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「文部科学省委託事業『ケータイモラルキャラバン隊』」
石川県PTA連合会研修会(2013年2月2日開催)

カテゴリー: 情報モラル・リテラシー教育 / フィルタリング / 子どもの利用実態 / 新たな端末・サービス / 各地の取り組み(ケータイ所持規制) / インターネットの安心・安全をめぐる動き / その他

子どもたちが情報社会に向き合うために、大人がやるべきこと

石川県で平成19年に制定されたいしかわ子ども総合条例では、小中学生の携帯電話所持についての条項が盛り込まれている。その後、石川県の状況はどのように変化してきたのか。新たに登場してきた情報機器の普及の影響や子どもたちの利用実態から実行的なモラル教育についての意見交換がなされた。

パネリスト

パネリスト:

尾花 紀子氏 (ネット教育アナリスト)
米田 謙三氏 (私立羽衣学園高等学校 教諭)
川又 竹男氏 (文部科学省 スポーツ・青少年局 青少年課長)
石倉 喜八朗氏 (石川県教育委員会 学校指導課 課長補佐)
松寺 麗子氏 (石川県PTA連合会 副会長)

コーディネーター:

曽我 邦彦氏 ((社)日本PTA全国協議会 元会長) 

石川県の状況について

石倉)石川県教育委員会の基本的な方針としては、スマホを含む携帯電話は子どもの学習活動に基本的に必要ないものであると考えており、平成22年1月に施行されたいしかわこども総合条例において、また保護者や家庭の事情で子どもの利用が必要な場合はフィルタリングを設定していただくようお願いをしてきました。保護者は特別な場合を除き、小中学生に携帯電話端末等を持たせないよう努めることと規定されています。スマホが普及してきている現在では、スマホ本体にフィルタリングを設定していただくようお願いしており、通信機能のあるゲーム機や音楽プレイヤーも同様に注意が必要です。
こうした機器は子どもが利用を始めた後で制限をかけることが非常に難しいため、利用を始める前にモラルや使用時間を家庭でよく話し合って判断していただくことが重要であると考えております。平成23年に警察庁が行った全国調査では、石川県の高校生のフィルタリング利用率は全国で最も高く、PTAの取組などで普及啓発いただいた結果と考えております。現在、高校生のケータイ・スマホ所持率は96%を超える状況ですので、もたせる前の小中学校の段階で利用のための情報モラル教育を徹底していくことがその後の安全な利用につながると考えております。

曽我)今や家庭の中にあるネット接続端末はケータイ・スマホだけでなく、ゲーム機やiPodのような音楽端末といったように多様になっており、フィルタリングのかかっていない状態で使われていることが多いのではないでしょうか。カメラもスマホのようにネット接続できる時代です。保護者としては、ケータイ・スマホさえなんとかすればネットは安心という認識を改めなければなりません。私が平成20年に日本PTA全国協議会の会長を務めていた時に、文部科学省の通達を受けて全国のPTAに、小中学校では学校内でのケータイの使用と持ち込みを原則禁止する。高校では学校内への持ち込みは認めるが使用を禁止するお願いを出したことがありました。
現在ではスマホが普及し、状況はずいぶんと変化してきました。昨年秋からはauのAndroid端末でのフィルタリングサービスが利用可能になり、今年の2月からはソフトバンクでもフィルタリングサービスが利用できるようになりました。学校現場や保護者、事業者の取組でこうした安全への対応が進んでいます。ただ、スマホは海外のメーカー主導で普及が進んでいますから、日本の安全基準を反映させることは難しいことも事実です。人気のあるiPhoneはApple社が独自の安全基準を設けていますが、コミュニケーション対応年齢は4歳からで、日本の18歳とは大きな開きがあります。国内の携帯通信事業者はソーシャルサービス提供各社と連携して、サービス利用時に端末の登録年齢を認証する体制を充実させ安全への取組をすすめていますが、今後も安全な利用のために、保護者や教育現場からの要望を事業者に届ける努力が大切と言えるでしょう。

