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「文部科学省委託事業『ケータイモラルキャラバン隊』」
札幌市PTA協議会研修会(2013年2月6日開催)

カテゴリー: 情報モラル・リテラシー教育 / フィルタリング / 子どもの利用実態 / 新たな端末・サービス / 各地の取り組み(ケータイ所持規制) / インターネットの安心・安全をめぐる動き / その他

子どもたちが情報社会に向き合うために、大人がやるべきこと

多様な端末が普及する中、子どもを有害環境から守るためにはフィルタリングをかければそれで良いのか。参加者、パネリストであるPTA、教育委員会、文科省、企業参加者といった様々な立場の方々から意見交換が行われる中で、それぞれの情報を共有していき、人間力をみがく必要性があるのではという議論が行われた。

パネリスト

パネリスト:

尾花 紀子氏 (ネット教育アナリスト)
小向 太郎氏 (早稲田大学大学院 国際情報通信研究科 客員准教授)
関根 章文氏 (文部科学省 スポーツ・青少年局参事官(青少年健全育成担当)付青少年有害環境対策専門官)
岡田 直也氏 (札幌市教育委員会 指導室 指導担当係長

コーディネーター:

曽我 邦彦氏 ((社)日本PTA全国協議会 元会長)

子ども達をめぐる環境の変化~情報機器の多様化、セキュリティの面から~

曽我)本日は、小学生のご家庭の保護者の方が多く参加していらっしゃるようですね。トークセッションに入る前に、前提として聞いていただきたい確認事項をいくつかお話したいと思います。まず、ケータイと呼んでいるものが、ガラケーから、スマホに変わりつつあるということです。スマホは電話ではなく、小さなコンピューターですから、フィルタリングなどのさまざまなソフトは個人でインストールして利用することが原則となります。2点目に、最近の新聞にデジタルカメラがスマホの機能を持つというニュースが出ておりましたが、子ども達のネットへの接続端末はケータイ、スマホだけではなくなったということです。多少の工夫や手続きによって、今、家庭の中にあるゲーム機や、音楽再生機のほとんどがネット利用端末としても使える状況にあります。ケータイ、スマホ以外にも、危険なネット利用につながる環境はすでに家庭のなかにあることがご理解いただけると思います。この点を認識していただいた上で、ネットのよりよい利用、賢い利用に必要な情報を勉強していただきたいと思います。

小向)早稲田大学大学院国際情報通信研究科の小向です。私はもともと、インターネットと法律などを研究テーマとしており、情報通信総合研究所で法制度の研究をしております。モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)の理事もしております。EMAではインターネットサイトの認証業務を行っておりますが、変化するネット環境の動きに合わせて認証基準や認証制度の見直しが常に必要な状況にあります。法律的な観点からいえば、日本の検討が進んでいる面もあれば、あまり検討されていない課題もあります。例えば、欧米では子どもの情報を入手する際には、親の許可を必要とするなどとした法律がある国もあります。日本にはそういった子どもの個人情報保護のための法律がありません。 
1990年代初頭からネット利用の環境が徐々に広がりましたが、98年にウインドウズ98、99年に携帯ネットが提供されて急速に普及し、ネット利用環境は急速に変化しています。こうした動きに法制度が追いつかないのが実情であり、例えば、組織的なサイバーアタック、標的型攻撃など情報セキュリティの問題が顕在化しています。悪意のあるメールを攻撃対象に開封させることによって、情報を盗んだり漏えいしたりすることが主な手口となっていますが、メールを送ること自体を取り締まることは、あまりできていないのが実情です。東京都が設けているネットの相談窓口では架空請求トラブルが最も多いのですが、迷惑メールやひっかけメールを含めて、今後もこうした架空請求を引き起こすメールなどのやり口はさらに巧妙になってくると思います。私宛に送られてくる迷惑メールでも、発信者名が私の妻の名前と同一になっているなど、かなり手の込んだものがみられるようになりました。こうしたトラブルに注意をしていただくとともに、万が一、ひっかかってしまった場合でも、その後の対応をとれるようにしておくこと、親子で相談できる環境をご家庭の話し合いの場に作っておくことが大切だということをお伝えしたいと思います。

