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「法社会学から見たネットでの青少年の犯罪について」
桐蔭横浜大学教授 河合幹雄氏インタビュー

カテゴリー: 情報モラル・リテラシー教育 / フィルタリング / インターネットの安心・安全をめぐる動き

インターネット犯罪は本当に社会問題なのか?

河合先生のインターネットに関する提言は、法社会学という大変興味深い分野の視点から語られた。ネットや青少年の犯罪の因果関係については、これまでの議論と違った視点から考えさせられる指摘を頂いた。危険性を論じる前に、前提を認識しなければならないことを教えられた。

桐蔭横浜大学教授 河合幹雄氏

河合幹雄氏
桐蔭横浜大学法学部教授、法社会学専攻
主著:『安全神話崩壊のパラドックス』岩波書店
   『日本の殺人』ちくま新書
   『終身刑の死角』洋泉社新書

河合先生のお話は、EMAの事業者セミナーで初めて伺いました。法社会学という大変興味深い分野の視点から語られる、ネットや青少年の犯罪についてのお話は 大変面白く、夢中で聞かせていただきました。社会学的視点はこれまでと違った視点からコミュニティサイトの在り方について考えさせられます。

東京都の条例について

—東京都の条例、石川県の条例など青少年健全育成のために携帯・ネット利用の規制に触れられている条例についてどのようにお考えですか?

どんな条例が良いか、という話をする次元じゃないですね。フィルタリングの技術もまだ固定していない、大人も子どももどう携帯電話と付き合うのかが見えてないのに、条例や法律を作るのは始めから無理な話です。

条例のここがおかしいと部分的に言う事はものすごく簡単なんですよね。出てきた案に対して攻撃する議論は無数にでてくるんです。その時に、問題を起こさない普通の家庭の子どもを想定している議論と、とても問題がある家庭の子を想定する議論とちゃんと分けて議論されていないということが一番問題です。

もっとストレートに言っちゃえば、条例っていうのは、変なものもたくさんあって、またそれを作ることもものすごく簡単なんです。僕も東京都の条例の件で色々調べたら、長崎県の青少年条例には「避妊具を未成年に売らないように努力せよ」という規定があって、なんじゃこれはと驚きました。この条例では、罰則規定なしで、さらに、立ち入り権もないということは誰も捕まらない。誰か捕まって訴訟されたらもたないと思います。このように出来てきた条例について笑ったり馬鹿にしたりするのは簡単なんだけど、それなら何も作らなくていいのかという話になる。結局、政治家は何かしら条例を作ろうとするわけで、まさに暗中模索状態で、どの条例がいいと言う次元じゃない。とにかく、条例が出来ていく中でどういう風に付き合ったらいいのかを先に考えなきゃしょうがない。問題意識をみんなに持ってもらうために、こういう条例を作るとか作らないとか議論するということなんです。けれども、やっぱりあまりに変な条例は作らん方がいいですよと。

—東京都が条例を改正してしまうと、他の自治体でも同じように、横並びで進める可能性はでてきますね。

そうなんですよ、だからちょっと大騒ぎになったわけです。僕も色々、反対運動で引っ張り込まれたからよく分かっているんですが、条例成立までの流れが、警察主導にしすぎたんですね。条例の所管となる青少年治安対策部の中で、部長も、課長も警察出身っていうのはやっぱり間違いなんですよ。一般の方のリテラシ―をあげるというのが今の課題だと思っているので、そこで警察が出てくるのは、問題なんですね。

ただ、警察側の気持ちも分かるんですね。インターネットの匿名性というのは悪賢い犯罪者にとっては最高の場なんですよ。一番悪賢い、最も危険な奴がネットの匿名性を使ってくる可能性があるんです。初めの頃、ネットの掲示板などは全く匿名だと勘違いしていた人もいて、自殺願望のある人を呼び出して殺す実験をやりたいという、とんでもない事件を起こしました人がいました。そういった事件は実際、年に1件ぐらいしかなかったりするのが現実なんですが、さすがにちょっと集中した時期があったんです。

だから実はネットの世界は匿名ではなくて本気で捜査すれば捕まるんだぞ、というのをもっと広めるべきでしょうね。でも、瞬間的にそういった犯罪が起こった時代は超えつつあるという感じがある。ちゃんとそういう事件が規制できたら、今度はもうちょっと警察が引いてもいいんじゃないか、その辺で、止まってみたらと思うんですね。理屈でいうのは簡単なんだけど、どこも人事が大きく動かないわけなんですよね。だからもう本当に、どこもかしこも苦労しながらやっていくしかないんで、右に左に揺れるというか、相当揺れざるを得ないと思いますね。

