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「制携帯導入事例」
須磨学園理事長 西泰子氏インタビュー

カテゴリー: 学校内のICT / 情報モラル・リテラシー教育

学校がケータイを積極導入!その訳とは?

あえて「制携帯」として全生徒に携帯を持たせることで、携帯の正しい使い方を生徒に教えようと考えた学校がある。「制携帯」の利用法、プライバシーの問題や、フィルタリングの運用方法などその実情を聞いた。

2009年1月、文科省が公立の小・中・高校に対し、携帯電話の原則持ち込み禁止の通知を出して以来、学校から携帯電話を切り離すことで「事なかれ」の方針を取る学校が多くなった。しかし全く逆に、携帯電話を学校公認にしてしまうという大胆な方針を打ち出す学校が現われた。

兵庫県神戸市にある、須磨学園高等学校・中学校である。「制携帯」と名付けられたこのシステムは、発表された2010年2月当初はメディアなどで取り上げられたが、その実態や成果に関してはなかなかメディアも取り上げず、詳細がわからないままになっていた。

このシリーズでは、実際に須磨学園まで出向き、制携帯の仕組みや効果などを取材した結果をお伝えしていく。まずは制携帯導入に踏み切った、理事長の西泰子先生にお話を伺った。

制携帯の導入と活用

—学校教育の中で携帯電話を取り入れるというのはすごく新しいと思うんですけれど、取り入れるきっかけは?

西:きっかけは、文部科学省が原則的に小中高生に携帯電話の持込禁止の通達を出したことを受け、各都道府県の各教育委員会から各学校に連絡があったことです。私どもの学校でアンケートを取ったところ、すでに92%の生徒が携帯電話を持っていた。そういう中で、携帯電話を禁止しても、子どもたちはどうせ隠れて使います。そんなことだったら、学校指定の携帯電話を制定し、危険性とかルールをきちんと教えていくべきだと考えたんです。

—制携帯は、全学年で一斉に導入されたんですか。

西:今年の新入生からです。中学1年と高校1年です。在校生については、入学の時点で制携帯の話はありませんでしたので、希望者が持つということになりました。

—キャリアをauに決めたのは何か理由があるんですか。

西:携帯キャリアに対して我々は、こういうことをやりたいという企画書を出して、コンペをしたんです。その中でもっとも安く、対応が良かったのはauでした。

—制携帯導入に不安を持つお子さんや保護者の方もいらっしゃったと思うんですけど、それでも導入に踏み切った理由は何ですか?

西:携帯電話の所持を禁止することが、携帯電話に関わる問題の解決にならないと考えたんです。インターネットもそうです。禁止することでデジタルデバイドの問題が出てきます。今、多くの大学では、履修登録はネット上で行ないます。ですから、入学したらすぐにネット接続できないと困ります。レポートも出せないというのではまずいです。当校の教育方針は「実学」ですので、実社会に出た時、ビジネスの場でも、携帯電話の正しい使い方をきちっと学んでおかなければいけないと。

—事前に制携帯導入にあたっての不安の声はなかったですか?

西:先生からはメール、ウェブの履歴を監視されるのではという不安点について大きかったです。プライバシーが侵害されるのではといったものです。通常職員が個人のメールや履歴を見ることはありません。何か問題があって保護者から申し出があった場合に限って、情報を開示するというルールです。

—制携帯は学校生活の中でどのように使われていますか?

西:まずは一斉連絡に使っています。例えばインフルエンザが流行した時です。兵庫県で新型インフルエンザの第一号が出ましたし、臨時休校のお知らせで使いました。これまではこういう連絡も、ものすごく時間がかかったんです。メールを一斉送信しても、パソコンでは自分からアクセスして、メールを取りにいかなきゃならない。それが携帯電話でメールを受信できるようになりました。生徒が出かけた後に急遽連絡したいという時に、パソコンのメールではダメなんです。

あとは、欠席連絡もメールで行ないます。制携帯同士の通話は内線機能で無料ですので、教師に質問をして返事が返ってくるのも無料通話で可能です。クラブの連絡もできますし。
学習面では、調べ学習で使います。また、高校2年生がこの間、研修旅行で東京へ行ったんですが、その時班別行動をしまして。東京の企業とかいろんなところを回ったんですけど、その際にメールで、写真にGPS情報を付けてここでこういうことをしてますという報告をさせました。

—思いもよらなかった利用方法ってありますか?