札幌市の現状について

岡田直也氏岡田)平成24年度の4月から教育委員会で生徒指導に関わる仕事をしています。札幌市の現状をお話しますと、市内の学校では各校の判断によりますが、長期休暇の前等にネットモラルの指導などを行っており、また、ネットパトロールを民間事業者に委託して行っております。
最近の事例では、先日、YouTubeに投稿した小学生本人が映っている動画に対して、視聴した他の大人や全国の小学生から書き込みが重なり、そうした書き込みを見た大人が市町村の窓口などに宛てて、書き込みの是非を問うような手紙を送ってくるということがありました。札幌市にも手紙が送られてきまして、本人特定に至るような個人情報はなかったのですが、パトロール委託している事業者に依頼して、該当すると思われる学校には全体的な指導をお願いしました。
書き込みについては、不適切な内容の書き込みの削除依頼を学校から事業者に行ってほしいという保護者による申し出がよくあります。けれども法的には学校が被害を受けているわけではありませんので、基本的に家庭で、被害を受けたお子さん本人の名前で事業者に申し出てほしいとお願いしています。利用の多いソーシャルネットワークサービスの中にはTwitterなどの、海外アメリカの事業者が提供するサービスも多くあるため、削除申請は直接英語で海外の事業者とやりとりしなくてはなりませんし、政府が公認した本人証明を出すことをもとめられます。私が対応した札幌市の子どものケースでは、札幌市が発行する住基カードを提出して申請が認められ、削除が行われました。教育委員会としては、防止策を講じるとともに、被害対応についても取り組んでまいりますので、情報をお寄せいただけたらと思います。

曽我)国内で開発・普及が進んだ従来のケータイの時代には、フィルタリングは事業者が行ってくれるものでしたが、世界標準で普及が進むスマホでは日本の価値観にあわせたフィルタリングというものはありません。AppleのiPhoneは4歳からコミュニケーション利用を想定しており、日本より利用のハードルは低いといえます。一方、児童ポルノなどに対する規制は日本より厳格であり、こうした各社が定める基準を理解した上でユーザーが選ぶことが前提となっています。Android端末では昨年からauがフィルタリングを設けるようになり、ドコモとソフトバンクでも年内の導入が予定されています。自分の利用に適したスマホの端末を選ぶことや、ユーザーの声を事業者に届けることによって、自分たちの利用基準を知ってもらい、反映されるよう取り組んでいくことも大切だと思います。青少年インターネット環境整備法では、サービス、端末の開発段階に青少年保護の取り組みを反映させるようにうたわれています。

ケータイからスマホへの移行

質問者1)小学4年生の保護者です。私はコンピュータソフトウェア関連の仕事をしております。ケータイモラルキャラバン隊という取組についてですが、ケータイという呼称をそろそろやめていただきたいと感じています。ネット接続という観点からいえば、携帯端末もパソコンも同一なわけですから、スマホという焦点の当て方も問題の本質からずれているのではないかと思います。ネット利用全体を問題の中心に行政の取り組みも行っていただきたいと感じています。札幌の学校現場についてですが、先生本人がスマホを利用していない状況も多く、子ども達よりも情報機器に慣れていないように思います。先生に対する指導はどのように行われているのでしょうか?

関根)文部科学省では3年前からインターネットのモラルに関する企画を行っており、当時はケータイが主流でしたので、ケータイモラルキャラバン隊といった呼称となった経緯があります。現在、予算要求している事業名では、ネットモラルキャラバン隊という呼称に変更しております。そうした呼称変更にも賛否はあろうかと思いますが、ご指摘の通り、ケータイだけ考えていればよいわけではありませんので、変更ということになりました。昨年7月に政府が策定した基本計画ではスマホをはじめとする新たな機器や無線LANなど、ネット接続可能な端末全体への対応が盛り込まれております。

岡田)本年度、中学校を訪問した際に聞いた情報では、教師の半数以上がスマホを利用しているとの回答がありました。現場の先生に対して、お知らせを通知するというかたち以外に、実際に操作を行うなどの研修を通して知ってもらうことが一番と考えています。今年度は札幌市内を5つにわけ、全市の先生を対象にセミナーを開き、何かあった際の削除の仕方やネットの危険性の学習をしていただきました。高校生が海外に修学旅行へスマホを持って行き、旅行先でネットに接続したことにより、帰国後の請求が90万円も発生するといった事例紹介もありました。教師の側が起こりうるトラブルを理解し生徒に指導していくことが大切です。セミナーの場でこうした事例を先生方に周知していきたいと考えております。