インターネット犯罪の実態

—そこで、青少年がインターネットで犯罪を起こす、あるいは被害に遭うとか、また青少年犯罪にインターネットが多大に影響を及ぼしているという議論があるわけですね。新しいメディアとしてのインターネット自体の是非が大きく取り上げられることが多いわけですが、実態はどうなんでしょうか。

本当に、実態については僕も調べるのが難しいですね。結局、現状から影響があるかどうか分かりたいけど、分かりようがないので、よけいに不安になってしまうんです。でも、結局ものすごく残酷なことが起こるのはリアルワールドという話なんですね(笑)。で、そちらから追いかけていって、どれだけインターネットが絡んでいたか、検証するしかないんです。そうしたら、さっき紹介したような特殊な事件以外はないんだと思います。だって、本当にとんでもない人間だったら、ネットを利用してというよりも、もっと馬鹿なことを単純にやりますよね(笑)。特に暴力的になるタイプの人は、そんなネットの前でごちゃごちゃしたりしない。ネットを使ってというのは、むしろどっちかというとそれこそ草食系とか引きこもりとかいう人が、極端になるわけだから、何か危ないもの振り回すタイプではないですよね。ほんの一部の、元々完全におかしい願望を持っていた、掲示板を利用して殺人を犯そうという例だけが本当に怖かった。しかし、そういう事件は、掲示板のログから追いかけたら必ず捕まりますから。で、騒ぎが収まったらしばらく休止になりますね。

事件が起こると騒がれるという面は確かにあるんです。でも、これまでも騒がれなかったけど、こんなことがあったんだということもあります。例えば、電話です。電話で一般の人から相談を受けている所を調べた人はすぐ分かるんですけど、イタズラ電話率が98%もあるんですね。海難のSOSも90%後半がウソかイタズラでしょうね。ほぼイタズラしかないと言われていたのは、昔、誰かが頑張って作った強姦被害者の声を聞く相談窓口です。受付するお姉さんの声が聞きたいだけ、という馬鹿者が結構いて(笑)。だからそういうことをみんな知らないから、インターネットはひどいマナーだと言うんですが、ひどいマナーの人なんか、どこにでも一定数いるんです。いずれにしても、ネットの状況をものすごく簡単でいいから、データでみんなに分かるように調査して出す。プロバイダーも自分のとこを経由したものしか分からないですし、全体像が見えないんですよね。

で、僕の発想ですけど結局、実は暴走族の取り締まりと似てるんじゃないかと考えたんです。交通量調査では道路があって、どこをどのくらいの車が走っていて、そのときに暴走している奴は、どこを何時、どのように走ってるか、という調査を行います。ネットでもまさに同じようなことが起こっているという話なんです。「祭り」になって騒いでという行為は、心理的に暴走族と近い、ということが分かってきて検討したんですけど、暴走族と決定的に違うのは、始めにやりだした奴の知的水準が高い。もう一つは、右手にマウス、左手に缶ビールを持ってるという問題があって(笑)。これは、バイクじゃできないけど、もしかしたらネットでは実はそれが当たり前の習慣になっているっているかもしれないということは案外面白い話ですね。飲酒運転は禁止だけど、飲酒ネットはありなのかと(笑)。そしてみんな呂律の回らない事書いてしまう。実際にそういうトラブルは良くあるんですよ。名前は出せませんが、どこかの偉い理事長が夜中に酔っぱらって家に帰って、チェックしたらメールが来ていたので、酔った勢いでワッと指示しちゃって、後で謝ったというようなことがやっぱりあるんですよね。まあ段々、みんな学習するんでしょうけど、早い段階で使ってる人、慣れてる人はそういう事が起こっても、そこで変に突っ込まない方がいいというのを分かっているわけですけどね。

非行とインターネット、ケータイの問題

—青少年の非行とインターネットとの関連という点についてはどうお考えですか?

自分も子ども持って初めて分かりましたけど、青少年は大人と全然違うんですよね。

2、3歳違ったらもう全然違うし、小学校高学年と中学校じゃ全然違うし、中学1年と3年は違うし、その辺がなかなか大変で、それって少年の相手をしている人にしか分からないんですよね。普段子どもと接してなくて、おじさんになっちゃうと、ガキ共にしか見えなくなっちゃうし。で、やっぱり青少年が持つ情報メディア機器って携帯なんですよ。高校生の調査でも2割ぐらいが、TVを自分の部屋で見てたりしますけど、専用PCというわけにはさすがにいかないみたいですね。普通の家庭だとそんなにPC買えないですしね。僕は自宅にも3台あって、ここに3台4台、全部で7台ぐらい使ってることになってます。で、1台、家のかみさんと息子用にしていますけど、パーソナルコンピューターっていいますけど実は家族共有だと思うんですよね。学生に、例えばポルノを教えてやると言っても、学生たちは「そんなとこ見れない」って言うんですよね。「だって横から覗かれるとこじゃ見れない」と言うんですよ。大学でもネット繋がるし、家でも繋がれるけど、一人で見ることができないんですよ。「だから無理です、先生」(笑)。なるほどーと思うんです。

