このページの本文へ

このページの位置:
ホーム > 情報モラル・リテラシー教育 / フィルタリング / 子どもの利用実態 / 新たな端末・サービス / 各地の取り組み(ケータイ所持規制) / インターネットの安心・安全をめぐる動き / その他 > 子どもたちがICTを使いこなせる大人になるために(1)基調講演

「子どもたちがICTを使いこなせる大人になるために(1)基調講演」
川崎市PTA連絡協議会 ICT学習会(2012年7月20日)

カテゴリー: 情報モラル・リテラシー教育 / フィルタリング / 子どもの利用実態 / 新たな端末・サービス / 各地の取り組み(ケータイ所持規制) / インターネットの安心・安全をめぐる動き / その他

スマートフォンってどんなもの?子どもが使って大丈夫?

2012年7月20日、川崎市PTA連絡協議会主催で実施されたICT学習会での千葉大学教育学部教授 藤川先生(安心協普及啓発作業部会主査)による基調講演を紹介する。藤川先生が専門である教育方法学の研究の一環で、子どものメディアリテラシー研究や啓発活動に取り組まれているが、今回はスマートフォンに焦点をあてた講演を抜粋する。

藤川大祐氏

基調講演講演者
藤川大祐氏 千葉大学教育学部教授

1965年、東京生まれ。教育方法学・授業実践開発を専門とし、メディアリテラシー、数学、企業との連携授業等を研究。文部科学省「ネット安全安心全国推進会議」委員、安心ネットづくり促進協議会スマートフォン作業部会主査/普及啓発広報副委員長、NPO法人企業教育研究会理事長、NPO法人全国教室ディベート連盟常任理事等をつとめる。

著書『学校・家庭でできるメディアリテラシー教育』(金子書房)、『本当に怖い「ケータイ依存」から我が子を救う「親と子のルール」』(主婦の友社)、『ケータイ世界の子どもたち』(講談社現代新書)、『企業とつくるキャリア教育』『企業とつくる食育』(以上、教育同人社)、『楽しく学ぶメディアリテラシー授業』『メディアリテラシー教育の実践事例集』『養護教諭のためのメディアリテラシーによる健康学習』『授業分析の基礎技術』(以上、学事出版)、2012年10月10日発売『いじめで子どもが壊れる前に』(角川学芸出版)他。

ネットにつながる電子端末は、ますます高性能に、より安価に進歩する

スライド画面「藤川大祐氏プロフィール」

21世紀に入ってからこの12年間ほどで、ネットにつながるコンピュータや電話といった電子機器の性能は飛躍的に向上しています。2000年頃にネット検索が自由に出来る携帯電話はあまりありませんでしたし、カメラ付き携帯電話が発売されたのも2001年あたりからです。今では当たり前になっているゲームやテレビ機能もなかったことが思い出されます。

コンピュータや携帯電話といった電子機器の性能は、1年半で2倍、12年で256倍も向上することが経験則から知られているのですが、これは私たちが現在1万円で購入できるスマートフォンは、2000年ころ、200万円台で購入されていたコンピュータに匹敵する性能を持つということを意味しています。この進歩の勢いは今後も続くと考えられており、皆さんのお子さんが12年後、大人になる頃には、現在では考えられないような電子端末が登場することが予想されるのです。

大人は、こうしたデジタル機器が、子どもたちの情報入手行動や、デジタル機器への依存といった利用行動に大きな影響を与えることを見通しながら、子どもたちと関わっていかなくてはいけないのです。

スマートフォンの普及により、国内通信事業者頼みの青少年保護は難しくなる

現在普及が進むスマホは、端末やソフトウェアといった仕組みが世界中の電子機器メーカーによって開発されています。従来、日本の国内で使用されていた携帯電話、フィーチャーフォンと言われるものは、製造するのは国内の電子機器メーカー各社でしたが、その仕様は目的に応じてNTTドコモやau、ソフトバンクといった携帯電話会社の主導のもとに決定されていました。こうした環境下では青少年保護用の端末を利用することがハード・ソフト両面から可能だったのです。

