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「文部科学省委託事業『ケータイモラルキャラバン隊』」
仙台市PTA協議会研修会(2013年1月28日開催)

カテゴリー: 情報モラル・リテラシー教育 / フィルタリング / 子どもの利用実態 / 新たな端末・サービス / 各地の取り組み(ケータイ所持規制) / インターネットの安心・安全をめぐる動き / その他

子どもたちが情報社会に向き合うために、大人がやるべきこと

2013年1月28日に文部科学省委託事業「ケータイモラルキャラバン隊」仙台市PTA協議会が開催された。当日は、パネリストから仙台市での取り組み、子ども達の利用実態について紹介があった。その上で保護者は、学校は今後の子ども達のために何をするべきかと、活発な議論が交わされた。

曽我邦彦氏

パネリスト:

藤川 大祐氏 (千葉大学教育学部教授)
関根 章文氏 (文部科学省スポーツ・青少年局参事官(青少年健全育成担当)付青少年有害環境対策専門官)
菊地 淳氏 (仙台市教育委員会 教育相談課 指導主事)
吉田 信子氏 (仙台市PTA協議会 副会長)

コーディネーター:

曽我 邦彦氏 ((社)日本PTA全国協議会元会長)

安全なネット環境のため仙台での取り組み

菊地)仙台市では、市立学校の児童生徒がインターネット等を介して問題に巻き込まれたり、被害に遭わないようにするために、仙台まもらいだー・インターネット巡視事業を行っています。教育相談課の担当巡視員2名を置いて、市立学校や児童生徒に関連する書き込みや個人情報流出の検索・閲覧を行い、問題等を発見した場合は学校へ連絡をとり対応しています。他の自治体でも民間事業者に委託するなどして、小中学生の安全を守る取組が行われていますが、仙台市としては、ネット巡視員や担当課からの報告だけでなく、学校側からの個別相談や情報提供を受けて、内容に応じてネット上での問題を検索・閲覧するなど双方向の連携で子どもたちを守るという点を重視しております。こうした巡視活動の結果、平成24年4月~12月での把握児童生徒数は約3800人、サイト数は9500サイト、うち問題報告されたものは649件あります。小中高別になると、中学生が最も多く報告されてり、内容は不特定の誹謗中傷が101件、相手が特定される誹謗中傷が101件、自殺願望が39件、写真掲載が27件、問題行動が(飲酒、喫煙、暴力などをうかがわせるもの)125件となっています。問題行動に関する報告には、プロフ等の趣味の欄に不適切な内容を記載した場合も含めていますので、全てがすぐ違法というわけではありませんが、その都度、学校現場に連絡をして確認をとるようにしています。最近ではSNSサービスの個人IDを書き込み、自ら個人情報を公開している事例もありますので、学校現場と連携して早期の対応を行っています。継続的な指導を行い、再発防止に努める観点を取り入れながら、巡視活動の精選、保護者との連携をさらに深めていくことを今後の課題としております。

曽我)仙台市でも全国的に報告されている事例と同じような傾向がみてとれます。子ども達はネットでは匿名性が担保されていると考えがちですが、この点も保護者としては子ども達にきちんと教えていかねばなりませんね。

吉田)私がPTA会長を務める中学校でも担当課から連絡をうけた事例が3件あったと校長先生からうかがっています。誹謗中傷が2件、飲酒をうかがわせる書き込みが1件とのことでした。3件という数の多寡よりも、我が子の通う中学で現実にこうした事実があることに驚きました。先ほどから携帯・スマホ以外にもゲーム機や音楽再生端末でもネットにつながるという話をきき、保護者として早急にこうした状況を勉強し、行動していかねばならないと感じているところです。

