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「スマホ時代を生きていく子どもたちのために」
新潟県小中学校PTA連合会研修会(2013年1月26日)

カテゴリー: 情報モラル・リテラシー教育 / フィルタリング / 子どもの利用実態 / 新たな端末・サービス / 各地の取り組み(ケータイ所持規制) / インターネットの安心・安全をめぐる動き / その他

子どもたちが情報社会に向き合うために、大人がやるべきこと

2013年1月26日に、新潟県小中学校PTA連合会主催の「スマホ時代を生きていく子どもたちのために」と題された研修会が開催された。当日は、参加した保護者からの質問を軸にパネリスト達や各企業が、子どもたちのためにどのような取り組みをしてきてそして、今後どういったことが行えるかについて議論を行った。

竹内和雄氏

トークセッションパネリスト

  • 竹内 和雄氏(兵庫県立大学環境人間学部准教授(教職担当))
  • 林 義也氏(総務省信越総合通信局情報通信部長)
  • 曽我 邦彦氏((社)日本PTA全国協議会(元会長))
  • 石原 友信氏(安心ネットづくり促進協議会事務局次長)

子ども達を取り巻く様々な情報通信機器

曽我邦彦氏曽我)子ども達の育てかたの方針を決定しているのは保護者ですが、保護者自身に子どもを取り巻く環境がみえているかどうかは定かではありません。昨年の段階では子どもにスマホを持たせないことが議論の主流でしたが、現段階では賢く使う教育が話題になっています。もはやネットにつながるのはケータイ、スマホだけではありません。ゲーム機、音楽再生機、そしてデジタルカメラまでもがネット接続端末になりつつあり、利用者の個人情報や位置情報などが流出する窓口になろうとしています。匿名性や安全な仕組みによって個人を守ろうとするだけでは不十分です。リアルな生活での行動・意識を高めるものがフィルタリングなのですから、子どもと親が成長段階に合わせて話し合いながら、うまく利用していくことに主眼を置かねばなりません。スマホのハード市場では海外勢が主流になっています。日本の国内メーカーに保護者がお願いして対応していただくだけでは子どもの安全は守りきれないのです。
 スマホに限らず生活にかかわる道具を使いこなし、役立てることは子育ての根幹にかかわる心の問題、モラル教育を行っていくことで円滑に進めることができます。そうすることによって、今後、子どもを取り巻く環境がいかに変わっても、予防、対応していくことができるのです。新潟県で4年にわたって進められてきたネット理解の取組が、保護者の活動により、子ども達にとってよりよい環境へとつながるようお手伝いしていきたいと思います。

質問者1)中2の娘が通う区域では学校で携帯が禁止されていますが、昨年、iPodは音楽再生機だから携帯ではないし、買ってもいいんだよ、と娘に説明され購入しました。それからパソコンも無線の方が便利なんだよ、といわれ家庭内を無線接続環境にしたところ、娘は自分のiPodでメールなども自由にやり取りしているようです。我が家ではこのような状況になっているのですが、子どもの利用はどの程度のものなのでしょうか?

石原)iPod touchを購入されたのかと思います。この端末はWiFi環境であれば、LINEのようなアプリも利用できますし、ゲームや音楽だけでなくネットにつながるすべてのサイト、アダルトサイトなども利用できるようになっています。

曽我)携帯電話にフィルタリングをかけて渡しておけば、子どもは安全というわけではない例ですね。

インテグラル)インテグラルでは監視事業を行っており、主に小規模な事業者さんの提供する掲示板などの書き込みを監視しております。小学生ですと、やはり自分所有のスマホなどはあまり持っていませんから、ニンテンドーDSiやPSPなどゲーム機などの通信機能を利用して書き込んでいるお子さんが多いですし、遅い時間まで利用されていると感じます。

曽我)事業者さんは青少年インターネット環境整備法の施行以来、企業努力を重ねられていますが、保護者の皆さんにもより努力が必要だと考えられますね。

スマホでのアプリ利用について

質問者2)私は中学生と高校生の子どもがいます。中学生にはケータイをもたせず、高校生の子どもはガラケーを使用していましたが、就職や大学入試の際に必要になると言われ、年末キャンペーンを利用してスマホに買い替えたところです。無料通話アプリの承諾部分でID情報の公開についての注意書きなどがあるようなのですが、詳しく調べてもよくわかりません。事業者の方は注意確認事項をわかりやすく表示していただくことはできないでしょうか。