—それで、携帯になるんですね。

前も話した通り、一人きりで見ることができるということが大きくて、そこがパソコンとは決定的に違っています。日本の犯罪って全部そうで、酔っ払いもなんですが、アホな事やりかけても、誰か止めてくれるというのが抑止力になるんですね、たぶんこれが日本の強みなんですよね。日本人がもともとしっかりしていて自分で止められるっていうのは、これ絶対嘘です。しっかりしてるのはたぶん欧米人の方がしっかりしてるんですよね。だけども、アホな事をしかけた時に、お前どうした、と言って止めてくれる。あるいは、その段階で、人の目を気にするということが日本人にはあるんです。防犯っていうのは不思議で、例えば自分が一人暮らしなんかしてて、どっか行ってなんかしてやろうという気になっちゃったとします。で、家から出ますよね、そこで隣のおばちゃんに会って、「あらーどちらまでー」って言われたらもう何もできないんですよね(笑)。「ちょっとそこまで泥棒に」、と言うわけにもいかないんですよね。塀にしたり、防犯カメラをつけるだとか言ってるけど、あんなもので防げるなら欧米では泥棒とかいないわけで。親しい人というか、勝手にズカズカ踏み込める人がいるというか、そういう人がいたら、犯罪を起こそうって気持ちがなくなるんですよ。ネットにもそういうおばさんがいっぱいいて声掛けたらいいと言うけど、ネットでそんなことを書き込んだら反論が来るだけですね。

—インターネットの場合は密室で人と関わらない部分がありますよね。

そうですよね。ましてや携帯は全く一人ですよね、その気になれば色んな他の人が見れないようにガードできるし、一人だけの世界が出来ちゃうんで。意外とこういうでかいPCで何かをすることきは、実は普通の人はそんな機会がないんじゃないかな。

—お父さんも家に帰って、子どもたちが部屋に入ってきたなら見れないですもんね(笑)

そうですね。だから、夜中に一人で起きて、みたいな(笑)。だから、みんなネットを怖がっているんだけど、案外悪い事に使えてないんですよ、そういう意味では。だから携帯で子どもが変な落書きとか、変な脅迫を掲示板に書くとか、それから学校裏サイトの問題とか、結局、全部そんなんなってしまって、なんか、本格的な犯罪って実は全然出来てないということに気付くんですよ。別にネットで殴れませんし、蹴れないし(笑)。ただ、場合によっては言葉の方がパンチよりきついっていうのは、そういうのが意識される社会に全体としてもなってきている気がしています。その辺が学校裏サイトなんかの問題なんだと思いますよ。

—特に携帯はパーソナルなメディアだから、PCのメールで悪口受け取るより、携帯でもらった方がずっとダイレクトに入ってくるんですよね。

分かります、分かります。だからPCで見ると壁の落書きにまだ近いんです。でも自分の携帯に送られてくるっていうのはね、身体的暴力よりきついというのは分かります。

—ケータイは子ども達の内面と直結してる感じがするんですね。

そうそう。で、子ども達というか、学生といっぱいしゃべらないと分からないから、指導も含めてよく学生たちとはしゃべっているんです。携帯の使い方とかは彼らに聞くしかないでしょう。彼らはものすごく今、面白い使い方をしてます。結局携帯どんどん変えられたりするでしょ、電池交換するよりタダで変えた方がいい状態だから、やっぱり色々秘密持ってたりすると、2台持ってたり、付き合ってる相手と一緒に携帯を変えてしまうとか(笑)。新しい機種を買うのが高くないということもあります。よく学生が、先生、携帯変えました、ってなったら、「彼氏変わったんか」とか言ったりして(笑)。だから、援交してた子はみんな2台持ってましたよね。

—それは親にバレないために?

普通に使うのと、援交関係は別にしといて、なにかあったら、その機種ごと切る。

—あー、なるほど。携帯が縁の切れ目ですか。

青少年の犯罪

—ここで、先生にひとつお聞きしたいことがあるんです。
日本の青少年の犯罪は件数が減っているという話も聞きますが、メディアの記事を読む限りかなり多いように感じるんですが。

