのは、なかなかフォーカスされないという実情がありますね。

鈴木:マスメディアは珍しいことは取り上げますけどね...。ネットの可能性というかな、熟議のコミュニティが作られつつある中、大事なことを伝えて頂きたいですね。

7月18日にファシリテーターの研究会を開催したんです。内部の研究会と思って始めたら、もっと大きなもので130人集まりました。茨城の古河、三鷹、青森教育庁、秋田の教育庁、全国津々浦々から集まってこられたんです。静かな革命ですね。この人たちがリアルとネットのコミュニティで議論を深め、必要なことは文科省に直接、かけあうといったことが可能となっているんですね。国会の停滞ぶりを尻目に、こういった熟議のような取り組みは、確実に社会のガバナンスが変わっていくことにつながっていきますね。

(2)教育の情報化 電子教科書について

—教育の情報化、特に電子教科書についての注目が集まってきおりますが、電子教科書についてはどうお考えですか。新たな端末が登場することで教育に作用してくることとはどのようなことでしょうか。

鈴木:電子教科書の取り組みについては、昨今、取り上げられる機会が増えています。この電子化については教科書、教材のデジタル化、つまりソフトの話であって、端末の話と混同してしまっているところがあります。中にはアンチキャンペーンを行っているようなところも見られますね。

この教育の情報化については、私は15年ほど取り組んでいまして、そろそろ浸透してきたかと思っていましたけど、まだまだ、電子化に取り組んできた人とそうでない人のギャップというものがあると感じます。むしろ逆に、こちらが進んでいる分、改めて乖離は広がっているようにも見えます。繰り返し、繰り返し伝えていかなきゃいけないのかなと。

僕らの側から言うと、目指すところは教育の情報化で、ICT化ではないのです。教育という公共サービスを実施していく上で、その教育の質を良くするために、多様な情報を、多角的に収集して、それを編集してよりきめ細やかなカスタマイズされた教育サービスを行っていくという、ある種のインテリジェンスを上げるという話なんですね。それをやろうと思えば当然、ツールとしてICTは必要不可欠です。例えば、CRM(Costumer Relations Management)という考え方がありますね、それをStudent Relations Management(以下、SRMと略)を我々はやりたい、つまり 学習履歴、活動・生活履歴を収集し、カスタマイズを行っていきたいとなるわけですね。

僕が一番気に入っている例は、愛知県小牧市で行われている「いいとこみつけ」という20ページの通知票です。担任の先生だけでなく、全教員から、その子についての広汎な情報を収集して、20ページ分が学期ごとに親や子どもにフィードバックされる。すごいでしょう。結局、情報の質量があがると信頼が生まれるんです。まず親は信用しますよね。子どもも同じく信用が生まれる。自分のことをこんなにも書かれた通知票が20ページきたら率直にうれしいですよ。厳しい内容でもよく見てくれた結果のコメントですから納得して、次がんばろうと思いますよね。

このようなSRMや学校Webの充実化を行うことで、学校の教育に対する信頼を獲得できるわけです。情報を集めるということは非常に重要なんですね。だから、電子教科書だけでなく、教育の情報化というのを再度、考えてみたいというのが僕のスタンスです。教育において、あらゆる事に関して広汎な情報を収集して、ソリューションに導いていく。

今、お話ししたことは、校務の一環の話ですけど、子どもの学習環境においてもサービスのクオリティを上げていくためにはカスタマイズしていくということが重要になるわけですね。もちろん、動画や検索(年表や地図)などでのデジタル教材の有効性はいうまでもありません。教師用では、板書の時間も省けます。

マイ教科書、マイ学習履歴を作る、これはネットの世界では当たり前のことですね。子どもたちは、それぞれ学び方のスタイルが違う。視覚から入った学習方法、聴覚から入る方法とパターンが異なるんです。もちろん複合的な方法が良いわけですが、そのパターンに応じて教材も学習環境もカスタマイズできるということを目指していきたいのです。当然、ICTがなければ、そういった事はできないわけですね。要するにコンポーネント化して、ベストカスタマイズしていくことで、コストを下げバリューを上げる。これは経営情報学上では当たり前の話なんです。

そういった中で、改めて大事なことは教員の力ですね。教科書のデジタル化についても現場の教員のバックグラウンドをどうするのか。教員を孤立させるのではなく、情報的にサポートして、教材もカスタマイズできるといったことで、子どもにとって良い環境を作っていきたい。もちろんクラウドで教材を配信していきたいということもあります。

(3)ICT教育について

—今後、学校におけるICT教育についてのビジョンを具現化していく方法としてはどのようにお考えでしょうか?

