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「文部科学省委託事業『ケータイモラルキャラバン隊』」
兵庫県PTA協議会研修会(2013年2月23日開催)

カテゴリー: 情報モラル・リテラシー教育 / フィルタリング / 子どもの利用実態 / 新たな端末・サービス / 各地の取り組み(ケータイ所持規制) / インターネットの安心・安全をめぐる動き / その他

子どもたちが情報社会に向き合うために、大人がやるべきこと

ネット依存に陥らず、賢く携帯・スマホをはじめとした情報機器を利用するためにはどうしたら良いのか。兵庫県姫路市で開催された研修会では、姫路市の現状を踏まえて、活発な意見交換が行われた。

パネリスト

パネリスト:

米田 謙三氏 (私立羽衣学園高等学校 教諭)
関根 章文氏 (文部科学省 スポーツ・青少年局参事官(青少年健全育成担当)付 青少年有害環境対策専門官)
西田 健次郎氏 (姫路市教育委員会 学校指導課長)
増尾 賢一氏 (姫路市連合PTA協議会 会長)
井上 真由美氏 (安心ネットづくり促進協議会 普及啓発広報委員会 普及啓発部会副主査 (株)ミクシィ ユーザーサービス本部CS推進部 渉外担当)

コーディネーター:

曽我 邦彦氏 ((社)日本PTA全国協議会 元会長)

企業・自治体・国の取り組みについて

井上)安心協はインターネット利用者、産業界、教育関係者、有識者などが一丸となって一人ひとりがインターネットの光と影を正しく知り、安心安全にインターネットが利用できる環境を目指して、2009年2月に発足した組織です。ミクシィも協議会設立当初より発起人として活動をしております。また、スマホ時代の子ども達の安心安全で賢いネット利用の実現を目指し、産学連携して全国で取り組んでおります。
次にミクシィの取り組みについてご説明いたします。弊社ではSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)『mixi』にて、「心地よいつながり」を軸としたコミュニケーションの場をご提供しております。利用者が安心安全に楽しくコミュニケーションをしていただけるように、24時間365日目視によるヒューマンパトロール、セキュリティシステムを整備しmixi利用規約違反投稿や行動を監視、不適切な投稿や振る舞いをする悪質な利用者に対してはペナルティ制度を設け、利用に関する注意喚起や警告等を実施し、適切な利用を促しています。
ミクシィは、15歳以上の方がサービスを利用できますが、不用意な接触機会(コミュニケーションリスク)の減少、年齢や習熟度にあわせて段階的にサービスを提供することで安心安全にご利用いただきたいと考え、青少年(15~17歳)と18歳以上がご利用いただけるサービスを区分(ゾーニング)しています。また、子ども達がインターネットやソーシャルメディアの特性を学び、コミュニケーションする際のルールやマナーを理解し、安心安全に利活用できる力をつけてもらうことを主眼に、教育啓発活動に取り組んでいます。子ども達に安心安全な利用環境と学びの機会を提供できるよう、子どもたちを見守る保護者の皆様、学校、自治体、企業など、すべての方々と連携していきたいと考えており、そうしたことが豊かな教育へつながっていくと考えます。そうした思いから、保護者の方からのご意見を本日のような場でいただけたらと思っております。

西田)姫路の学校現場での事例などについて人間性の観点からお話したいと思います。まずネット利用と子ども達の生活時間の関わりについてですが、学校で過ごす時間、地域で過ごす時間が大幅に減少しています。これは子どもが大人や異年齢の子どもなどと触れ合う学びの場が減っているということです。次に家族で過ごす時間ですが、ケータイ・スマホのながら利用が起きることによって、居心地のよい安心したコミュニケーションのための時間が減少し、内容も低下しています。加えて子ども達が一人で過ごす時間は自分を振り返り、内面の成長を促す大切な時間ですが、これもケータイ・スマホの利用で減少しています。子ども達の生活時間の全般がケータイ・スマホの利用時間に浸食され、家庭での時間にもつながることによって他人が入り込んでいることを考えていただきたいと思います。大人は子どもの社会生活や家庭でのリアルな生活時間を大切にし、その上でツールとしてのネット利用機器の上手な活用を教えていくべきだと思います。