DeNA)弊社で提供する無料通話サービスのcommでは、ご指摘にあったような注意事項を中学生などの利用者にもわかりやすく確認していただけるよう、トップページに記載する仕組みをとっています。また、他サービスでは、ハンドルネームとは別に好きなニックネームが利用できますが、commではアドレス帳に登録されている実名での登録になっており、なりすましや年齢詐称を防ぐ取組を行っています。加えて事業者によるユーザー情報の利用の部分ですが、外部に公表したり、漏えいしたりということは一切行っていません。実名制がきちんと維持されているか、芸能人などのなりすましはないか、といった監視業務での個人情報利用に留めております。以上の3点の取組によって、利用者の皆様により安全に無料通話を楽しんでいただけるようになっております。

曽我)DeNAさんではSNSサイトでのサイトパトロールを行っておられますが、commでのコミュニケーションもパトロールされているのでしょうか?

DeNA)以前、ニュース報道されたことがありますが、二者間のやりとりは通信の秘密保持義務がありますので原則として行っておりません。投稿での利用は注意書きをつけているのですが、出会い系などを防止する目的から監視を行っています。

曽我)事業者によるパトロールの有無が他サービスとcommの大きな違いなのですね。もちろん青少年保護の機能だけでサービスを選ぶべきということではありませんから、利用者や目的などに合わせて、その都度、より適切なサービスをユーザーが選んでいくことが大切になりますね。

竹内)ウィーンで子どものネット利用の意見交換をした時のことですが、ウィーンの保護者達は、自分の子どもの利用内容は自分でその都度必要に応じて確認するため、フィルタリングの仕組みそのものが必要ない、と言っていました。日本では、子どものメール内容を親がみることはいけないという風土がありますが、本当にそうでしょうか?保護者がもっと積極的に動いていいのだと思います。
 事業者との関係についても、私自身、初期のSNSサービスなどについては、子どもに絶対やらせてはならない、と啓発することだけになっていましたが、事業者の方と実際に意見交換していくうちに、お互い、より良い利用環境のためにやっていることもあれば、協力できることもあると実感するようになりました。グリーもDeNAなどSNS各社も、子どもを守るための監視活動などをマンパワーで行っているのです。

DeNA)弊社での安全への取組は、システムで防止するものと人間が監視するものの2つがあります。出会いの書き込みと即判断できるような090-で始まる個人情報のような書き込みはシステムが自動的にブロックします。システムで判断できないグレーなものについては、センターにおいて365日24時間400名体制で監視しています。

グリー)弊社でも@以下にメールアドレス表示や電話番号表示がされたような書き込みはシステムブロックされます。同様の内容でも、メールの通数を多くしてつなぎ合わせると出会い系の内容になっているものなどもありますので、そうしたものは400人から500人体制で人間が監視しています。

石原友信氏石原)LINEの発表では2012年12月からauのスマホ端末から18歳未満のアドレスのユーザーを検索できないようにする措置をすすめているとのことです。LINEのIDを利用して出会いの場を提供するような悪質な事業者があったわけですが、そうした動きを封じるということです。

グリー)弊社でもDeNAなど他のSNS企業でも、年齢制限の徹底を図るために通信事業者さんからユーザーの年齢情報をとり識別しています。au、ソフトバンクとはこうした仕組みが出来ていますし、ドコモも現在、対応準備中です。

曽我)登録時の年齢確認情報をもとになるわけですから、保護者としては、初めに子どもに買い与える時に利用者も親の名義で適当にしておくと、年齢認証を行っても守られないということですね。