スマホでのフィルタリングの有効性について

質問者2)私もコンピュータ・ネット関連の仕事をしておりますが、先ほどの方と同じようにスマホという切り口で語るのは弊害が大きいと感じております。結果として、スマホは危険なのだ、という漠然とした印象しか残らないのではないでしょうか。お願いとしては従来、推進されてきたフィルタリングの有効性が揺らいできていることを周知徹底していただきたいということです。フィルタリングを基本においた安全推進の周知の方向転換をお願いしたいと思います。また、無線LANに包括的にフィルタリングをかけるソフトについてのお話がありましたが、技術的に抜け道が大きく、かえって安全という誤った思い込みをユーザーに与えかねないと危惧しています。こうした点についてはいかがでしょうか。

デジタルアーツ)フィルタリングメーカーのデジタルアーツの工藤です。先ほどの保護者の方のご要望では、有識者の方や、啓発活動を推進する立場の方から「フィルタリングは有効性が揺らいできている」ということを周知してほしいとのことでしたが、具体的にどのような点を有効でないと感じていらっしゃるのでしょうか?

質問者2)市中のファーストフード店などで子ども達がネット利用しています。そうした子ども達に話を聞くと、自宅のネット環境にはフィルタリングがかかっているので、フリースポットで制限のないネット接続を利用するためにファーストフード店をたまり場としていると言っています。自宅内で制限をかけても自宅外で利用をするという方向にいくのは、むしろ危険であると感じます。

デジタルアーツ)確かに無線LANでゲーム端末を使ってネット接続などをすると、フィルタリングはかからないのでアダルトサイトなどを含めたすべてのサイト利用が可能になります。けれども、端末によってはゲーム機の利用ボタンを有効にすれば無線LAN環境でもアダルトサイトなどに接続できないものもあります。保護者の方にも必要に応じて利用していただきたいと思います。スマホや携帯音楽端末についても、フィルタリングソフトをインストールしていただくことでフィルタリング機能を有効にすることが可能です。昨年の11月にauからフィルタリングが提供されるようになりましたし、今年の2月からはソフトバンクが弊社のフィルタリングを提供する仕組みになりました。徐々に環境が整備されている部分もあることを御理解いただければと思います。

質問者2)ゲーム機に搭載されたフィルタリングソフトについては知りませんでした。ただ、100%安全な環境を提供できるフィルタリングがない限り、フィルタリングが安全という考え方を啓発活動で周知することには反対です。親が配慮する家庭の子どもも、そうでない子どもと交友することで危険の入り口はあちこちにあります。ネットに自由につながる端末1台を通じて、テザリングでその他の端末も無制限に接続するとも考えられますし。ほんの数年前に安全だといわれたフィルタリングの推進の結果が、今日の危険なネット利用の状況であることを考えていただきたいのです。

曽我)フィルタリングを必ず使うべきかあるいはモラルと利用スキルを磨いてフリーな状況で使いこなすべき、といった考えには終わりがありません。そうした意味では家庭ごとに安全でかしこい利用につながる選択肢を話し合っていくことでしか解決はないと言えるのではないでしょうか。いまやネットにつながる端末は、キッチンの包丁のように危険性はあっても生活に必需な使いこなすべき道具の一つになっています。よりよい利用について、具体的にどう考えればよいのでしょうか。

小向)技術の問題を専門的に考えると、欠点がある技術は無意味でむしろ有害だという思考に行きつくのは理解できます。ただ、現実に問題があり対応する術が不完全であっても、利用することには意味があるとも感じています。ネット上の犯罪被害にあった青少年の端末は、全体の割合からみると、フィルタリングをかけていない人が多いことがわかっていますし、安全な利用環境がすべてではなくても、今すぐフィルタリング無効を訴えることには疑問を感じます。
また、スマホに特化してネット利用を論じることの問題についてですが、ケータイ、スマホのようにパーソナルに利用するネット接続機器を糸口としてインターネット利用全体についての関心も高めていくやり方は有効な部分もあるのではないかと思います。

規制だけでなく、家庭、学校、地域が連携した教育が必要

質問者3)中2と大学生の男子をもつ親です。我が家ではフィルタリングを利用せず、子どもの情報発信が不適切だった場合は親子で責任をとるという立場で利用をしています。私としては、フィルタリングなどを利用するといったシステムの問題だけでなく、どんな利用をしたらよくないのかを親が伝え、話し合っていくことがより重要でないかと考えています。ネット上で違法・有害情報を発信している側にはどのような法的措置などがとられているのかお聞きしたいと思います。また、教育委員会の方にうかがいたいのですが、日本の教育現場ではケータイ・スマホに限らず、問題になりそうなものを持ち込ませない、締め出すといった問題処理が保護者を含めて多いように感じています。より具体的な大人が使い方を子どもに教えるという視点からの指導について例があればお聞かせいただきたいと思います。