松寺)石川県PTA連合会の基本的考え方は、携帯電話のリスクを子どもに伝え、正しい判断ができるまでは持たせない、どうしても必要な場合にはフィルタリングをかける、というもので、啓発活動を行っております。平成17年3月からは新中学1年生を対象に啓発リーフレットを作成・配布しております。先ほど、石川県のフィルタリング利用率が最も高いというお話が出ましたが、保護者の意識はまだまだ低いのではないかと感じております。私にも3人の娘がおりますが、上の娘2人の時は、周りの状況に合わせるかたちで高校入試の終了とともに携帯を与えました。来月には3人目の娘も高校入試を終えてスマホを所有する予定なのですが、今回は親なりの気持ちを伝えたうえで子どもと使い方を約束するなど、具体的な取組をしたいと考えているところです。

曽我)携帯電話はあくまでも道具ですから、振り回されないように賢く使うことが大切ですね。ネット利用については、かつて、匿名でなんでも利用できるといった間違った理解がされていることがありました。大人がきちんと理解し、正しく子どもが利用できるような環境を整えることが必要ですね。

高校生の利用実態について

米田)私は、文部科学省の高校生熟議にも参加しておりますので、今日は保護者の方に高校生の利用の実態と彼らが何を考えているかをお話ししたいと思います。今の学校現場には、履修科目一つとっても、保護者の方が学齢期の時にはなかった情報科のような新しい科目があります。情報科はワードやエクセルといったソフトの利用の仕方だけでなく、情報機器の利用が今後の社会生活に欠かせないということを子ども達に教えるものです。実際には高等学校の必履修科目教科未履修で明らかになったように、情報科の履修時間を数学に充てているなど問題になったケースもありますが、今後は情報科の学習内容が技術的なものだけでなく、情報モラルについてもさらに重点を置いていかねばならないと考えております。
学校現場ではICT化が進み、さまざまな端末・機器を利用して情報が活用できる環境に大きく変化しております。塾などでもスマホなどの活用が進んでいますし、暗記アプリなど学習のためのアプリの利用なども行われています。これに加えて家庭の場でも情報機器端末だけでなく、冷蔵庫や電気ポットといった生活家電までもネットに接続できる時代となっています。一方で不規則な生活習慣や、不適切なサイトの利用といった様々なトラブルが起きています。こうしたネット接続利用について高校生自身に意見交換してもらう場が高校生熟議の場であり、今年度はスマホをテーマにして大阪と東京と2カ所で開催されました。先週、羽衣学園と鎌倉女学院の生徒が東京で最終報告を行いました。スマホユーザーをヘビースモーカーになぞらえてヘビースマーカーと呼称し、依存と利用の違いについて議論しています。また、端末のバッテリー駆動時間が短いため、学校のコンセントがたこ足配線の上、常に子ども達のスマホの充電でいっぱいになっている現状を伝え、メーカーに改善してほしいという意見も出されました。

曽我邦彦氏曽我)生活家電のネット接続の話が出ましたが、地デジ化したテレビはネット接続している機器です。ケータイ・スマホだけの対策では社会状況の変化に対応することが難しいといえるのではないでしょうか。私は現在59歳なのですが、近所より早く、幼稚園の時に自宅にテレビが来ました。近所の子ども達もテレビのある家庭に集まって視聴したものですが、テレビの普及期にもその影響や対策が問題になった経緯があります。

米田)高校生たちは大人に対して、行政面での取組を整備することや、情報漏えいなどのトラブルについて内容を把握し、子どもに適切な情報を伝えられる立場であってほしいと考えています。事業者にも子ども向けのセミナーを設けて、課金の仕組みやルールをきちんと説明してほしいと考えていますし、小学生のような小さな子どもには、欲しがるからと言ってスマホを買って与えるだけではなく、利用のルールを親子で話し合う必要があると感じています。子どもである高校生自身も大人の関与が必要だと考えているのです。スマホの利用スキルについては学校の教員より高校生の方が詳しいのですが、高校生はそうしたこともわかった上で、なお大人との話し合いの場が必要だと感じていることをお伝えしたいと思います。

曽我)高校生の考えを聞いていると、彼らが親になった時にはよい子育てをするのではないかとも思うのですが、どうなのでしょうか?