竹内)私が寝屋川で調査した事例では、小学校5年生のケータイ利用児童のうち、親名義で利用しているケースは28%でした。フィルタリングもかかっていません。次に先ほどのLINEの話の続きですが、いまお見せしているLINEのサイト画面には不適切な利用の通報フォームが表示されています。消費者が動くことによって事業者のサービス提供が変化する事例です。
 会場のみなさんにスマホのLINE使用の実際例をお見せしたいのですが、まず、この画面は私が大学の授業で使っているもので、出席学生14名とLINEのふるふる機能を使ってグループ作成したものです。ここに「元気?」と書き込んでみます。するとこのように、14人のうち読んだ人の記録が既読で残ったり、このように、「はーい」と即時に返事が複数の学生から来たりするわけです。ガラケーでもLINEは使えますが、いちいちその都度回線をつないで相手からの書き込みを確認しないといけませんから、即時的な使用感が全く違います。この即時性に加えて、既読表示があることによって、子どもたちの即レスしなくてはならないというストレスがより強くなってきています。スマホは常につながっていますし、既読が相手に表示されるとなると、「もう読んでいるのにどうして返事をまだ返さないのか」と相手に思われるという気持ちが強くなります。

曽我)災害時や会社の業務連絡であれば、既読表示の機能は非常に大切ですね。便利に使う機能を知っておくことは大切です。使い方の方向性を間違えないことがやはり重要です。

契約時の名義について

質問者3)子どもに親名義の契約端末を与えることについては、親名義にしておくと、子どもが不適切な利用を行った時に通話記録などの利用確認を取りやすいため、むしろ良いのではないかという話を聞いたことがあります。先ほどの年齢認証などの話もありましたが、実際のところはどうなのでしょうか?

インテグラル)携帯電話販売店の店頭契約時には、契約者名は保護者名でお願いされると思います。ただ、現行の契約書では利用者登録という部分が別途あり、利用者は子どもであると親が申し出ることが大切だと思います。契約者と利用者を分けられるということです。

トークセッションの様子曽我)グリーのゲームでの高額利用の問題などもありましたが、保護者が契約時に使用者の年齢を子どもとしてきちんと登録しておけば、事業者側も認証をとるなど対応をしやすくなります。ドコモ以外はSNS事業者と利用者の認証をとる仕組みが出来ているわけで、ドコモも準備中です。保護者が子どもに携帯を持たせるなら、利用者が子どもであることを実年齢できちんと登録することが大切でしょう。
 また、フィルタリングを当初からきちんとかけることは重要です。フィルタリングのかかっていない自由な環境で利用させてから、利用制限をかけることは難しいのです。ガラケーではフィルタリングの使用率が70%にまで達しましたが、ユーザーが途中からフィルタリングを使用してくれたというよりは、経年とともにフィルタリング導入後にはじめてケータイを使う子どもが増加し、当初から利用するユーザーが増加した結果なのです。スマホは1年前までフィルタリングの仕組みがありませんでしたから、すでにスマホユーザーになっている子ども達に、今後、フィルタリングを利用させようと思うと保護者はかなり働きかけをしなくてはならないでしょう。事業者側もより使いやすくカテゴライズされたフィルタリングを整備していますし、アンドロイド端末ではWiFi環境でもフィルタリングが機能するソフトが無料で利用できるようになりました。iPhoneはAppleの基準を中心にサービス提供していますが、世界標準のため、4歳からコミュニケーション機能を使えることには問題があるかもしれません。

竹内)フィルタリングのように仕組みで安全が守れるなら、進めていったほうがよいと思います。ただ、つながる端末は日々、増えていますので、仕組みがあってもなくても、安全に利用できる子どもを育てることが、より重要になってきます。情報端末と一緒に語るにはふさわしくないかもしれませんが、私が学校現場に入ったころ、麻薬撲滅運動が盛んでした。その時、麻薬の存在をなくするより、目の前にあっても麻薬に手を出さない子どもを育てようということが言われました。我が子をすべての危険性から守ることは出来ませんが、対処を常に考えていくことはできます。
 出会い系サービスの加害者にインタビューしたところ、とにかく女の子の話の聞き役に徹していれば、どんなことも簡単に騙される、と言っています。被害者になる子どもはひたすら話を聞いてほしいと思っているわけですが、本当は、話を聞くべきは保護者や周りの大人、先生や友達です。ですから、私たちもSNSサービスやコミュニティサービス自体を敵視するのではなく、子どもたちが本当に本音で話したいと思ってくれるような心を育てていくことに注意を向けていく必要があります。日本で育ってきたユーザーがいきなり4歳以上をコミュニケーション適切とする欧米の基準のなかでやっていけるとは思いませんが、日々、周りの大人が努力してよりよい利用環境と子供たちのこころを育てていくことはできると思います。