小向)諸外国では、子どもが犯罪被害に巻き込まれる危険がある場合は取り締まりに動くことが一般的ですし、日本でもそうした動きは強くなってきています。ただ、ネット犯罪の分野では、日本では事業者の方の自主的な取組が中心となってきたこともあり、利用者側の自己責任に対する認識の甘さが置き去りになった側面があると考えています。個人の責任ある使い方については保護者がきちんと子どもに教えていくことがより大切だと思います。

岡田)学校現場へのケータイ端末やゲーム機の持ち込みについては、学習に不必要なものは学校に持ち込まないという観点から入学ガイダンス時に各学校は保護者に対して説明をしているかと思います。ケータイ端末やゲーム機に限らず高価なものを持ち込んだ場合、紛失してしまった時の対応については難しい問題を抱えており、基本的には学校現場が子どもの発達に応じた指導をしていけるよう伝えているところです。

質問者4)小学生と高校生の子をもつ保護者です。子どもの学齢があがるにつれて、保護者は先生方や他の保護者との関わりが少なくなり、個別の対応が難しくなってきていると感じています。子どもがうっかり友達と一緒にうつったプリクラ画像などを公開することがあっても顔見知りの親同士であれば、直接謝ったりすることが出来ますが、知らないお子さんとのトラブルや、子どもに関わる問題意識を共有する機会のない保護者とのトラブルでは、解決のために具体的にどういった働きかけが有効なのでしょうか?

岡田)保護者ができる働きかけは校長、教頭等に遠慮無く相談していただくことと考えております。話が行き違いになって解決にいたらない場合は、教育委員会にも相談していただいてけっこうですが、まずは学校と相談していただければと思います。

関根)青少年インターネット環境整備法の基本理念では、①青少年の情報モラルを身に着けさせること、②フィルタリングの性能の向上及び利用の普及等により青少年の有害情報の閲覧環境を最小化すること、③こうした取組を民間主導で行い、国などが支援することが掲げられております。保護者が青少年の利用を見守る責務もありますし、国が推進しているeネットキャラバン以外にも、事業者の方が中心となってすすめている安心ネットづくり促進協議会の出前講座のような取り組みもあります。ネットの利用はこうしたいくつかの取り組みがいずれも補い合って進められることが大切です。先ほどお話のあった、情報共有のできていない保護者の方への対応ですが、内閣府では保護者に対する普及啓発対策への提言をまとめており、地域の保護者の方のなかに身近な相談窓口を作っていくことを検討しております。情報共有に参加できない方への取り組みについても、どの地域でも対策を進めているところです。

尾花紀子氏尾花)私自身、12年間、職場とまた母親としてPTA活動の経験を通して、学校現場の情報共有に参加されない、できない保護者の方の対応について質問を受けてきました。その経験からおすすめしたいのは、自分の子どもだけでなく、その友達、参加がない家庭のお子さんも含めて、全ての保護者が自分の子どもと同じように相談にのってあげられる存在になることの大切さです。自分が答えられないような内容の相談であっても、子ども達は誰かに相談したいと思っているのですから、まず聞いてあげていただきたいと思います。先ほど、自分の子どもの交友についての保護者の方からのお話もありましたが、我が子の安全だけに配慮していても子どもの安全は守られません。お子さんの友人も含めて自分の子どもだと思って話を聞いたり、わからないことについては知っている人につないであげたり、といった対応が大切だと思いますし、学校現場での取り組みも増やしていただければと思います。
私は今年5月28日に予定されている札幌市の学校教員協会の席でお話する機会をいただいております。本日のトークセッションでの内容を先生方にもお伝えしたいと思います。最後に、フィルタリングサービスについてですが、フィルタリングサービスを利用していれば親の責任は果たしたと、免罪符のように考えていらっしゃるご家庭もたくさん全国にあるかと思います。フィルタリングは仕組みにすぎず、抜け穴もあります。保護者の取り組みを支援するのが道具の役目であり、子ども達が危険に遭遇した時に回避する力を身に着けさせるのは学校や地域、家庭の教育の力です。前回、釧路にお邪魔した時に、参加された市議の方からフィルタリングが徹底しないから事件が減らない、国で全面導入を、という話があったのですが、そうではないと思います。あくまでも道具で縛るのではなく、人間力で自分を守り、上手に使いこなせるような子ども達を育てることの大切さをお分かりいただけたらと思います。

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