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「文部科学省委託事業 『ケータイモラルキャラバン隊』 トークセッション」
鹿児島県PTA連合会 研修会

カテゴリー: 情報モラル・リテラシー教育 / フィルタリング / 子どもの利用実態 / 新たな端末・サービス / 各地の取り組み(ケータイ所持規制) / インターネットの安心・安全をめぐる動き / その他

子どもたちが情報社会に向き合うために、大人がやるべきこと

文部科学省委託事業「ケータイモラルキャラバン隊」鹿児島県PTA連合会 研修会が2013年1月20日に開催された。子どもたちが、どのようにして情報社会に向き合えば良いのか、大人は何を手助けすれば良いのかをテーマに、鹿児島県の取り組みと合わせて5人のパネリストがトークセッションを行った。

パネリスト

トークセッションパネリスト

  • 尾花 紀子 氏 (ネット教育アナリスト)
  • 川又 竹男 氏 (文部科学省 スポーツ・青少年局 青少年課長)
  • 中西 昭郎 氏 (鹿児島市立甲南中学校 校長)
  • 新原 市郎 氏 (鹿児島県PTA連合会 副会長)

コーディネーター

  • 曽我 邦彦 氏 ((社)日本PTA全国協議会 元会長)

鹿児島県の取り組みについて

曽我邦彦氏曽我氏)本日の勉強会での理解を、子育ての場での実践に活かしていただけるよう、このトークセッションでは会場の皆様と「子どもたちが情報社会に向き合うために大人がやるべきこと」についてご一緒に具体的に考えていきたいと思います。 先ほど尾花さんからご指摘がありましたように、PTAの方が考えがちな、携帯やスマホを保持させなければ子どもは安全、という認識が誤りであるということはご理解いただけたと思います。ゲーム機や音楽端末、カメラなどネットに接続可能な端末すべてを排除していくことは合理的ではない時代がやってきている以上、ネット社会を拒絶するのではなく、ペアレンタルコントロールの在り方を含めて安全なネットとの付き合い方を学ぶことが大切です。すでに携帯、スマホの利用だけを考えていては不十分なのです。こうした視点を持ちながら、鹿児島市立甲南中学校の中西校長先生から教育現場の現況をお聞かせいただきたいと思います。

中西氏)先週、阪神大震災が発災した1月17日に災害対応に携帯電話が役立っているという話題がニュースで取り上げられましたが、平成6年度に430万であった携帯電話の契約数は、平成24年9月時点で1億3000万になっています。学校現場では、だいたい生まれた時から携帯電話があった中学生世代、若い時に使い始めた40代くらいの教職員、そして利用がややおぼつかないと感じる私のような、さらに上の世代との教職員がおり、各自のメディア体験が異なる背景をもってさまざまな問題に取り組んでいます。  目下の学校現場での取組ですが、1点目は、ICT活用、つまり子どもの情報活用能力を高める教育を実践しています。現在の中学校では、電子黒板やデジタル機器が授業で利用されていますし、総合的な学習の時間で行われるプレゼンテーションなどでも情報端末やソフトが利用されています。2点目に、こうした活用スキルとともに、モラルを併せて教育しています。3点目は生徒指導の観点から、携帯電話の所持や利用の実態把握、トラブル発生時の対応などを行っています。最後に4点目として、こうした安全な情報端末の利用や実態について、保護者の皆様にも啓発、周知する取組を行っています。これらの取組のなかで最も大きな課題となっているのは、生徒指導に関わる問題です。具体的にはネットやメールでの誹謗中傷やいじめ問題、アダルトサイトの閲覧などがあります。また、問題傾向のある生徒たちの交流が、携帯電話を介して広がり、その実態把握が難しくなったことや、ネット閲覧で昼夜が逆転する、朝起きられないといった生活習慣の乱れ、利用にともなう高額利用料金請求などがあります。さらに、こうした利用の実態を把握することが非常に難しい問題になっています。本校での生徒の携帯電話の所持率はおよそ50%ですが、真偽のほどはわかりません。また、携帯電話などの情報端末利用にあたっての知識や技能では、教える側の教師より子どもの方が詳しいことが多く、指導しにくい面が出てきています。ご家庭と学校側での意識の違いが大きい場合もあり、学校側が指導の必要性を感じるご家庭ほど、こうした啓発の場に参加していただけないということも感じております。