だから、全く報道の間違いですよね。キャンペーンやると万引きはたくさん捕まりますからね。で、犯罪となると、条例でも刑罰法規ってありますけど、日本の特徴で、「犯罪」という定義が広すぎるんですよ。軽犯罪とかも入っちゃうから、唾吐いてもタン吐いてもみんな犯罪になっちゃうんです。英語の「crime」というのは「重大犯罪」って訳すんですよ。フランスはもっと法律上定義していて、「crime」は5年以上の懲役ですから、ちょっと前までは強姦罪も入らないくらいだったんです。5年以上というのは刑としては重いですからね。そういう意味で言うなら、犯罪防止を重視する云々っていう話をするとき、そこにしぼっていればいいんですけど、なんか全部入っちゃって、さっきの訳の分からない「避妊具を売ってはいけない」まで入れてしまうことになったりすると、何にもできなくなっちゃう。

—保護者の方は、ネットや携帯について、すごく危険だというイメージが強いと思います。子どもたちが大変な状況にさらされているという風に感じていらっしゃると思うんですけど。

確率論的にね、日本中の犯罪件数で割っちゃうと凶悪犯罪については件数が少なくて安全、となっているわけですけどね。その凶悪犯罪にあって殺された子というのは、70年代に比べると5分の1くらいになっているんです。5割減ってもすごいのに。

—70年代の5分の1なんですか?

そうですね。70年代って「安全と水はタダ」って言ってた時代です。で、あんまり子どもを襲う犯罪が多いって騒いで、件数自体はそこまででもないのでかなりしらみつぶしに調べたんだけど、結局、犯人はみんな、親なんですよ、統計でみると。それが問題で、その親が起こした事件を除いたらどうなるかというと、今と件数は全然変わらなくなる。要するに子どもなんて金も持ってないし、恨みがあって襲うわけでもないし、その小っちゃい子どもを何かするっていうのは、これは明らかに特別な思考を持った、時代と社会環境を超えてるやつなんですよ。こういった人達は日本中に指折り数える類の人で、いわゆる触ったり、近くにいるだけでいいという場合は何とか適応して暮らしていけるんだけど、そうじゃないっていう場合は数が少なすぎて増えた減ったというレベルじゃないんですね。街歩いていて何もしてない小っちゃい子が襲われて何とかなるっていうのは年間に5件ぐらいだったと思いますから、だから増えたか減ったかという次元ではなく全く不安感の問題なんですね。ところが、不安感が高まってる理由はあって、ネットという、みんな知った人だけがいるコミュニティ以外のものが出てきたから、それはやっぱり怖いんですよ。

—海外では子どもが誘拐されたり、殺されちゃったりという事件が多いですね。簡単に比較はできませんが、児童の事件についてはかなり残虐ですよね。

むちゃくちゃなレベルですからね。赤ん坊の段階から売買して、育ててなんかしようとかいうのもいるし。世界レベルで幼児売買のシンジゲートを何とかするんだ、という運動もあって日本はそれには該当しない。日本の場合は、欧米で起こるようななタイプの犯罪はないんですよね。ただ、日本独特の凶悪な犯罪を起こす人はちゃんと数名いらっしゃる。やっぱりそこは、文化と繋がりがあるんでしょうね。小っちゃい子どもというのが、欧米と日本ではものすごく違う意味付けを持っているし。

—それはアジア文化圏とも違うんですか?

日本と似ているのは韓国だけですからね、基本的に。韓国だけはね、犯罪の背景とか人間関係が日本と似てる。あとはもう、中国へいくと全然違うし、フィリピンもタイも全然違うし。ちなみに、韓国で僕の「日本の殺人」という本が韓国語で出てます(笑)。

欧米と日本の違い フィルタリングはブロック?

—そういう側面からみると、面白いですね。

だから、欧米の場合は子どもの行き帰りは必ず保護者が付きますからね。保護者が送っていかなくていいのは日本ぐらいなんですよね、実は。

—なるほど。アメリカではインターネットでも保護者の方がすごくコントロールするというのはそういう事情があるんですね。全く知らない人からのアクセスは非常に危険であるということを実感として常に危機感を持っているんでしょうね。

というかね、欧米の人って面白いけど、すごい個人の自由を言うんだけど、個人の自由という時に、しっかりとした自我を持っているということが前提なんですね。小っちゃい子どもはそうじゃないから子どもは大人と同じ人権はないんですよ。でもそれを何とかしようという運動もあるんですよ。子どもの人権といいますが、それを全然違う文脈で、日本に引っ張ってくるから、話がすごく混線するんですよ。日本は子どもの人権が確立されているとは言いきれませんが、言い分がやたらに通りすぎたりしますよね(笑)。

—なるほど。海外の方がペアレントコントロールを明確に打ち出すのは、子どもは権利を持っているわけではないからですね。

それは事実なんですよね。だから、ペアレントコントロールしないという、もう飼い犬をしつけるのと同じような感覚で、極端に言うと、子どもたちには判断力は無いということが前提です。親が子どもに権利を与えてないからなにくそって思って彼らに自我が育つ。だから、私も東京都の反対運動側にいるんですけど、あれで規制されることで、漫画に興味なかったやつが興味持ったらこれは大成功だから警察はよくやったみたいな話なんですよ(笑)。どんなこともそういう側面があるんですよね。ものすごくペアレントコントロールがきついながらも相手がそれを跳ね返しながら自立した人間になっていくのをちゃんと見てあげる、ということが大事なんですよ。