しかしスマホはアップルのiPhoneを考えてもわかるように、メーカー主導で世界各国に単一の製品が提供されており、日本独自の青少年保護といった個別の対応を盛り込むハード設計にはなっていません。仮に、スマホに世界標準の青少年保護の仕組みを乗せる議論を行うとしても、各国によって青少年保護の前提条件や許容レベルが異なるため、話し合い自体が難しいのが現状です。電話から発展したフィーチャーフォンが電話会社主導でメーカーの協力のもと開発が進められた点とは異なり、普及が進むスマホはコンピュータの小型化したものに電話もついている、という位置づけであり、回線も電話回線以外の無線LANにも接続される以上、今までのように電話会社に秩序を維持してもらうことには限界があることをおわかりいただけると思います。

フィルタリング利用によってフィーチャーフォンの青少年利用が、より安全・安心に

立て看板

今まで主流であったフィーチャーフォンの利用において、詐欺、児童買春、誹謗中傷やいじめのような犯罪被害が起こったことは皆さんよく御存じだと思います。こうした問題から青少年の安全・安心を守るために、安心協も諸団体や保護者の皆さんと連携して対策に取り組んできました。2009年に施行された青少年インターネット環境整備法によって、フィルタリング提供が義務づけられ、事業者のネット監視や、関連団体や学校現場での啓発活動も奏功してフィーチャーフォンでの安全・安心な利用はここ数年で向上しています。出会い系サイトによる被害児童の推移をみても、法の施行後、明らかに減少がみられます。一方で、コミュニティサイトが新たな出会い系被害の場となっていることには引き続き注意が必要ですが、事業者の取組も進んでいるため、今後減少していくと思われます。

フィーチャーフォンとは異なったつながりが可能になる新たな端末の問題点

しかし現在、携帯電話契約店の店頭で保護者の皆さんがお子さんに新たに携帯電話を持たせる際に、新たな問題が起きています。スマホが新製品の主流となり、保護者に安全安心な携帯電話を選ぶことの難しさが出始めているのです。最近の調査では高校生の過半数、中学生の2割程度がスマホを利用しているというデータもあります。

今までの青少年保護の取組は、危ないサイトに青少年を行かせない、つまりフィルタリングの利用を促進することが中心となって奏功してきました。一方、スマホは前述のように携帯電話会社の既存の回線のほかに、無線LANで接続して利用することができます。市中のコンビニや飲食店のほか、ゲーム店舗などでも接続することができ、フィルタリングのかかっていない状態で利用されてしまうケースが少なくありません。

これはスマホだけでなく、NintendoDSや、PSPのような通信機能を持ったゲーム機、iPod touchのような電子端末でも同様であり、実際にゲーム機を利用して自分で出会い系サイトを作り、事件となった中学生のケースなどが事例としてあります。

フィルタリングの設定を自分で選びながらスマホを安全に利用することには難しい部分も多く、また、アプリからの接続ではフィルタリングは機能しないことを知っておく必要があります。

新たなネット利用の課題と現状

(1) LINEの利用から出会い系犯罪へ

現在、国内のスマホ利用者のおよそ半数が利用しているアプリにLINEという無料通話・メールアプリがあります。IDだけで誰とでも無料でメッセージのやり取りができるため人気がありますが、このアプリのダウンロードページには利用者が投稿できるレビュー欄があり、ここに自分のIDを書き込んだり、他人のIDとメッセージをみたりして、出会い系の犯罪につながるケースが起こっています。従来のネットの出会い系サイトへの書き込みなどに比べて、アプリでは低年齢層でも簡単に利用ができることにも注意が必要です ※1

(2) ネットの違法音楽ファイルダウンロードで著作権法違反に

フィーチャーフォンの利用では、着うた、着うたフルを課金ダウンロードして手元で楽しむという利用行動が定着していましたが、スマホからネット上の違法な音楽ファイルのダウンロードがより身近になったことにより、違法なダウンロードをして著作権法違反となるケースも急激に増加しています。