鈴木:モデルを事例として積み重ねていくことですね。百聞は一見にしかずですから。ただ、そのために教員へのサポート体制、教員自身が学び直すためのバックアップは必要です。

教員が情報機器の操作ができるかどうかという話は、二極化していると言えますね。使いこなせている人もいますし、いない人もいる。ただ、世の中で言われているほど、使いこなせないわけではないです。メディアの報道は使いこなせない人をフォーカスしがちですけど、この部分については、私はあまり心配していません。なぜならソフトがものすごく改良されているわけですね。小2でも使いこなせます。タイピングできなくても50音表からマウス操作で作文が書けるといったソフトも出てきました。教育の情報化について批判を行う人がいますが、弱視の人のための拡大教科書など、カスタマイズ化された電子化は不可欠な部分もあります。利用者はこの批判に対しては怒っていますよ。

また、公立学校の整備、LAN無線の整備などは必要でしょう。この前も公立中学校に行ったんですけど5年前の機器を使っていました。

—最近の例では、Twitterを使って、学校行事を紹介している公立中学校もあり、その取り組みは保護者にも歓迎されているようでした。全体的に学校の取り組みも変わりつつある兆しを感じていますが、どのようにお考えですか?

鈴木:我々の役割は、子ども達にとって必要な環境を作るということです。その環境の中で発達心理学のプロである現場の先生が、何が子どもたちの学習環境に必要かを選択し、カスタマイズし、インテグレートすれば良いわけです。

小学校の低学年は、紙とネットと両方を使います。なぜなら、電子媒体のインターフェースは、まだ発展途上で、紙と比較すると稚拙なんですよ。まだ、タッチペンは画面操作の際に滑ってしまうことがある。ただ、次々と改良されたものはすぐに出てきますよね。

現在、小学校では鉛筆の4B、2Bと鉛筆の柔らかさの違いによっての使い方を教えるほどのきめ細やかな教授を行っていますが、ICTではそこまで追いつかない。まだ、インターフェースが平面でソリッドですよね。やはり認知心理学的にいうと、まだまだ紙に負けているところがある。電子ペーパー、電子ノートの開発・普及のステージまで待たねばならないでしょう。子どもに使わせるには、五感すべてを使っていくことが必要ですし、触覚を働かせることは重要になるんですね。メディアラボとかはそういった研究所では、五感を働かせる情報端末についての研究をしていますね。ですから端末もこれから進化していくでしょうね。

例えば辞書引きは、最初は紙の辞書をひいた方が良い。実際に紙の辞書を触って引いた方が、対応関係を感じ、覚えやすいところがあるんですね。辞書を引いている時間は30秒ほどかかる。それが即座にひけるようになるまでは、辞書引きさせた方が良いんですよ。そうすると頭の中に語句の意味が定着します。ただ、書き順に関しては電子端末の方が良い書き順を正しく覚える。紙とネット、良いところをベストミックスすればよいんです。

ちょうど、国内メーカーも新しい電子書籍の端末が登場すると発表がありましたね。コストのことを考えなければ学習環境というのは、多様な環境、様々な端末があった方が良い。環境はリッチにしておいてプロである教師が生徒の状況、学びの内容に応じて選択する、まさに教育の世界もクリック&モルタルなんですよ。