—では、ある意味子どもたちが親にフィルタリングを勝手に掛けられるというのも、跳ね返す力を養うきっかけになるっていうことですね。

そうなんですよ。子どもがなんでそうなんだと考えたりするのに意味があるし、本当に子どもたちの手の届かないところに隠しちゃうとダメなんだけど、これはいけないものだよというのは何とか苦労したら手に入って、それが何でいけないと思われているんだろうと考えてみたり、接触するときに警戒しながらやるのがものすごく発達にはいいと思うんですよね。

警察とネット業界

—次に、規制を強くかけようとされる方々の要望があり、一方ネット側の世界では、自由ということが譲歩できない基本理念ですから、綱引きがずっとあるわけですよね。お互いにどうしてもぶつかってしまう場合にどう話し合いをつけていけばいいのか、その辺りのお話をお聞かせください。

規制する側つまり警察側からみるとまともな業者はどうでもいいんですよ。よくあるのがその業界に普通は大手がいて、あとはその他になりますね。その中で、はっきりと企業自体がブラックな奴がいますよね。だから、そこを警察が見るために協力するのは、その業界の中の人の方なんです。どこがブラックでどこがどれだけ悪いかは警察の何倍も見えるからなんですよね、当たり前ですけど。で、労力的にも警察が全部の業者を見るっていうと、とんでもない人数が要るんです。それを避けたいから、こいつらは大丈夫っていうのを業界団体で作って、そこから溢れてる人たちだけを見る、という形に持っていくのは典型的な形ですよね。

—はじめからそう言っていただいたほうが早かったのに。(笑)私達からすると、かなり警察の方から怒られている感じがするんですけど、それは実はそうじゃないんですか?

いや、だけどもそう持っていくためには、警察としてはね。みんな公徳心ないんだと思っているんですよね。道徳的ないい社会を作るために起業するわけではないですから。字からして「企て」ですから(笑)。

一回脅かしておいてから、許してあげるという形でしか、警察にはないんですよね。警察が企業を守ってあげるわけじゃないんだから。どうしても条例なんかでも、法律でもそうだけど、警察的には過度に厳しい法律が欲しいんですよ。スピード違反みたら分かるように、あんなん誰も守らないといったような。さっき交通とネットと似てると言いましたけどね、全部見張るのなんて絶対無理です。だから警察的にはネットだってめちゃくちゃ厳しくすればやりやすいんですよ。で、その気になって入っていったらすぐ捕まえられるぐらいの厳しさですね。そのぐらいにしたら、どの業者も言うこと聞くんですよ、みんなすぐ捕まえられるから。だけども、協力してくれたら、逃がしてあげるというやり方なんですよ。で、それ自体が本当は法治国家のレベルじゃないですよね(笑)。欧米的にはそんな誰も守れない厳しい刑事法を出すっていう事は絶対にありえないですよ。で、その辺の感覚が、これから変わっていくかどうかっていう過渡期に来てるんですよね。

警察やめても天下ったり、業界団体に行ったりしてるのは、メリットも相当あって。圧倒的なメリットはコストが安いってことです。だって、企業が自分たちのやってること全部透明化して全部資料作って、公表し、それを弁護士とかが一所懸命吟味していたらコストがめちゃくちゃかかるんですよね。それが「いつもの何とかさん」、「おぉ」とかいって終わってるんですよね、天下りでね(笑)。インターネット業界は、新しい業界だから、どうなるかって言ったら、各省庁が自分たちの業界にしたいんですよ。だからはっきり言って、省庁で喧嘩しすぎ(笑)。

—そうですか(笑)人気ですね。

どうしても権益増やそうとしちゃうから。で、やっぱり国全体に危機感がないから、停滞する、ネットもちゃんとしていい国にしないといけないというのがあればみんな協力するんだけど、そんなんじゃなくて、みんなまだ安心しきってますから。自分のとこの分野を増やしたい。だから、僕なんか実は犯罪件数は増えてないといった色んな話をするときも、それを言うのやめてくれっていっぱい業界内の人に頼まれてますから(笑)。危機を煽ったほうが、そういう治安関係の仕事は増えるし、物は売れるし、発言もできるしということで。

