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「校務のICT化はどこまで可能か」
柏市立田中小学校 西田光昭先生インタビュー

カテゴリー: 学校内のICT

校務ICT化の道のり~メリットとデメリット~

柏市立田中小学校 西田光昭先生

仕事を簡略化することができれば、先生が生徒と向き合う時間を増やすことができる。そのためにICT技術を導入している小学校がある。先生達の仕事はICT技術の導入によってどこまで短縮できるのか。学校がデジタル化をすることによってのメリット、そして導入までの道のりについて、千葉県柏市立田中小学校の西田光昭教頭先生に聞いた。

今学校には、ICT技術がどんどん入ってきているのをご存じだろうか。電子教科書の導入を睨むまでもなく、すでに校内LANを完備している学校も少なくない。ただ、学校にネットをひくことで、結果的に何が達成できるのか。子どもたちのより良い教育のために活用していくというのはもちろんだが、我々保護者が期待する部分として、先生達が自分たちの子どもにもっと目を配って貰える環境ができないか、という点は外せない。結局人を育てるのが人であるという原則は、ICT技術がどれだけ入り込もうと変わらないのだ。

柏市立田中小学校それならばICT技術を使って、先生方の校務の負担を減らせるのではないか。特に人間形成にとって重要な時期である小学校において、先生方がもっともっと子どもたちと接してくれる時間を、ICTの活用によって捻出できるのではないか。私たちでそのような事例を調査したところ、校務のICT化に積極的に取り組む千葉県柏市立田中小学校に行き着いた。そのリーダーとなっている教頭、西田光昭先生にお話しを伺う。

—田中小学校では、校務IT化についての取り組みを先進的に行われているとお聞きしたのですが、その経緯等についてお聞かせいただけますか?

西田:柏がインターネットを学校に入れたのは比較的、後進です。早いところでは、1994年に通商産業省と文部省(当時)の「100校プロジェクト」や、1996年ごろNTTが推進した「こねっと・プラン」などに乗った学校もありましたが、そこと比較すると大分遅かったですね。

—導入したのはいつ頃ですか?

西田:最初に導入したのは97年頃だったと思います。

—97年頃で後発になるんですか?ずいぶん早いような気がしますが...

西田:100校プロジェクトなどから比べると後発でしょうね。地域にある麗澤(れいたく)大学が地域貢献の一環として、麗澤大学モラロジー研究所の回線を地域に解放できないかということで、柏市教委に打診があったのが最初です。当時、市教委ではネットワーク利用ということに全然対応できないでいたので、どう進めたらよいか、いろんな協議をしながら進めていきました。

当初から学校という環境は、子どもたちが勉強する場と同時に、先生たちが仕事をする環境であることを前提に考えていましたから、校務用のLANを作らなければならない、そして一斉に授業で使えるための環境も、どちらも整えなければならないということがありました。現在校内LANはすべて2系統。子ども達の学習用と校務用と、当初からそういう設計をしていたため、校務のICT化などそれでやりやすかったというのがあります。

—当時は、学校内でインターネットで何をやろうと考えておられたのですか?

西田:当時は、子どもたちが学校の外と接する機会を増やすことができるだろうと。また、インターネット上のコンテンツ、教材、素材を使えるだろうという見込み、それから今まで教室の中でしか共有できないものを外ともできるだろうということもありました。一般的なものだと思いますよ。

ただ、地域のネットワークを作るという意味では先進的だったと思います。100校プロジェクト、こねっとといったプロジェクトは学校が中心でしたが、地域としてちゃんとネットワークを作り、それを学校で束ねるという動きでは先発的と言えるでしょう。

柏市のはKDDI Powered Ethernetを使って、物理的に学校間をイーサネットで統合したものです。最初は回線が高かったので、ISDNでつなぐとかいろんなことやりました。それが98年、文部科学省と総務省が協力して「学校インターネット」という事業があったんですね。この時にケーブルテレビのタイタス、今はジェイコムになってますが、そのケーブルを使った地域ネットワークというのを作りました。

—地域ネットワークというのは、生徒たちの家庭まで含まれるということですか?