曽我)PTAとしては家庭での親の役割を熟考することが何より大切ですね。

子ども達の適切な利用のために

曽我)携帯・ネットの問題は社会の中で大きな注目を集めていますが、問題が大きいだけに解決すれば社会の様々な諸問題への取組にもよい解を見出せるかもしれません。新潟県の地域としての今後の取組もお聞かせいただきたいと思います。

林)私は通信を広く便利に使っていただけるよう進める立場にあり主にはセキュリティ上の配慮等を呼びかけていますが、他方、ネット端末やゲーム機といったものは子どもの時間を際限なく奪うツールとして子ども本人の学習や能力の発現を妨げ、日本の国際競争力に不安を与えているとも感じており、今の保護者世代のこの分野の技術者には広く責任があるとも思います。お恥ずかしいことながら個人的には我が家では子どもの携帯ストラップをロックのかかったミカン箱のようなものに帰宅ごとにつなぎ、利用制限こそしないものの問題集を解いて導き出される暗証番号を毎日入力しないと箱ごと持ち歩かざるを得なくなるような仕組みを作って、学習活動につなげたことがあります。あくまでも個人的にですが事業者さんに同様の学習と機能制限を組み合わせたソフトを開発してはどうかと示唆したこともありますが、採用はされていません。会場の皆さん、ご出席の事業者の方々、いかがでしょうか。

曽我)会場でも賛同の挙手がみられましたね。子どもは親に似るものですから、今の保護者のみなさんの行動は、私たちの子どもの将来の姿といえるかもしれません。私の次女は自宅に帰ると携帯電話に出ないという主義です。緊急連絡はパソコンでと方針を決めているのです。1番目と3番目の子どもは家庭のルールということで携帯を高校まで所持しませんでした。本人の考えとスタイルの問題であるともいえます。国や地域が連携して取り組むことと、家庭で話し合って使い方を決めていくこと、どちらが欠けてもよりよい利用は生まれてこないと言えますね。

竹内)大学生に携帯の利用制限について話し合ってもらったことがあります。最も多かった意見は、漢字のような問題を一定量学習しないと、次の画面に行けないよう制限をかけるというものです。次に、理解の難しいフィルタリングという概念ではなく、自分のケータイには自分のお母さんが判断基準として入っていると理解し、各家庭に合わせたレベルまでの利用を行う、という意見が出されました。こうして話し合ってもらうと、子どもは驚くほどよいアイデアを出してくれるものです。中学生でもそうなのです。寝屋川の中学生が作ってくれた「ケータイおわらせ言葉」というのがあります。「返信不要」の文字が出てくるとメールはおしまいというルールです。ルールが使われることはありませんでしたが、この取組を通して、子どもは、携帯の長時間利用で眠いなど、困っているのは自分だけではなく他人も同じなのだ、と理解し、結果的に長時間利用が減少しました。
 大人は概して、子どもに考えさせる時に大人が思う結論ありきで進めてしまいがちですが、子どもを信じ、子どもから信頼される関係づくりとともに問題解決を進めることが大切です。以前、寝屋川のネット教師殺人事件というのがありましたが、あの被害者の教師は私の友人で、加害者となった生徒は私の教え子でした。二度とこういう事件を起こしてはならないと思い、私は教師の職を辞して現在のような活動を続けています。秋葉原の路上連続殺人事件を引き起こした加藤被告は、自らを負け組として、勝ち組をみんな殺してしまいたいと述べています。ただ、彼が負け組としているのは、彼女がいない、友達がいない、社会から孤立してひとりぼっちになってしまった存在のことなのです。ネットと子どもの問題を語るうえで、何度もお話したように、社会や事業者を批判するだけでなく、自分の子どもの問題として親が考え、行動することが何よりも大切です。こうした取組を続けることによって、親が子ども同士をつなげ、家庭でも親子でつながりあうことの重要性がますます高まっていると思います。

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