西:明日の宿題や、持ってくるものを黒板に書くと、これまでは連絡帳にメモを書くところが、みんな携帯の写真を撮って、赤外線で送りあったりしたんです。こういう使い方もあったのかと、こちらがびっくりしました。

制携帯のメリット、デメリット

—同じものを統一して持つという学校にとってのメリットは何ですか。

西:自動車の例えをよく使うんですけれど、教習所って一律同じことを教えます。まず、教習所へ行って最初に習うのは、仕組み、交通マナーが第一段階です。それから仮免講習、試験などといろいろプロセスがあります。一律同じものを持てば、汎用性があり、みんながこれはこうして使うんだと分かりやすい。

また一括して同じ機種を購入すれば安くなります。各ご家庭への負担が少なくなるというのは、現実問題として重要な部分です。おそらく普通に携帯を契約するよりも、だいたい三分の一程度の料金負担で済んでいるはずです。

—フィルタリングはどのように?

西:今はホワイトリスト方式です。最初はブラックリストにしようと思っていたんですけれど、auさんのフィルタリングリストはホワイトリストしかなかったんです。ただ、高校では希望者は保護者の同意があれば解除できるんです。

—それは生徒さんの自主性にまかせるということですか。

西:そうです。教習所の車には、先生のところにブレーキ、アクセルがついてます。同じように本来だったらKDDIのサーバーを経由していくので、我々はログに手を出せません。ですがこのシステムでは、KDDIのサーバーから我々のサーバーを経由することによってログが残るんです。メールのログ、履歴も残るということで、高速道路のオービスみたいな格好で抑止力があるんです。いざとなったら「見るよ」ということです。

—デメリットはあるでしょうか。

西:それは制携帯に限らず、制服もそうですし、制かばんもそうですし、Uniと名前が付くものに共通して言えることだと思うんですけれど、「没個性」です。

—端末は機種カラーも同じ?

西:中学生と高校生では、機種・カラーが違います。中学生は黒、高校生は白です。

—デコレーションをしている子もいるんですか?

西:いますね。キラキラのネイルアートのようなものとか、全面デコレーションだとか。先生たちの中でもやっていますし、シールを張ったりだとか。

—そういうのは禁止じゃないんですね?

西:禁止はしてません。制服ではオプションで人と違った着こなしと言うのを楽しんでるみたいですけれど、制携帯に関しても同じようなことが言えるかもしれません。

制携帯でのコミュニケーション

—子どもたち同士のコミュニケーションはどのように?

西:学校のグループウェアの中に、各学年の部屋があります。Mixiのコミュニティみたいなもので、意見を書いたり、メールを一斉送信したりしてます。また英語の教員が自分で和文英訳の教室を開いて、添削したりしています。

—生徒同士は簡単にメールアドレスがわかるんですか。

西:苗字を入れるとリストで出てくるので、特に交換しなくてもすぐに分かります。

—保護者の方からネットが使えなくて...という意見はあるんですか?

西:今ネットの接続率は、100%です。また使い方については、保護者に研修会をしてます。そうでなければ、学校からの連絡が見れないんです。

—家庭でのネットの普及が、制携帯の導入を後押ししたところもあるんですね。

西:そうです、中高一貫生は、今一人一台ノートパソコン持っていたりしますけど、もっと持ち運びの出来る高度な情報端末に向かっていくんじゃないのかという方向が見えてきています。当初、iPhone、スマートフォンでやろうと思っていたんですけど本体価格とwebのフィルタリング管理が出来ないのでなしになりました。来年度からは、スマートフォンも検討しています。

—私のイメージでは、学校と保護者のコミュニケーションは、お母様方が空いた時間に集まって顔をつきあわせてというイメージなんですが、今はネット上なんです。

西:そうです、日時を決めても仕事を持っておられる方は、参加できないですから。グループウェアの中で、各クラスの保護者のコミュニティがあって、議論が行われたり、掲示板に書き込みが出来るんです。また教員の書き込みに関しては、画像ファイル、チャット機能もあるんですね。先生からヨーロッパに行きました、パリに行ってきましたといったような写真データがアップされることもあります。

—先生と教師とのやりとりも身近になりますね。

西:距離は縮まります。その代わり保護者から24時間連絡が来ますから、教員にはそれが厳しいかもしれません。

—なるほど。これからのビジョンみたいなものはありますか?

西:今後一番大事だと考えているのは、WiFi機能が付いた端末です。いろんなコンテンツに、ワイヤレスでアクセスできる。語学教材、センター入試のリスニングテストというのは、学校にとって大変大きな課題となっています。リスニング教育のコンテンツを配信できるとなれば、大きなメリットがありますし。

今、ダイレクトにコミュニケーションをとりづらい子が増えてきています。将来的にひきこもってしまう可能性もあります。どうしたら子ども達が社会と接点を持っていくかということに関しては、今、インターネットが一つの拠り所になっている。彼らと我々学校をつなぐシステムは既にあるので、それを制携帯にどのように組み込んでいくかが今後の課題です。

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