西田:いえ、学校機関を統合したネットワーク、学校だけでイントラができるというイメージです。そこに教育委員会も入ってますけど。その中で外に出すもの、内輪だけで共有するもの、校内で共有するものの3段階でネットワークを考えています。それが次第に地域というよりは、外向きのところとしてウェブとかブログとか、いろんな形で保護者を対象にやるようにはなってきています。

—保護者に対して学校だよりなど出しますよね?それはまだ紙ベースで出されているんですか?

西田:基本的には紙ですね。ただ紙だとやっぱり伝わる速さの問題があるので、柏ではウェブの利用は多いと思います。市内の各学校ですべてウェブサイトを持っていて、ほぼ毎日更新しているところが1割。中には数ヶ月に1回というところもありますけど、平均すると週1回ぐらいは更新していると思います。

またウェブの発信以外に、緊急用のスクールメールのシステムを入れてます。これは不審者情報の発信が起点になっているんですけど、不審者情報もそんなにあるわけではないので、それだけやっているとシステムが生きているかどうかわからない。もっと活用の方法を考えて、学校の中継といいましょうかね、そういったものも行ってみてもよいかもしれません。

—スクールメールのシステムは、メールベースのものですよね?

西田:メールベースですね。基本的には希望者参加ということにしてますけど、うちの学校では90%の保護者が希望されています。

—そういうことをやりたい学校は多いと思うんですけど、システムの費用がかかってしまう部分で難しいと感じているところもあるようです。今後導入を検討している学校にアドバイスなどありますか?

西田:今柏市でも失敗したと思っているのは、自分達でいろいろと持っちゃうと、メンテナンスが大変なんですね。そこはASP(アプリケーションサービスプロバイダ)をうまく使うと良いんじゃないかなと思いますね。

緊急時のメールシステムは、緊急時に使えないと意味がない。市教委が持っていると、年に1回は保守整備で止まるんです。緊急時に動いている保障もないですし。そこは外部になげて安定して動けるほうが理想なんじゃないかと思いますね。外に投げる時に個人情報の管理がひっかかると思うんですけど、どこもプライバシーマークを持っているところが増えてきてますので、そこを確認して契約していければ大丈夫だと思いますね。

—学校の電話での連絡網はいまだに生きてますか?

西田:生きてますけど、電話の方が時間がかかってしまうんです。保護者がいない、つながらないとか。一斉配信の方が確実で早いですね。アドレスが変わっててメールが届かない場合も、実際にはお母さんたちの口コミでフォローされているということもありますね。行事の時などは特に。去年は雪で中止にした行事があり、前日に紙、メールでお知らせしたんですけど、やはり学校に来てしまった人が3,4人いるんですね。なので結局、何をやっても全員に届くわけではないということなんです。

—複数の連絡手段を使うことが必要だと。

西田:そうですね。親もケータイを使える人が増えたので。今年の林間学校では、引率の教諭がアップする形で写真を掲載する掲示板システムを運用したんですね。現状として児童数が100きっている中、2泊3日で大体1800アクセスがありました。カウンターのアクセス数なので、何回か重複はあるとは思うんですけど。履歴を見るとケータイがかなりあります。もちろんPCが一番多いんですけれどもね。親側の環境も変わってきているなと感じますね。

—学校としての情報発信をしようという方針は学校単位で違いますけど、これはどなたが判断されるんですか?

西田:最終的には校長の判断です。というのは、地域性の問題もあるんですね。保護者に外国籍の人が多いところだと、メールでも紙でも情報が届かない。そういうところはまた、別の方法を考えなければいけない。柏市の場合は、ほぼメールが一番安定して使われていますね。

—学校の情報をどんどん出していった方が地域に分かっていただけるという考えの先生と、あまり出したくないという慎重な先生といますけど。

西田:私が見てきた中では、情報を出せばだすほど、親は納得、理解して支援してくれますね。情報を抑えると「何なんだろう」という話になりますね。

—保護者の理解を得ていくことは大事なことですね。

西田:学校が何を進めようとするか分からないと、家庭と学校で違うことを言ってしまうのが一番困るんですね。学校はこう考えてこうしてますよということがわかると、それと同じようにしてくれたり、それに対しての意見が来たりします。その中で学校運営って出来ていくんだろうと思います。