曽我)我が子の学校でこうした事例があると知ると、保護者の方は我が身の問題として考えるようになるのではないでしょうか。ただ、こうした問題を引き起こす背景は、保護者の方が思う以上に皆さんの家庭のなかで予兆がみられるものなのです。新しいツールを得てお子さんが夢中になって使っている様子など目にすることがあると思いますが、道具の適切な利用方法を身に付けるには家庭でのモラルの存在が非常に大切だということを理解していただきたいと思います。たとえば、どの家庭にもキッチンには包丁がありますが、この包丁の使用で殺人が行われないのは、包丁の正しい使い方がモラルとしてきちんと家族で共有されているからです。ネット利用でも、よりよい利用のためのモラルが共有されていれば、問題のある使い方につながることはないと思います。道具が悪いのではなく、利用のモラルが欠如しているから問題が起きるのです。

子ども達の適切な利用のために保護者がすべきこと

曽我)かしこい利用を子どもに促すためには保護者はどうしたらいいのでしょうか。

藤川)前提としては仙台市では携帯電話を9割以上のお子さんが利用されているということですから、調査結果からみると本当に危険な利用をしているお子さんはごく少数ということですね。その意味では、先ほどの包丁を安全につかう、という一般的な道具の利用と同じように考えていただいてもよいかと思います。学校現場では、ネット教育について、まず子ども達に、「よく吟味して考える態度を身に着けさせること」=クリティカルシンキングの習得をさせることを主眼に教育を進めてきました。

曽我)あいさつ運動などでもそうですね。誰にでもあいさつを考えなしにしていたのでは、それを利用する悪意をもった大人との接触になってしまうことさえあります。かといって危険だから誰ともあいさつをさせないというのも違うのではないかと思いますし、子ども自身に主体的に判断できる態度を身に着けさせることは大切ですね。先ほどの調査結果のでは中学生になって不適切な利用報告が急増するということですが、もう少し詳しくお話いただけますでしょうか。

菊地)やはり、中学生になって初めて子ども達が携帯・スマホを利用し始めることが背景にあると思います。調査結果で高校生の報告件数が少ないのですけれども、それは仙台市の公立学校数が中学では63校、中等教育学校1校であるのに対して、市立高校は5校しかありませんから、1校当りの把握数は高校の方が多いことが分かるかと思います。小学校の件数は1件のみですが、水面下では広がりがあるのではないかと危惧しております。

曽我)飲酒をうかがわせるものがあるとお話がありましたが、ネットでの書き込みは時間を経ても検索すると把握可能な仕組みですから、子ども達の将来を考えると心配ですね。

藤川)就職活動においては、企業の採用担当者は応募してきた学生のネット上での書き込みなどをかなり綿密にチェックするのが通常になっています。書いたことを削除する学生もいますが、手遅れになることがあると思います。

曽我)保護者の方にも知っていただきたいのですが、ネットへの書き込みは本人が削除した後も閲覧者によってコピー&ペーストをされれば残るものです。企業の採用者側がどこまで検索するのか、するべきなのかという問題はありますが、子ども達に不適切な書き込みなどについて教えることは大切ですね。先ほど、仮想空間での経験よりリアルな経験が豊かな子、また一人遊びより集団遊びの経験が豊かな子は、ネット利用も上手だという話がありましたが、文部科学省ではそうした指導を促進されていくのでしょうか?

関根章文氏関根)体験活動の推進についてですが、今の子どもは昔の子どもと違って、遊ぶ場所ひとつとっても、危険だから川には近づいてはだめだ、というような社会の変化がありましたから、あえて意図的に進めていかなくては経験のチャンスが子どもになくなってしまういという危惧があります。そうしたことを踏まえて、積極的に子ども達に体験活動の場を与えることを教育に導入しています。よりよいネットの利用ということでは、どのように利用すれば危険な使い方にならないのか考えていかなくてはなりません。先ほどクリティカルシンキングの重要性のお話がありましたが、子どもにさまざまな経験をしてもらい、考えてもらい、生き抜く力をつけてほしいと考えております。

曽我)私は熊本県で熊本県PTA災害見舞金安全会の理事長を長い間務めておりましたが、最近の子ども達は、親が先に手助けをしてしまうために、小さなけがの経験自体が少なく、危険を回避する転び方などを体得しないまま大きな事故につながる事例をみてきました。加害にしても、人をたたいたり、たたかれたりした経験のない子どもは、カッとなって大けがをさせてしまうことがあります。小さな体験を積んでいくと、子どもは負の経験も学びながら成長していけるものです。携帯のフィルタリング問題にしても、子ども達に規制をかける、という視点ではなく、育成するという観点が大切だと思うのです。