曽我氏)ありがとうございました。携帯電話の所持率については、調査結果にはばらつきがあるものの、実態ではほとんど差がないとも言われております。次に鹿児島県PTA連合協会会長の新原様、よろしくお願いいたします。

新原氏)鹿児島県PTA連合会ではネット利用の啓発注意をよびかけるリーフレットを作成して、中学生・高校生に配布をしております。今年度は県から配布される予定です。またネットいじめに関する研修会への助成を行っており、昨年度実績で44件、今年度の申請ベースで50件を超える申し込みを受けています。この研修会をすべての学校に広げていただきたいと考えており、講師紹介も行っています。PTAの委員会内でも警察関係者などをお招きして勉強会もしています。鹿児島県では小学校から高校生の問題を一括して扱っており、年代の広さから難しさをもつ点もあります。鹿児島県では「携帯電話は持たせないことが望ましい」という基本方針をとっていますが、現在の小学校での子ども本人の携帯電話所持率は16.9%、中学校は23.1%、高校は94.7%、特別進学校は18.4%で、年々増加しています。さきほど「携帯電話は持たせないことが望ましい」と申し上げましたが、一方で、われわれとしては所持しているという現実から目をそむけることは出来ないと思います。携帯電話が本当に必要なのか、必要ならどのように使うのかといった家庭の中でルールを作り、子どもたちに守らせて使用させることが保護者の責任として大切だと思います。

スマホでのフィルタリングとは?

曽我氏)本日は小学生の保護者の方もたくさん参加されています。低年齢層のうちから保護者の方が関心をもって取り組んでくださっていることは非常に喜ばしいことだと考えております。2011年、総務省が、「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備に関する提言~スマートフォン時代の青少年保護を目指して~」出した時点でのスマホの所有率は5%でしたが、現在では高校1年で70%に達しています。この現状を法律の整備が追いついていないとみるのではなく、すでにあるルールの中で適正に使っていけると考えることもできると思います。そうした観点から、委員を務めていらっしゃる尾花さんにお話をいただきたいと思います。

尾花紀子氏尾花氏)同じ母親としての立場からもお話していきたいと思います。現在の法律では、保護者が契約時に責任をもって携帯端末を子どもに与えるということがありますが、その前提として、子どもがきちんと使えることを保護者が責任をもって確認すること、という大切な点があります。フィルタリングは事業者に課せられた責任ですので、保護者の責任としてはあくまでも子どもの利用の必要に応じて調整、フィルタリングの解除申請などを行っていくことが大切です。家庭で利用のルールを話し合ったりすることも大切な保護者の責務です。

曽我氏)青少年インターネット環境整備法ができた時、私どもは青少年保護の観点からフィルタリングなどのお願いをいたしました。ところが、使う側の保護者が初期からフィルタリングをはずして野放しの状態で子どもに与えるという状況では安全な利用は実現しません。そうした状況のなかで所有率もスマホの機能も変化しています。昨年はスマホにはフィルタリングがかからないという点をお話したかと思いますが、現在ではAndroid系などで一部、フィルタリングの利用できる端末も使用可能になっています。

尾花氏)フィルタリングについてですが、スマホでのフィルタリングでは、インターネットアクセスができるブラウザでの利用とアプリでの利用に分けて考えていただきたいと思います。アプリフィルタリングはAndroidだけで加入手続きをした上で利用できるようになりました。現在ではauからサービス提供されており、年度内に他の2社でも提供が始まりますが、あくまでもAndroid端末にかぎられたサービスです。iPhoneはApple社でのアプリ審査を経ているため、他社からのフィルタリングを提供しないというのが今の立場です。ただ、Apple社のアプリであっても、日本では18歳未満の提供はコミュニケーションサイトの利用が制限されていますが、アメリカなどでは4歳から利用できるコミュニケーションサイトがあるため、こうした海外での規制のギャップが残されていることをしっておいていただきたいと思います。

曽我氏)スマホという道具もお子さんの目的やスキルに応じて適切に渡していただきたいというのが私たちの考えの基本です。そうした上で事業者の方との連携もうまく奏功するわけです。 