校務のデジタル化、何を変え、何を残すか

—では具体的な校務のICT化について伺っていきます。先生方の校務って紙ベースの作業にかなり時間がとられると伺っています。その辺りをICT化することで、時間短縮も見込めるのではないかと思うんですが。

西田:校務というのは、紙から紙に転記する手間がかなりあるんですね。これをICT化すると、手書きでメモなどの描きこみができないという問題があるんですけれども作業が再利用できると先生方に進めてきました。

おととし、柏市では通知表、成績表のシステムを一斉に導入しています。最初はコンピュータなんかという先生もいましたけれども、一回入力してしまえば、誤字脱字を直す事はあっても転記することが少ない。今までは大元のものを書き、通知表に手書きで移す。それが1、2日かかっていた。

しかしICT化すれば、先生方は情報を作ることに一生懸命になっていただければあとは大丈夫。これまで通知表に転記するために1週間かかっていた仕事が、3,4日までに短縮できました。こうなってくると、授業がぎりぎりまでできるといったメリットが出てくる。子どもたちにとっても、頑張ったところがギリギリまで反映できるというメリットが出てきてますね。

—テストはいまだに紙ベースですか?

西田:そこは紙ベースですね。

—成績を集約する時のデジタル化は検討されていますか?

西田:今のところは手入力ですね。一部では、デジタルで○×が見られるというシステムもありますけれども、現状、それを使っている先生は、「そういうものを使ってみたい」というレベルの人ですね。昔からあるアナライザーとしては、子どもの反応を記録するシステムなどもあって、いろんな実験をされてますけど、まだ利用はごく一部ですね。

—先生方にアンケートすると、答案の丸付けに時間がかかるという意見が数多く出てきました。そこを軽減する方法ってありますか?

西田:テストをマークシートにすれば、そこは早いですよね。ただマークシートで対応できるのは、選択的な設問のものに限られます。しかしテストでは言葉を書く、あるいは計算式を書いて計算の途中が大切になるとか、そこがマークシートではうまくとれない。先生方が生徒の何を見ているのかがわからないと、なかなか評価、評定に結びつけにくい。

—何をどう見ているかは、先生によりますよね?

西田:そうです。経験にも依存しますし、授業の目的とか構成によっても内容が変わってくる。発言を多く出せばよいのか、じっくり考えた発言を引き出すのが良いのか、一概には言えないんです。

—やはり、ある程度は先生の手作りになってしまう部分があるんですね。

西田:はい。だから機械的、アーキテクチャで出来るところ、ICT化できるところはやって、短縮した時間を生徒と直に接する時間を増やすことができれば、効果が上がると考えていますね。全部を無理にICT化しようとは考えてはいないんです。

—人力でやって労力の割に報われないところをIT化していくと。

西田:そうですね。もう一つICT化にすると良いなと思うのは、今子どもの情報は、主に担任だけのものになっているんです。その情報を担任以外でシェアできないかなと。点数や成績という意味ではなく、行動についても、こんな良い所があるんだとか、こんな優しいところがあるとか。

—子どもの特性を丹念に見て行くと、必然的に自由記載が多くなりますよね。

西田:その自由記載になったものをたくさん集めることで、その子の特徴、傾向が分かるんですね。ところが今は、担当の先生の、自分のメモしかないんです。

—そういった情報をシェアすることは、学年の持ち上がりで担任が替わる時に有効ですね。

西田:だと思いますね。今のところは、通知表の形でしか残っていない。ところがそこに表せないものは、いっぱいあるんですよね。

子供たちのパソコン学習

パソコンルーム—我々MIAU(インターネットユーザー協会)で調査を行ったところ、中学生では手書きよりもケータイの方が早いという子供が、今年でもう5割を超えてきたんですね。文字入力のメインストリームが、テンキーになる可能性もあるわけですが、本当にそれで大丈夫なのかと思うんです。小学校での文字入力は、キーボードが主体ですか?