保護者もネットに対しての知識を

藤川)フィルタリングにも小学生から使える安全なものからカスタマイズできる自由度を調整できるものまでさまざまです。法律が対象としている18歳の段階になるまで、保護者が子どもと話し合って、使い方を学び、選べるよう、子どもに成長してもらうことが大切です。

曽我)大学生になると、当然のようにパソコン利用を前提とした生活が始まってしまうという現状もあります。就職活動などでも利用が当然になっているようですね。

藤川)私が勤務する千葉大学は国立ですから、私立大学と比べるとパソコン利用はやや遅れているかもしれませんが、教員とのやりとりなどはかなり利用が進んでいますし、添付ファイルの利用などもよく使われます。最近はスマホで便利に利用できる環境があり、利用が進んでいます。また、大学受験生もホームページ上の大学案内をみて志望校の情報を集めています。オープンキャンパスや説明会の申し込みもネット経由で行われるようになってから利用者数が増加しました。受験生の皆さんはパソコンよりも携帯端末からの利用の方が圧倒的に多いですね。

曽我)こうした将来的な利用の見通しを考えたうえで、お子さんの利用の仕方を小学生の段階から保護者が考えていくと、子ども達の情報利用のスキルが格段に異なっていくのではないかと思います。

吉田)現在のように情報社会が発展し、親はその中に子ども達を送り出さねばならないわけですから、昔は学校にすべてお任せしていればよかった部分も含めて、保護者が各家庭の力で補っていかねばならない責任があると感じます。保護者自身が勉強していくために、どのような連携が必要でしょうか。

菊地)18歳の段階で子ども達が判断できるよう育成していかねばならないわけですから、目まぐるしく変わる情報社会のなかで学校の先生だけでなく保護者の方にも適切な知識を共有していただくような場を提供していくことが必要だと思います。

曽我)今日のような場を保護者の方と先生方が共有し、意識を同じくしていくことが重要ですね。先生や保護者の学ぶ意欲は子ども達にも伝わりますし、大人が共同して学ぶことによって子ども達とも助け合って成長していけるのではないでしょうか。

藤川)それぞれの世代に得意不得意があるかと思いますが、ネット利用に苦手意識がある保護者の方は、新聞で報道されるネット関連のニュースを読むだけでもかなり理解が進むと思いますし、ネット利用が得意な方は私の発信しているツイッターなどを追っていただいても最新情報が得られると思います。

曽我)ただネットの情報は膨大ですから、追いかけ始めるときりがないのも現実ですね。ここで大切になってくるのが情報を整理したり選択したりする力ですね。そうした主体的な利用さえできれば、ネットのおかげでPTA活動をはじめ様々な社会活動の自由度が高くなった恩恵を受けることもできます。子ども達が携帯を持ち始める中学生になるまでに、どのような準備をすることが出来るでしょうか。

菊地)多くの学校では中学入学前に、小学校の卒業を控えたお子さんの保護者を対象にネットモラルの研修の場を設け、その所持や使い方について学ぶ機会を用意しています。携帯を持ち、ネットを利用する子どもの中には、自分自身の表現活動の場としてプロフなどを利用している側面があります。家庭生活や学校生活とのバランス、充実した生活を過ごせているかなど、保護者が留意して見ていくことも大切なことだと思います。

藤川)やはり、一般的に日常生活や家庭環境がしっかりしているお子さんはネットの問題でもトラブルに巻き込まれることが少ないといえます。社会への適応力や判断力が高ければ、ネットに限らず危険を回避する力が大きいということです。

子どもの生きる力を育てる

曽我)ネット問題に対応する力を家庭で高めていくということは、子どもの生きる力を高める子育てにつながるのですね。ネットの問題が社会的にクローズアップされている現状は子育てを考えるよい契機にもなっていると考えることができますね。