(4) 鈴木副大臣への質問

—今日のインタビューにむけ、もっとグットタイムスの他の編集デスクからも質問を預かってきましたのでよろしくお願いします。

鈴木:まず、ひらがな入力で覚えた後にローマ字入力でキーボード操作を行うのは効率的ではないのではという質問です。

子どもたちは覚えるまでもなくて、若干の発達障害の子も含めて、マウスで入力していく方法については、80分くらいで習得できているのを先日も視察してきました。習得コストゼロですね。鉛筆でも書かない子でも入力できるんです。覚えるんじゃなくて出来るんですね。

ひらがな入力からローマ字入力にシフトする事についても、授業でそのために時間をとる必要はない。これは僕が中学・高校で教えていた際、自習で、ブラインドタッチを行うゲームを教えて遊ばせれば、4回の授業、プラス自由に来て遊んで良いといった時間を多少設けたら、自然と習得していましたね。何の問題もないんです。子ども達にとっては自転車乗るより簡単なんです。

むしろ、これからもっと様々なインターフェースが登場してくる中、子ども達はそれに合わせることができるんですね。またマウスの技術開発が進んでいまして、子どもたちは手のような感覚で使ってますね。

—総務省が主催するフューチャ-スクール構想との協力関係についてはいかがでしょうか?

鈴木:基本的に学校内のハードとインターネットインフラ、ネットワークについての費用は、地方交付税から出ており、これは総務省の担当なんですね。文科省としてはさらなる安定したネットワーク環境を供給してくれることを望んでいます。6学年が一斉に動画編集を行い、クラウドで提供することを考えるとネットワークは太ければ太いほど良い。いろんな使い方に耐えるネットワーク環境、端末も整備していただきたい。

逆に言うと総務省の情報教育一括交付金というのを作ったらどうか、その辺も含めて文科省も一緒に考えていきたいわけで総務省はかかせないパートナーですね。最終的には文科省がクラウドで教材を提供していくということになっていくでしょうしね。そういうことを見据えた環境、サーバー、端末も含めて、きちんとやって頂きたい。

現状として、ネットワーク上で協働学習をやると、すぐダウンする学校が多い。例えば、パソコンが10秒で立ち上がり、落ちない環境になってほしいですね。 学校というのは、1,000人ぐらいいることも珍しくないですし、ウェルトレーニングされていない子どもだと思わぬ使い方をしますしね。そこを想定した環境作りをしていってほしいですね。ダウンして子どもたちの集中が切れた時にそれをとりもどすのにどれだけ大変か(笑)。

—子ども達のインターネットとの関わりについて、規制ではなく使い方についての教育が必要だと私たちは考えているんですが、副大臣はどうお考えですか?

鈴木:おっしゃる通りだと思いますよ。規制したところで社会に出たら情報洪水社会ですから。その中で生き抜く力をしっかり身につけるように教育していくことが必要ですね。

—現在、大きなコミュニティサイトでは2000万人を超える登録者を抱えています。コミュニティ運営者も日々努力を重ねていますが、この規模のコミュニティを支えるにはノウハウと力量が必要だと感じています。今後、私たちは、コミュニティサイトのあるべき姿を社会全体で考えていきたいと思っているのですが、いかがでしょうか?

コミュニティサイトについてのリテラシー、専門家が少な過ぎですね。テクノロジーの専門家ではなく、コミュニケーションについての専門家を量産しなければならない。システムではなくコミュニティの運営を行うことが必要でしょうね。

コミュニティサイトの構成、目的はそれぞれ異なるわけですから、様々なサイトを選びとるリテラシーが必要ですし、運営側は、ちゃんとコミュニティデザインしていくことが必要なんですね。

そういった意味でもコミュニケーションデザインについて学ぶ場がもっと必要です。

—最後に保護者の皆様、先生方に対してメッセージをお願いします。

鈴木:保護者も先生も、子どもたちがネットに触れているところをよく見た方が良いということですね。子ども達が使っている現場を見れば、ネットの良いところ、危険なところ、どうそれをマネジメントしていくべきかということが分かります。子どもたちと一緒にやってみるということが重要です。ただ本を読んでいてもしょうがないですね。

オーディオビジュアルも含めて子どもたちがどう使っているかを良く見ることですね。

—貴重なお時間をいただきありがとうございました。

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