(3) ネットビジネスのフリーミアム化で、依存的利用の危険性が高まる

GREEやモバゲーといったソーシャルゲームサイトは利用無料をうたってユーザーの手軽なゲーム利用を拡大させてきました。現在、追加的なアイテムの購入に課金するアイテム課金モデル等によって収益を図るフリーミアムモデルが主流となっています。これはスマホに限らずフィーチャーフォンでもある事例ですが、ネットビジネスの世界では、フリーモデルで利用者を獲得したのち、一部のユーザーからの課金で収益をあげるというフリーミアムモデルがあることを知っておく必要があります。

景品表示法違反の疑いから各社が提供を中止したコンプガチャはカード合わせの仕組みによってゲームの射幸心を高めたものであり、ソーシャルゲームの利用では、時間だけでなく、利用金額でもゲーム依存が過度にならないよう注意する必要があります。

青少年の利用については各社とも5000円から10000円など、利用料金に上限を設けるなどして対応していますが、保護者の了解のもと、子どもが利用してよい金額なのかどうなのか、話し合って利用する必要があると思います。

(4) 個人情報の管理には子どもでは限界がある

スマホには電話帳や写真アルバムなど、多くの個人データが保存されています。こうした個人情報がアプリのダウンロードの際に、事業者側に提供される仕組みをよく理解しないまま許諾をし、利用しているユーザーは少なくありません。マーケティング事業者の間では、行動ターゲティング広告という大量のユーザーデータを収集・分類し、より効果的な広告を行う新たな手法が注目を集めています。アプリの利用によって、自分のスマホのデータが引き換えになる場合があり、友人の連絡先などのデータも自分が流出させてしまう危険性があることを知っておく必要があります。子どもの場合、利用許諾などをきちんと読んでも意味がわからず、そのまま利用に進んでしまうケースが多いため、注意が必要です。

※1 アプリのレビュー欄についてLINEでは異性交際目的のID交換を利用規約で禁止し、アプリのレビュー欄に異性交際目的のID掲載がないか随時チェックしているとのこと。そのような書き込みを見つけた場合、レビュー欄運営元にただちに削除を依頼し、運営元で削除されているとのことです。

現状でのまとめとして

会場ホール正面

スマホの利用によって新たなネットの安全安心を損なう問題が生じている現在、電子端末、ネット利用リテラシーの未発達な子どものスマホ利用は基本的に困難なことだと思います。こうした機器を安全に使いこなして有用な情報手段とするには、社会全般のルールや仕組みに子ども自身が成長に従って慣れていく必要もあります。

そうはいってもスマホが新製品の主流となる現状で、その利用をより安全にするための対策も知っておく必要があります。現段階での対策としては、まず携帯電話事業者の提供するフィルタリングに加入したうえで、無線LANの利用を制限する、あるいはフィルタリングをかけるソフトを導入する、アプリマーケットの年齢制限を利用する、あるいはアプリのダウンロードや起動をとめるソフトを利用するといった個別の対応が考えられます。

スライド画面「携帯電話に関する啓発教材」

また利用金額に制限をかけることも大切です。Android端末の場合は携帯電話会社の料金代行徴収サービスを利用できるため、あらかじめ有料コンテンツの利用禁止や、上限設定を行うことができます。iPhoneの場合は手順がわかりづらいですが、初期でのクレジットカード登録を避け、プリペイドカードで管理するなどお小遣いの使い方と同じように事前に子どもと話し合って進めることが不可欠です。

子どもの安全・安心なスマホの利用は、現段階では非常にハードルが高いといえます。それを十分理解したうえで、よりよい利用や仕組みを理解しながらで、利用を学んでいくしかないといえるでしょう。携帯電話に関する啓発教材 ※2 なども利用し、家庭の場でも理解を深めていただければと思います。

※2 NPO法人企業教育研究会『考えよう、ケータイ』シリーズ。学校や地域団体に無料配布されている指導案つきDVD教材などが利用できる。

アーカイブ

ページトップへ