増尾)私は10数年来、学校や地域の場でインターネットのモラルなどについて啓発活動をしてきました。私自身はネット利用を積極的に行っていたため、家庭での子どもへの教育も段階を踏んで進めてきました。最近ではFacebookなどのSNSサービスの利用者も急激に増加しており、大人の側にも初心者のまま危険を熟知しないで利用しているケースがみられることに危機感を持っております。中学から高校への進学時期にはほとんどの子どもがケータイ・スマホを所有することになりますが、こうしたネットモラルに熟知しない保護者の方は子どもに適切な教育をすることができません。フィルタリングだけをかけて安心したところで、ネットモラルを教えられていない子ども達はフィルタリングの抜け道を見つけ出します。やはり中学の段階までにしっかりとモラルを教えることが必要だと感じています。
私は長年、携帯電話の販売に携わっていたため、携帯電話というツールの功罪に詳しいのですが、個人的には中学生までは子ども達に所有させない方がよいと考えています。昨今は学校の卒業アルバムに個人情報を掲載しませんから、ケータイ・スマホのアドレス交換をしなくては同窓会を開くための連絡もままならないといった現実があります。高校ではケータイ・スマホを所有していないことでいじめの対象になるかもしれません。高校では持たせるべきかと思いますが、所有にあたっては親子でしっかり話し合うことが必要だと思います。PTA活動でも保護者の方が学べる機会を提供できるよう活動していきたいと思います。

曽我)先ほど、西田課長から子どものリアルな生活時間、体験を大切にというお話がありましたが、文部科学省ではこの点についてどうお考えでしょうか?

関根)私は文部科学省で体験活動の推進にも取り組んでおります。ここ10年ほど子ども達の体験活動、とりわけ自然活動の体験は減少しており、そうしたことが子ども達のリアルな経験の乏しさに影響を与えていると思います。学習指導要領でも体験活動を推進しておりますが、理科の実験や五感を通して得る学びの実体験が大切だと考えております。
スマホの利用で言いますと、子ども達は大人に比べてリアルな体験が少ないまま、スマホのバーチャルな利用に進んでしまうことから、依存性が高まることがあるのではないかと思います。子ども達が体験活動に費やす時間が確保しやすい青少年期をバーチャルな利用に費やし、実体験が減少してしまう状況を危惧しており、体験活動の機会と場を提供する与える取組を進めていきたいと考えております。

各サービス内容について

質問者1)中学生の保護者です。Facebook、LINE、WIFIという言葉の意味自体がよく理解できなかったのですが。

米田)Facebookは羽衣学園でも利用しているのですが、ネット上の掲示板のようなもので、個人が書き込んだ内容を他の利用者と共有できる仕組みです。アメリカで連絡網のツールとしてサービスが始まり、世界中に利用が拡がりました。実名利用が原則となっており、写真や近況が簡単に公開できることが最大の特徴です。メールを自分の知り合いに送るためには、相手を特定してその都度、メールを送信することが必要ですが、Facebookは自分が近況を書き込むだけで全体に公開していれば利用者から誰でも見られる状態になります。見た人間は相手に返信を書き込むこともできますし、「いいね!」という表示をクリックするだけで、見たということをあらわすことができます。羽衣学園の高校生は、Facebook上の友人が平均で400~500人いると聞いています。海外ユーザーとの交流も盛んですし、海外の高校生の中には1000人近くの友達と交流している子もいますから、交流疲れがでるのも仕方ないような状況かもしれません。
LINEは連絡ツールとして広く使われており、用途ごとにグループ作成することにより数十人単位で連絡を共有することができます。高校生はテスト範囲の確認などに利用したりしていますが、グループからメンバーを外すことなども簡単にできるため、いじめのようなトラブルになることもあります。
WIFIは無線でインターネット接続が出来る環境のことで、携帯電話事業者と契約を交わして有料利用する通信回線と違い、その環境に入った人は誰でも無料でネット接続をすることが出来ます。マクドナルドのようなファーストフード店では、集客のためもありWIFI環境の提供を進めています。家庭ごとに設定するWIFI環境では、外部からの利用を防ぐためにルーターにパスワードが設定されていますが、複数の家電や情報端末がケーブルを引かないで接続可能です。