—インターネット業界の現状はどう思われますか。EMAでご講演もされていましたけど。

やっとEMAの中に入って少し分かりかけてる段階なんですけど、やっぱり現状の問題は中央政府がしっかりしてないということに尽きるんですよね。

ネット業界もどういう点で警察と組まないといけないのかというのもよくわかっていないと思います。それから企業も昔はもっと悪い奴がいて、総会屋はいるは、色んなのがいて、脅しに来たりとかあって、そういう事でも警察付き合いが必要だったんですけど、ネット関係会社はあまり付き合いがないんでしょうね。

—EMAの認定を受けたサイトのユーザー数は1億を超えていて、EMA認定ではないサイトを使っているユーザーの方がどうみても少ない、そちらの少ない方のサイトの人たちは名簿にも載ってこないし、業界の集まりにも来ない、私たちもそういう方々にはなかなかコミュニケーションが取れないという、そういう状況ですから、すごく分断されている状況で、こちら側だけが一所懸命努力しても効果はあるのかと思ってしまうんですね。

だから、出会い系がまあ、規制する法律が出来てからは、そこでビジネスをする人というのは意識的に行っている人しか出てこない(笑)。で、あとが、数的にはEMAが認定しているところなんだけど、ほんとはそこから抜けてる悪がいたらEMAがちゃんとやってるって見えるんですよね(笑)。ところが、EMA以外の悪が、今いないっていう非常に傑作な状況なんですよ(笑)。もっと他の分野だと悪い奴とそうでない奴はもっとはっきり違うんですよ。で、もっというとヤクザ系かまともな企業かになるんですよね。で、ヤクザはまたネット大好きで(笑)、やっぱりそこ警察が手薄だと思ったら入っていけると思うんですけど、まだ使いこなせてないんじゃないかなぁ。

サイバーウォーズ

—インターネットってグローバルな展開が出来るわけですが、法律が国によって全部違いますよね。そういう意味で、これから世界的なルールができる方向なのか、それとも、やっぱり各国でやるのか、今、日本でもTwitterとかfacebookとか海外の企業が来ていて、かなり利用されています。利用者が非常に多くなってくると、日本のルールとちがうルールで対応されトラブルも生まれるのではないかと思います。その辺りどうお考えですかね。

そこで、能天気な人たちは段々と協調が進んでいくだろうとかって思うんでしょうけど、全然状況は認識違っていて、要するにどっちかといったら世界が全然平和でない方に向かって進んでるんです。これは恐るべき戦いというか、これがきっかけで、戦争が起こるぐらいのことを最悪考えてもいいくらいかもしれない。それぐらい警戒的に見た方が、たぶんいい戦略にはなる。で、技術とか色んな研究会とか顔出して、ものすごく最高レベルの技術を持っているような人たちと接触しようとしているんです。僕も一応理科系出身だから分かるんですけど、セキュリティの分野で、今、すごいことがあるんですよ。すぐに分かったのが、人材はみんな対テロに引き抜かれて、民間には残っていないんじゃないかと。ほんとうにセキュリティっていうのを一番広い意味で考えたら、サイバー戦争要員なんですよね。で、日本の警察も、アメリカから対テロの協力をしろとか色々言われるのに対応する為に、能力あるやつは手一杯で、各県警で被害者が来るやつに対応できるやつが人員的にもういないんですよ。被害届出したけど警察は何もしてくれないっていう話ばかり聞きます。で、そんな対応できる人は、もう他の事で手一杯で、他の事っていうのは、対テロと国際協調関係なんだけど。そこに相当な人材を持っていかなきゃいけなくて、みんなアメリカの方向いて、日本に背を向けて、「日本で起こってることなんて構ってられない」くらいの、そういう感触を何年か前ですけど持ちましたね。

で、例えば原子力発電所とかで使ってるPCをどう守るかとか、っていう次元からまず考えなきゃいけなくて、ソフトで戦えばやっぱり破る側が勝つんですよね。なんとなく分かると思うんだけど、で、負けんとこと思ったら、すごい腕利きのやつが24時間体制でずっとなんかやってなきゃいけない。それはとんでもない費用で、どうするかって言ったら遮断するしかない。だからインターネットに繋がないですよね。まあ、多くの人はやってますよね、大事なやつは。そのくらいじゃ駄目で、要するに原発のところにガーッと乗り込んできてUSBのとこに差し込んで、そこから電波で飛ばして繋いでそこから乗っ取れるから、つっこんで電波飛ばして繋げないというところまでやってる。これその時に仕入れたんですけど、何年か前の話です。

—じゃあさらに事態は進んでますよね。

そういう分野に力が全部行ってるんじゃないかなって感じはしますね。だからアメリカも民間の中で、ポルノがなんとかとかそんなん、もうどうでもいいんですよ(笑)。本当に。あんなんで誰も目も瞑らへんとか言って、確かにそうなんですよ。だから、あれめちゃくちゃ野放しや野放しやって言ってるけど、対応することが無理なんでしょうね。