藤川)その通りだと思います。ネットの問題を親子で考える時に、規制の立場だけの視点ではなく、より広い社会的な能力を高めるという視点で取り組んでいただければよいと思います。地域単位でネットの問題を話し合う機会を得たことで、子育ての問題解決の場も広がったと思います。

菊池淳氏菊地)子どもたちの書き込み等の中には、家庭や人間関係のさまざまな問題がネット関連のトラブルに集約されている場合も多く、それらに対応をしていくことが家庭生活や学校生活の見直しなどにつながることもあります。学校現場と家庭が子どもたちとの関わりをともに考え、学ぶ機会を増やしていくことが大切ですね。

曽我)学校に任せておけばよい、という考えから、学校と保護者がともに考える、まさしくPTA活動の理念が欠かせないといえますね。学校と保護者はお互いを批判するのではなく、協力していくことがより求められるのではないでしょうか。

関根)文部科学省としてもこうした問題の解決のためには、関係省庁と連携して対応していかねばならないという認識を持っています。今後、この連携した対応を加速していきたいと思います。ネットの問題を通して、社会と家庭の関わりはより密接なものとなってきています。技術の発展とともに、情報の入手だけでなく、発信の機能が高まってきましたし、これからの子ども達が生きていく社会ではネットと関わらない生活というのは考えにくいと思います。ネットの問題を家庭で考えていただくことで、お子さんの広い意味での将来について考えるきっかけにもしていただけるとよいと思います。今日、参加してくださっている事業者の方々も、営利だけではなく、青少年育成の観点から積極的に関わって下さっています。安心ネットづくり促進協議会が進めている出前講座などもこうした事業者の方々のご協力を得て行われておりますし、社会全体で対応が進められていることを保護者の方にも理解していただいて取り組んでいただきたいと思います。藤川先生がおっしゃられたように、家庭での生活がしっかりしている子どもはトラブルに巻き込まれにくいということがあります。ネットのことを親子間の話題の切り口とし、お子さんに教えてもらうというかたちでコミュニケーションを密にとっていただくのもよいやり方ではないでしょうか。

増田)本日のパネルディスカッションは青少年育成をテーマとしているわけですが、総務省では、ワンクリック詐欺の問題などのように、消費者保護の観点から事業者の方とともに対策をとっています。ワンクリック詐欺の類は大人の消費者ですら安全と思いながらもトラブルに巻き込まれてしまうようなケースであり、子どもはもちろん簡単に騙されてしまう危険性が高いといえます。消費者保護の観点からは、被害が発生してからの対応になりがちなのですが、行政としては、文部科学省や警察など他の省庁とも連携して、こうした危険を未然に防ぐ取組をすでに始めているということを皆様にご理解いただきたいと思います。

菊地)今後の取組としては学校現場では、先生方に最新の知識や技術を理解していただいた上で、情報モラルの指導を続けていただくことが大切だと思います。保護者の方には、子どもの小さな変化を見逃さないよう、関心をもって子ども達に関わっていただけたらと思います。携帯・ネットに限らず、何か心配事があった時には学校の先生と共有して問題解決にあたっていただきたいと思います。

曽我)携帯を急に欲しがったり、子どもが部屋にこもり始めたり、といったサインに親が気付いていくことが大切なのですね。先生方と連携すれば、対応もしやすくなりますね。

吉田)やはり家庭としては子どもの異変に気付くことを大切にしたいと感じました。参加なさっている保護者の皆様も多くの人に声をかけていただいて、今後もこうした勉強の場に参加していただけるよう取組を広げていきたいと思います。

藤川)PTAの活動は私も会長経験がありますが、地域の見守りや防犯など多岐に渡りますし、常に学びの姿勢が必要とされるものです。学びながら活動ができること、PTA活動で学べてよかったと思えるような場にしていくことが、今後の活動の広がりに欠かせないと思います。出前講座などの大半は無料で行われておりますし、上手に利用していただき、PTAがますます豊かな学びの場となることを期待したいと思います。

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