尾花)高校生熟議に参加した高校生は、文字通りの熟議をへて納得した上で自分たちなりの考えに至ったわけです。大人や教師の側が一方的に「ケータイ・スマホを簡単に子どもに与えるものではない」と教えたところで、情報機器の利用について自分で考えてこなかった子どもは、大人になった時に、「いけないとは言われたけれど、自分たちも使っていたからいいじゃない」と安易に考えてしまうのではないかと思います。高校生までの段階で、彼ら彼女ら自身にしっかりと考えて、自分なりの考えを持ってもらう機会を与えることは非常に大切だと思います。石川県の場合は高校生になる時に初めてケータイ・スマホを所有するお子さんが多いとのことですから、授業時間に余裕があれば、中学校の段階で情報機器の使い方について子ども達自身が討議をするような場をもっていただくことが良いと思いますし、考える経験が、子ども達が保護者になった時のよりよい対応につながるのではないかと思います。

依存ではなく、コミュニケーションを深めるツールへ

石倉)県の教育委員会では7月にケータイ・スマホ利用の啓発リーフレットを配布しています。また、中学3年生の生徒保護者の皆さんに対して、県警と県の条例制定に関わった部署と連携して作成したネットトラブル防止指導資料を通じて指導を進めています。学校でも保護者向けのセミナーを開催し、県の考え方などについて周知しております。
子どものケータイ・スマホ利用の依存についてですが、子ども達が一日当たり3時間近くをネット利用に充てていると、年間の学校の授業時間は行事なども含めて約1,000時間ですから、子ども達のネット利用時間は学校で過ごす授業時間のトータルを超える状態であることになります。これは子どもの時間の使い方としてはたして適切なのかを考える必要があります。情報機器を持つこと、ネット利用は社会に出ればおのずと必要になるものではありますが、その前段階では情報モラルについて家庭できちんと話し合う場が重要だと思います。
昨年、行われた日本PTA全国協議会の報告をみましても、ネット掲示板などでのいじめや不適切利用、高額な料金、勉強時間や親子のコミュニケーション時間の不足などが心配事としてあげられています。さらに子どもの交友関係がわからなくなったり、親への隠し事が増えたりすることもあげられています。子どもさんが小中学校の間に、保護者の皆さんにはネットの知識を深め、子どもに説明して親子で納得できる状況を準備していただきたいと考えております。

曽我)コミュニケーション能力を高めることはリアルの社会でよい人間関係を築くためにも欠かせないことですね。子どもがケータイ・スマホに依存的になる現状がありますが、逆にこうしたツールを使ってより子ども達の利用をのぞましいものに変えていくことは出来ないのでしょうか。

川又)子ども達の生活経験ということでお話しますと、現在、海や川で泳いだ経験のない子ども達は全体の3割に達しています。10年前は全体の10%しかいませんでした。チョウやトンボを捕まえたことのない子どもは10年前には19%でしたが、今は41%もいます。子ども達に様々な経験が少なくなっていることがおわかりいただけるかと思います。先ほど、熟議の話で高校生自身が利用の異常さに気づくという話が出ましたが、こうした気付く力を養っていくことが非常に大切だと考えております。ネット利用の端末に安全な仕組みを導入することは大切ですが、それと同時に危険を察知する動物の本能のような力を身に着けることも重要であり、文部科学省としては多くの生活体験を積むことによって気づきの力を向上させたいと考えております。ネットの世界はリアルの世界と違って気付くのが難しい側面もありますが、見知らぬ人からメールが届いたときに変だなと感じられるような子どもの育成が大切だと思います。

米田)熟議に参加した高校生は分野や専攻、進学先など様々なのですが、友達との関わりやコミュニケーションの場を積極的に求めている点では共通しています。端末は必ずしもスマホがガラケーより良いと思っている子どもばかりではないのですが、今後もスマホの進化が進むと考え、SNSなどの利用も積極的に行っています。実際の学校生活でも、校門前で生活指導をしている教師をスマホで特定し、その先生の指導に合わせた対応をリアルタイムでとるとか、校内での教師の場所を特定する、始業チャイムをスマホで代用する、帰宅時の最短ルートを検索するといった生活上の利用から、タブレットを利用した英語の発音練習、数学の途中式の考え方の確認、半紙を使わない書道練習ソフトの利用、欠席授業の動画視聴といった教科学習の利用まで幅広く行っています。学校での定期テストの範囲などの連絡事項はメモ代わりにスマホで記録したものをSNSで共有しますから、わからない部分を個別に聞きに来るといったこともありません。このように保護者の時代に比べて今の高校生の生活は大きく変化しています。