曽我)無料のWIFI環境があるのですから、保護者がネット利用の契約をしていなくても、子ども達のゲーム機を外に持ち出せばネット利用が無料でできてしまうということですね。中学生が爆破予告をネット上に書き込み、補導される事件がありましたが、あの事件ではゲーム機をファーストフード店でネット接続していたことがわかっています。子ども達に対する情報教育は小学校からはじまるようになりましたが、保護者にも学びの機会が必要になっています。

各社・団体の出前講座について

質問者2)小学校6年生と中学3年生を持つ保護者です。先日もネット利用の講習会に出まして、保護者の勉強の必要性を実感しているところです。6年生の息子はゲーム機ですれちがい通信を利用しているのですが、600人ものユーザーとの通信履歴があり、本人はこれでも自分の利用は少ない方だと言っています。中3の息子はクラブでの連絡網が回らないトラブルを経験したため、2年生次から携帯電話を持たせるようになったのですが、子ども達にネット利用が日常的になっていることに不安を感じています。保護者向けの啓発パンフレットを配布していただいたり、あすなろ教室(兵庫県姫路市で開設されている小学校・中学校・養護学校・高等学校のPTA会員を対象に、子どもが心豊かに育つため、家庭教育について学習する教室。学習内容は、講演会・話し合い会・施設見学・市政や社会学習など。姫路市立小・中・高・養護学校で開設)のような少人数向けの勉強会で事業者の無料出前講座をお願いしたりすることは可能でしょうか?

井上)ミクシィに限らず、事業者による講演や出前講座等の啓発活動は人数の規模に関わらず広くご利用いただけます。ぜひ、学校や教育委員会を通してお声がけいただき、ご利用いただきたいと思います。

西田)市の教育委員会でも学校からの要請を受けて有害情報対策講座を開設しております。平成23年度は小中高合わせて26回、6000人を対象に開いております。

増尾)SNSサービス提供事業者は企業収益のためにサービスを提供しているのだと思います。グリー、ディー・エヌ・エーにしても始めは無料でサービス提供し、利用者を拡大して有料課金につなげているわけです。海外ではオンラインカジノが解禁されようとしています。従来の保護者のPTA活動は子どもを後ろから見守ることで事足りていましたが、これからの時代は保護者が積極的に勉強し、子どもに先んじて危険性を教えられるようにしていかねばなりません。

曽我邦彦氏曽我)海外では、子どもは社会全体ではなく、個々の家庭の責任において守っていく考えが強いためか、海外の事業者が提供するサービスでは責任を個人で管理するものが多いように思います。

米田)日本には同質な社会という考え方がありますから、そうした傾向があるかもしれません。学校現場には、いまだに原則利用しない立場をとっているわけですが、、子ども達は現実に小学校の段階で、すでに「自分だけメールが届かない」といったようなトラブルを経験しているわけです。大学に行けばレポートの提出などで当たり前のようにネット利用するわけですし、危険から身を守るだけでなく、よりよい利用の仕方を教えていく必要が増していると思います。

井上)企業としては収益とも無縁でいられない部分はありますが、各社とも利用者にとって心地よく、安全な環境を大切にしたいと考えています。2007年頃あたりにソーシャルゲームが提供されるようになり、スマホの普及も伴って利用者が急速に拡大したことで、様々な問題も出てきました。ゲーム提供各社やプラットフォーム事業者はソーシャルゲーム業界の急速な拡大に伴い、安心安全に利用できる環境を整備していくことを目指し、ソーシャルゲーム協会を立ち上げています。有識者の先生方からも意見をいただきながら、ゲームの利用料金をはじめ青少年に関わる利用環境整備等に取り組んできました。ゲーム内表示やリアルマネートレード対策などもガイドラインを策定し、環境の向上に取り組んでおります。

ネット依存症の対策とは?