西田:キーボードがベースですね。昔は、かな入力やっていたんですけど、結局あとでローマ字入力を覚え直すことになってしまうので、最近は最初からローマ字入力です。文部科学省の学習指導要領も、かつては4年生でローマ字だったのが、今は3年生でローマ字を覚えると変わってきたんですね。どの程度までできるようになればいいかというのは、いろいろ意見が分かれるんですけれども、手引きとか基準で出てくるのは、6年生を卒業できる段階で原稿用紙1、2枚は少なくとも書けるようになってほしいと。したがってまず3年生では、短文が入力できればOKでしょう。最初の基本になるのが、ファイル名をつける時に、名前、単語が入力できるかどうか。それは2年生で出来るようになってほしい。

—ローマ字入力より先に、キーボードの仮名入力を先に教えるから混乱するのだという人もいますね。

西田:当初はそれがありました。逆に1年生は、キーボードのかな入力よりも、ソフトウェアキーボードの50音表の方が、学習の中で望ましいんですね。50音表をちゃんとやっておくと、その後のローマ字入力に行きやすい。

学校のキーボードも、もうJISにこだわる必要はないのかなと。ただいろんなタイプが混在するのは、困ると思いますね。一時期、小学生は手が小さいのだからということで、小さいサイズのキーボードを渡した実験をしたことがあります。ところがそこでブラインドタッチを覚えると、あとあとフルキーボードになった時に困るんですね。

有線LAN—今、学校の中は、無線LANは通ってます?

西田:柏の場合は、無線は入れていないです。その代わり有線を各教室に2本ひいてます。授業で展開するときにはS(Student)のネットワークにつなぐと、ログイン先がコンピュータ室のサーバーになりますので、それで使う。先生方が使う校務はT(Teacher)というネットワーク、そうすると職員室のサーバーにつながります。回線は物理的に変えたほうが良いですね。間違ってデータを置いてしまう心配がなくなるので。

—小学校にはクラスの人数分PCがあるんですか?

西田:コンピュータ室に38台入ってます。市立小学校なので、柏市の予算で全部入れてあります。今から10年ちょっと前は、文科省の基準が20台で、2人1台だったんですね。その時にはコスト的に変わらなくても、40台は入れてくれなかったんです。コンピュータは20台でディスプレイとキーボードが40台という、変な入れ方をしたこともあります。

—PCの稼働率は?

西田:時期にもよりますけど、1クラス週1時間割り当てられていますので、高学年だと週1回、低学年だと1月に1回。特別支援学級が1クラスあって、そこも週1回割り当てられます。

先生のスキルとPCスペック

—先生方のPC利用率は?

西田:先生の利用率はバラバラですね、毎日使う人、一学期間使ってない人もいます。使う人は国語、算数、理科、社会と、ほとんどの教科で使っています。パソコンよりも、実物投影機を使う人の方が多いです。それぐらいであれば抵抗がない。ところがパソコンだとまずログインしなければならないなど、使うまでに手間がかかってしまいます。使う人は、つなぎっぱなしで使えるような環境を作らなければ、なかなか浸透は難しいのかなと。

—先生方は自分のPCを持って来られるんですか?

西田:柏の場合は、個人持ちのPCは持ち込み禁止です。基本的に先生が使うのは、市から渡されたものですね。各自のIP割り当てなどが決まってますので、持ってきて繋げばなんでも使えるかというと、そうでもないんです。

—学校ではそこまでしないと駄目なんですかね?

西田:だと思いますね。情報の持ち出し、改ざんを考えた時には、そこまでの制限が必要ですね。各先生がセキュリティに対してのスキルがあればいいんでしょうけど、保存したかどうかわからないと言ったり、訳の分からないことをしてしまう人もいる。そうであれば、そこまでやったほうが良いのかなと。

—PCの更新頻度は?

西田:5年に1度ですね。柏はリースの期限が全部5年ですから。長い気もしますけど、5年は良いほうです。理想的には3年でしょうけど、それだとコスト的には厳しいですね。

—ネットブックのような廉価なものに切り変えて、もっと短いスパンで交換するという具合にはならないんでしょうか?

西田:先生方が何に使うかが問題です。Word、Excelの処理だけであれば良いんですけれど、動画の処理をする先生もいるかもしれない。どの先生にも使えるようにというと、やはりある程度の機能は必要になるという現実があります。導入するには、同じ規格のものを入れてしまうのが基本ですから、余分なコストは確かにかかっていると思います。その人が欲しい機能だけに限定すれば、本当はもっとコストが下がるはずなんですが。

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