—私たちの中には、表現の自由に抵触する恐れのあるものは削除もできないし、グレーのラインをどう判断すればいいのかなぁということもあるんですけどね。私は違法有害情報相談センターの仕事をしてるんですけど、そこに集まってくる問題の中で、海外のサーバーの場合に対応方法が限られるのでみんなとても困るんです。

だから、とりあえずは、日本で違法なやつをアメリカに置いてあるサーバー上に、ってことがやれるという問題が具体的な話題で、それを引っ張れる法整備というのは、とりあえず警察は考えてるんだと思いますね。

—そうしないと、悪いことをするために海外サーバーを利用しようという人がどんどん増えますよね。

今、だいぶアメリカに出始めましたね。英語ができる人は大体、半額で手に入るけど、日本語でアメリカのサイトだと倍ぐらいかかりますね。それで、いくつか見たら全部そうだから、なんかもう整ってきたなぁという感じはしますけどね(笑)。

—これをどういう風に乗り越えていくのかなぁと思っているんですけどね。

それから、あとホントはね、交通量から言うとアダルトサイトがすごい分量なんですよ、動画だから。だから、あれをとっちめる方法はものすごい簡単で、「使い放題」をやめさせれば、どれだけのデータ送ったかで従量で課金していけば、動画で食うやつはみんな全滅する。でも、それすると、一挙に発展阻害になるという状況になって、動画でまともなのが使えなくなる。動画がデータ量を圧倒的にとってますから、その動画の内のすごいパーセンテージがポルノだというのは間違いないわけで。で、もう一個ああいうのをとっちめる方法は、やっぱり脱税なんですよ。

これも、日本での違法情報は海外にというのと似てるんですよね。実際にそういう動きがあったというのは聞いてますけども、税務署があまりにややこしくて嫌がっているとかいう話は聞いたんですけど(笑)。

—(笑)そうなんですね、ややこしいんですね。

要するにこれまでの税務署の経験じゃ無理なのかもしれませんね。色々リアルワールドでやってきたやつのような厳密な証拠を必要とされるわけですよ。ダウンロードしてそれが証拠になります、というわけにはいかないでしょ。で、差し押さえするときにそういうのは、どうなるとか、とても難しいのがたくさんある。

—警察のサイバー専門の方たちは、増やしていく予定なんですか。

その予算をいま請求中なんですよ(笑)。今年130何人の予算を請求中ですね。

—これからも、増やしていかないと追いつかないですよね。

そうなんですよね。中国とかアメリカはむしろサイバー戦争戦闘要員を育成中なんですよね。

5年後10年後の法整備

—さて、次の質問なんですが、5年後、10年後と言ったらもうインターネットの方向性でいうと予想もつかないような発展の仕方をすると思うんですけど、今の青少年の状況とか、犯罪の状況とか、その辺がどうなるかを聞かせていただければと思うんですが。

今ならではの状況というのはね、親がネットをやったことない世代だったという中で、青少年に対峙してる、っていうその問題が非常に大きいと思いますね。ネットをある程度分かって、10年後めちゃくちゃ進むと言っても、今の段階で子どもの時から接触してる人はもっと違うんだろうな、さすがにその時に今の10倍、100倍のスピードで進むってことが無いとすれば、なんかちょっと小休止するかもなぁという感じはしますね。

—5年後、10年後の法整備として、どういう事が考えられるんですかね。

うーん、法整備っていうのも色々あるんですよ。一番考えなきゃいけないのは、やっぱりプライバシーということをどこまで考えるかだと思ってますね。
法整備と言えば法整備なんだけど、ある意味で憲法問題なんですよね。

僕が大きいこと考えてるのは、これまでは警察が色々情報持ちすぎるのが怖いという古い警察国家批判みたいな話できたけど、そんな状態じゃないんじゃないかなぁと。これもっともっと発展の速度が増せば、警察の手に負えなくなる、間違いなくね。ところが一歩出たら、Googleなんかもそうだけど、ものすごい強い企業が情報持ってて、ある人の色んな事、どんな品物買って、どこにいるといった位置情報まで、あれ全部統合できたら完全にその人のプライバシーを丸裸にできるわけですね。で、どうするかっていうのは絶対そのうち問題になってきて、今は私的企業の自由を認める方向で来てるわけですね、規制緩和、自由競争で、だけど弊害が絶対出ると思いますよね。企業の監視というのも必要だろうと思ってますね。