今後の携帯利用の方向性とは

会場の様子保護者)中学3年生の保護者です。私は子どもにケータイを原則持たせないという石川県の政策自体が既にガラパゴス化しており、教育委員会やPTA、保護者が事業者の方と協力して率先してネットモラル教育をし、適切な利用を促した方がよいと考えています。これについて、教育委員会の考えをお聞きしたいと思います。また、ネットいじめやパトロールに対する対応ですが、社会問題化している以上は文部科学省が表だって対策を推進していく必要があると考えています。いかがでしょうか。

石倉)石川県の条例は全国的に注目を集めておりますが、所持の判断は最終的に保護者の方に任せられております。各ご家庭で子どもの発達段階に応じて対応していただければよいわけですが、アメリカの心理学者のマズローの発達欲求にもありますように、子どもは親元から離れて外の世界での所属を求める段階がやってきます。そうした段階での情報モラル教育はやはり重要なものであると考えております。小中学生の道徳教育の時間などで県警と協力した指導を行う時間を設け、また、保護者の方を対象とした啓発・学習機会も行っております。こうした情報モラル教育は一般的な倫理的内容に加え使いこなすスキルやネット上の危険から身を守る教育も必要ですので、段階的な対応が必要となってきます。人生のうち何十年という期間、こうした情報端末を利用すれば400万円から700万円と非常に大きなコストもかかりますし、今後とも段階を踏みながら所持する前から指導することが大切であると考えております。

川又)ネットいじめなど社会問題化しているものについては、関係省庁とは今後とも連携して問題解決にあたりたいと考えております。これまでは有害な情報から身を守ることに重点がありましたが、今後はメールのような通常のツールを不適切利用してしまうことで、子ども達自身が加害的な立場になるようなケースも想定しながら連携を深めて行きたいと考えております。国会でも対策が進んでおりますし、連携の在り方についても検討していきたいと思います。

松寺)私自身を含めて、こうした勉強の場や啓発パンフレットなどを有効に活用しきれていない保護者は多いと思います。大人が作り出した便利な機器ですが、不適切な利用で子どもを傷つけることもあるのですから、大人はきちんとした利用について勉強し、子どもを育てていかねばならないと感じました。ケータイ・スマホ利用に限らず、生活していく場で正しいルールを守ること、つまりモラルを身に着けることは子ども達の将来の生活にとって欠かせないことです。親子がさまざまな意見を交わせる環境を整えることが親の役割であると感じました。

尾花)子どもの規範意識を育てるには、先だって保護者の規範意識から見直していく必要があります。ケータイモラルを子どもに学ばせる立場にある親自身のケータイが、子どもの授業参観中に教室内で着信しているようではいけないのです。大人はどうしても自分の都合に合わせてルールを曲げがちですが、保護者が尺度を曲げないことが子どもをまっすぐ育てる一番の近道なのです。
高校生のご家庭に対してこうしたお話をすると、いまさら親が襟を正したところで子どもは親を信用してくれないという意見もいただくのですが、小中学校の保護者の皆さんには手遅れになったと感じる前に取り組んでいただきたいと思います。スマホ利用を制限するにしても、制限する時には「学校で禁止されているでしょ」と言いながら、お母さんたちがおしゃべりしたい時にはファミレスなどで子どもにスマホを渡して「ゲームでもやって静かに待っていなさい」では通りません。そうした大人の対応をみて育ったお子さんは、不適切な利用でもみつからないようにその場をしのげばいいのだと考えてしまうのです。
ネットの匿名性については、子ども達自身も調べられれば身元が割れてしまうことはわかっています。わかった上で、捜査されなければバレないだろうと自制の基準を弱めて安易に考えているのです。親自身が自分の都合にあわせて尺度を変えるような子育てをしたことが反映されているのです。大人がルールを破るような使い方をしてしまった時は、率直に認めて子どもにも謝ればよいと思います。そうした柔軟なコミュニケーションを親が保つことによって、子どものコミュニケーション能力が高まるのではないでしょうか。小中学校時代のお子さんへの真摯な関わりが、その後の子ども達の生きる力や道具をうまく使いこなせる力の土台となるようご家庭での取組を続けていただきたいと思います。

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