学校と家庭とが話し合える場の不足

中西氏)一例ですが、テレビが登場した時に、テレビばかりみて勉強しなくなったという問題が発生しました。それに対して学校と家庭は、きちんと宿題をやらせるなどと家庭からの声が寄せられ一致して対応しましたし、自転車の所有についても、交通安全の取組を徹底することで家庭と連携して対応してきました。子どもたちの道具を、安全に適切に利用することができるよう学校と家庭は協力して取り組んできたのです。こうした連携が変化してきたのは、ゲーム機が家庭に登場した辺りです。ゲームの長時間利用でなかなか起床できず、登校しぶりから不登校に陥るといった問題が生じたわけです。携帯電話の利用となると、長時間利用の実態そのものが保護者の目にもみえにくくなりました。家庭の問題に、学校側がどこまで積極的に関わるのかという難しい問題が生じています。法的に整備された対応もありますが、学校と保護者の話し合いの場自体が不足していると感じているのが正直なところです。

新原氏)一部ではたしかに、話し合いの場が不足しているケースもあるかもしれません。また、話し合いの場に、来ていただきたい保護者の方が来てくれないという問題もあります。PTAは保護者と先生方の話し合いの場ですから、同じ方向を目指して活動していけることが大切だと思っています。

中西氏)学校と保護者との話し合いの場は持たれても、その中身が大事で携帯端末の危険性や現状についての基本的な理解をもったうえで話し合うことが必要だと感じています。ただ、ばくぜんと、なんだか危ないよね、という話し合いで終わってしまうのではなく、具体的な方策などが共通に理解された上で、話し合うという段階が重要だと思います。

曽我氏)本日のような専門家のお話をきいた上での話し合いは、非常に有効かと思います。学校教育現場ではデジタル教科書の導入の話もありましたが、政権交代を経てその点はいかがでしょうか?

川又氏)政権交代前と基本的なスタンスは変化しておりません。文科省としてはデジタル機器の適切な利用をこうしたキャラバン隊の活動などによる勉強会を通して広げていくことが大切と考えておりますが、家庭内でのルール作成などを浸透させていくことが、より重要な課題です。グレゴリー君の18か条が大変な話題になりましたが、これは親からの禁止一辺倒のルールではありません。子どもからみて「自分自身の体験が大切だ」「いい音楽を聴きなさい」というような新しい道具を活かして子どもの見識を広める機会にしてほしいという親の願いが書かれています。こうした子どもの成長を見守る視点をもった家庭でのルール作りの浸透に努めていきたいと考えております。

曽我氏)スポーツ青少年局スポーツ青少年課長の任でいらっしゃいますが、スポーツを担当する部署がネットの問題を扱うということでしょうか?

川又氏)スポーツ担当と青少年担当をしておりますが、青少年に関わる取組を他の省庁と連携して行っています。学校のことは学校のことで、といった狭い取組にならないよう、大きな視点から問題を捉えることが必要だと考えております。 

子ども達の対話を通して広がる安心・安全の輪

曽我氏)バーチャルな体験をより有益なものにするためには、体験する側にリアルな経験の蓄積が必要だと思います。また、現状だけをみて論じるのではなく、よりよい未来になるためにはどうすればよいかという視点で議論がすすめられることが大切ですね。佐賀県ではデジタル機器を持っていれば、困ったときに対策ができるという観点から、タブレットを全員に持たせるという方針をとっていますが、その背景には、アンケート結果でわかった子どもたちが困ったときに選ぶ相談相手の結果がありました。1位が保護者、2位が友達、3位がネットで知り合った友達、先生は7位でした。つまり、佐賀県の先生方は、学校がネット端末を持ち込ませないままでは、子どもたちが、ネットでの問題は先生が取り合ってくれないという間違った受け止め方につながり、学校がおいてきぼりのような状態になってしまうと考えたわけです。タブレット所持が前提になった後、こどもたちは学校に戻ってきたとのことです。

尾花氏)今回は18か条についてお話しましたが、これは、デジタル端末の知識や理解だけではままならない、ご家庭での子どもと保護者のよりよい話し合いの方法を話し合うきっかけにしていただければ、と考えたからです。基本には子どもたちとたくさん会話の時間を持っていただきたいと申し上げていたいと思います。心配のあまり口を出しすぎると子どもは親と話そうとしなくなります。ルールを細かくきめて子どもを縛るのではなく、今日のきっかけをお子さんとの会話の糸口として役立てていただきたいですし、細かい携帯電話の技術や使い方については、むしろ、聞き役にまわってお子さんに説明してもらうのがいいと思います。保護者を相手に話しているうちに、子どもは自分で、そう言えば、やってはいけない使い方をしているな、と気づくこともあるでしょう。理解も深まります。また、こうした行事に参加していらっしゃらないご家庭も多いのですが、そうしたご家庭のお子さんも皆さんのお子さんとネットでつながる関係性にあります。関わりを持たないご家庭の保護者に啓発活動をしていくのではなく、そうしたお友達もお子さんと一緒に話し合いの場に誘っていくことで、安全・安心の輪が広がることが有効だと考えています。