—企業の監視ですか。

ええ、やっぱりものすごい大きな企業って、世界に影響を与えるような所でなんかあったら各国の連携の不備をついてうまいこと逃げるとか、すごいことできるんですよね。で、やはり大手企業をコントロールしないといけないとダメなんで。だから、一般企業がどれだけ個人の情報を集められるかっていう、個人情報保護法の延長線上ですけど。なんでもかんでも個人に付属する情報を集めていいのかっていう話ですね。一方でビデオ録って、取り調べ取るとかやってますけど、あれは録るって言うのは協力しているということで、しすぎているんですよ、あれ録られたら何もできなくなる。その時にどうするかということで、どうしても録らなきゃいけなくなったときに、それを勝手に見れないようにしなきゃならないんです。

我々学内でトラブった時、やっぱりまず、事実関係調べるんだけど、要するにどんな奴か、なんですよ(笑)。その学生がなんかやったときはね。で、どんな奴だったかで対応を完全に変えなきゃいけないわけで、その時に、過去のデータを見ると、やる側が全員善人なら、やっぱりその方がうまくいくし、それが手に入ったらもうさっさっと指導できるんですよね。

—でも、個人情報保護法で過去のデータを取れなくなってますよね。

そうなんですよ。でも、教育機関は教育目的以外で使いませんって、親の職業など個人情報を全部今でも持ってるわけなんですよ。それが消費段階でどれだけ許さていいのかっていうね。

—ネットの世界もそうですが、特にすごいスピードで進化するところに、法律っていうのは、後追いだから、なかなかピッタリとうまいこと行く法律を作れないって話を聞きますけども(笑)。

それは、常にそうなんですね。歴史なんて調べたら、当たり前で、交通調べたらもっと笑えますからね。だって、自動車発明されて走ったとき信号無いんですよ(笑)。で、道路交通法もないんですから。

—過去の経験からいくと、どのくらいで整備するものなんですか。

いやーもう、昔は法整備まで20年とかかかってますよ。だから道路交通法できるまで、最初の1台から数えるともっとなんだけど、もう社会状況で全然違うんですよ。だから、後の時代から見たら、今はそんな感じなんでしょうね。まあほんとに法整備はしてないし、ただ、交通事故の事考えたら、ネットはものすごく安全なんですよ。はっきり言って。

本当の公共の利益

河合幹雄氏と鎌田デスク

—なぜ、ネットはこれだけ危険だと言われるんですか?

だから、みんなすぐネガティブな発想で怖いとか言ってるけど、実はよく考えたらものすごい良くなってるんですよ、生活が。だからもっと他のところの問題ですよね。とにかく変な危機意識で予算もらったりしてますね。不安産業と言われてるんですよ。今、それでどんどん稼いでる。で、余裕があるからどんどん使うってことなんですよね。

—実態を正しく知るっていうのはすごく大事ですよね。

だから、やっぱり距離を置いてみることですね。歴史を勉強してほんとに意味あるなぁと感じます。自分で自動車の歴史を追っていったときに、交通事故の損害賠償のケースは、確かにと思いましたね。

—未来から見たら今は、そういう時期だってことですよね。なんで、携帯を持たせなかったんですかね、とか(笑)。

そうそう。ネットについて怖がってるけど、普通の判断力ある良いお子さんは、変なの入ってきたら、すぐ消して全然大丈夫なんですよ。実はね。

—そうですね。ほとんどの子どもたちは、ちゃんとやってるんですよね。

で、有害情報から身を守るのは大丈夫なんだけど。携帯でゲームをやりだしてずっと止まらないっていうのはあるでしょうね。メディアで色々見た奴が有害とか言いますけど、見たことによって悪くなるっていうのは、ほとんどないと思いますね。

携帯電話開けたとたんに有害情報だけが出る携帯なんてないんだから(笑)。フィルタリングとか議論してますけどね、もちろん、野放しにしちゃダメだから、必要なんだけど、いわゆる子どもの教育面で、有害情報に触れさせないようにしようということとはあんまり子どもの健全な成長に繋がらないんじゃないかなぁと。むしろ、生活環境的にどんな変な看板出しても良かったり、どんな変なもの送りつけてもいいというわけにはいかないということのほうが、本当の公共の利益だと思いますけどね。出版労連の反対集会に出て、絵本業界の人と話ができてなかなか面白かったんですけど。ネットで言うと、変なページがというよりもやっぱりあのバナーがひどいって(笑)。確かにそうだなぁと。

—クリックさせようとしますからね(笑)。

バナーめちゃくちゃですよね、しかも勝手にバーンって出てくるし。なるほど、とか思って。僕も、新聞の記事の批評で、「見出し」がいけないと言いました。内容は全部ちゃんと書いてあるけど、「見出し」が週刊誌並みになってるっていうわけでね。

—人を引き付けるためにやってるわけですからね。

やっぱりね、資本主義の中で刺激的なものを競ってるから。真面目に見たらめちゃくちゃなものもありますよね。

—今日は、お忙しい中、なかなか聞けないお話をありがとうございました。

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