曽我氏)問題がみえると対応もできますから、むしろ肯定的に考えて取り組みたいものですね。また、保護者の皆様の子育ての時間が自身のネット閲覧の時間に浸食され、子どもと向き合った時間がおざなりになってしまう、なんてことがあるかもしれません。気付いたときに学びなおす、ルールを作り直す、という姿勢が保護者にも大切だと思います。

檀上の様子新原氏)PTA活動は子どもが学校で学び、育っている期間に、親も学び、ともに育つという取組です。本日の勉強会では私もたくさん学ばせていただきましたし、子どもが大切だという気持ちから保護者が行動をおこせることはたくさんあると感じます。

これからの子ども達とのかかわりについて

曽我氏)PTAの活動はお子さんの卒業とともに親も卒業するわけですが、こうした取組を社会に広げていくことが大切だと思います。最後のまとめとして、皆様から一言ずつお願いしたいと思います。

中西氏)中学校では人間関係に悩むこどもが大変多いと感じています。ただ、考えを変えてみると、他人との考えの違いで悩むことは、人と人の距離感を学ぶことでもあります。柳田邦男のエッセイのなかで、乳児健診に参加する母親たちのことが書かれたものがあるのですが、お母さんたちが授乳しながらそれぞれのお子さんについて他のお母さんと情報交換をしている。ただ、どのお母さんも授乳しながらわが子の顔ではなく、携帯電話の画面をみている、というものです。人間関係の構築という意味では、大変考えさせられる話です。学校現場でも、一斉見学型からグループ別自主研修型へ修学旅行のスタイルを変えたり、職場体験を取り入れたりして、子どもたちに人間関係をいかに経験させていくか、心を育てていくか、といった点に重きが置かれるようになってきました。こうした取組がネット上の誹謗中傷といったトラブルもなくしていくのだと思います。人間の関わりといったリアル体験を積ませることが大切なのではないでしょうか?私事ですが、先日、事前に時間も場所も決めずにデパート内で妻と待ち合わせた際、携帯電話を自宅に忘れた妻と連絡が取れなくなるということがありました。携帯電話の利便性にたよらず、相手の思考や行動パターンに思いを巡らせて何とか会うことができた時に、久しぶりに自分の思考力を使ったなと感じたものです。自分の頭で考える、判断することの大切さを伝えていけるような教育現場でありたいと思っています。

川又氏)文部科学省でも子どもたちのさまざまな体験を積むことが大切だと考えています。中教審の最後の答申でも、子どもの体験活動の大切さを軸にしております。こうした体験は子どもの人生を豊かにするというデータも出ております。委員として参加されたサッカーの岡田武史監督がおっしゃったことですが、今のこどもは無重力のような状態に置かれていて、筋肉も骨もすかすかになっているようで、あえて大人が子どもに必要な体験をさせていく、仕掛けていくことが大切になってきています。携帯の問題も含めて、子どもによりよい利用・経験を大人が積ませることができればよいと思います。

尾花氏)皆様と同じ立場の母親として、お子さんと迎合するのではなく、親としての尺度を持ったうえでお子さんとたくさん会話をしてほしいともう一度お願いしたいです。親のコミュニケーション能力やスキルを投影されながら、子どもはコミュニケーションしていると思います。親のルールをぶれることなく子どもと向き合う努力を続けて、よい着地点を見出してほしいと思いますし、子どもが勝っているものは子どもに教えてもらいながら大人も成長していけると思います。アナログな感性を持ちながらデジタル機器をうまく使いこなせる大人に子どもを育てていければよいですね。

曽我氏)あと数十年もすれば、デジタル社会イコール普通の社会となるかもしれません。現在は過渡期ですが、こうしたネット作りに関わる事業者のみなさんにも協力を得てよりよい子どもたちの未来をはぐくんでいきたいと思います。参加者の皆さんには本日の内容を持ち帰り、家庭でのルール作りや話し合いに役立てていただきたいと思いますし、鹿児島県PTAの活動の場でも、こうした取組をテーマのひとつにしていただけることがあれば大きな実りにつながると期待しております。ありがとうございました。

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