質問者3)私の中学生の子どももネットをよく利用しています。ネット依存症について、具体的な傾向や陥りやすいタイプなど詳しく知りたいと思います。また、文部科学省や教育委員会ではネット依存症の対策を具体的に進める予定はあるのでしょうか。

米田)依存の定義はネットに関わらず難しいのですが、本来優先されると本人も自覚している生活行動についても、ネットの利用で後回しになってしまうような場合が依存的といえると思います。依存的な利用に陥っている当の本人には、度を越していることが自覚されないようです。後から冷静になって本人が依存していたと気付くこともあるようです。ですので、具体的な対処としては、あらかじめ学齢に応じて利用時間に制限を設け、それを超えたら依存状況だと子ども達にわかるようにすることがいいのではないかと思います。定期的に大人が声掛けすることが大切です。

西田)姫路市の来年度予算要求では、各小中学校にタブレットを導入する予定です。学校現場に端末をいれることについて、危険性なども含めて先生方への研修を進める予定です。最終的には各家庭で保護者に管理してもらうというスタンスですが、学校でも学べる機会を広げていきたいと思います。

曽我)佐賀県では全ての教育現場で子ども達のタブレット利用が進んでいるそうです。学校でタブレット利用の教育が行われれば、家庭で学ぶ機会のない子ども達にもよりよい利用の機会が生まれるかもしれませんね。

関根)厚生労働省の研究部会では数年前からアメリカの基準を参考にして依存症に対する調査を始めていますが、引きこもりや不登校などを含む事例研究の中でネット依存も取り上げられているという段階です。国内での臨床的なネット依存の定義はまだありません。韓国では国の政策としてネット利用を振興したため、急速な利用の増大が起こるとともに、弊害も起こり、青少年の利用を中心に規制が強くなっています。例えば、夜の12時になるとオンラインゲームのサイトから青少年は強制的にシャットアウトされる仕組みなどがあります。すでに依存症に陥った子どもに対しては、ネットから隔絶した環境で体験活動をして一定期間過ごすなど療養プログラムがあるようです。日本国内ではNPO団体でセラピーを行っているところがあります。安心協に参加されている東京大学の先生の発表されたデータでは、フィーチャーフォンよりスマホ利用の場合にネット接続時間が長くなるという結果が出ています。ネットに長時間つながることによって、基本的な生活習慣が阻害される結果にもなりますので、文部科学省としては基本的な生活習慣の乱れなどを家庭と連携して把握することが大切だと思います。

今後のネットモラル教育について

会場の様子増尾)営利企業として大きな利益を上げているネット企業各社は、今後の日本社会に活力をもたらす産業でもあると思います。子ども達が健全な利用をして成長し、こうしたビジネスモデルで世界から利益を上げて行けるようにすることも大切です。大人が子どもを導いていけるよう、勉強を続けていきたいものです。

井上)21世紀の成熟した社会では個人の選択肢や目的が多様化しており、単純な共通の解がない時代だと言われています。ICT機器が教育現場で広く活用されるようになって利便性が増しても、多様な情報から個人が情報を取捨選択、編集して生きる力として生活に役立てていくことの重要性は変わりません。子ども達の未来に希望やチャンスが見出されるよう、子どもたちを取り巻くすべてのステークスホルダーの方々と連携協力しながら、今後も教育啓発活動を推進していきたいと思います。

西田)先ほど、生活習慣の大切さについてお話がありましたが、子ども達にとっては地域や家庭のふれあいのなかで自己を確立していくことが何よりも大切だと思います。子ども達の土台を家庭でしっかり育てていただき、その上に、ツールを使いこなすことを教えていくことが重要だと思います。先日、企業の方から社会人として必要なコミュニケーション能力のある人材についての話を聞きました。ネット上のサービス利用やプレゼンテーション能力に長けていることではなく、人と直接コミュニケーションをし、人間性で信頼されることによって他者とつながっていける人材が必要とされるというお話でした。基本的な生活習慣や親子でのコミュニケーションを大切に子育てを進めていただきたいと思います。

関根)文部科学省としても関係省庁と連携し、取組を進めていきたいと思います。今回の「ケータイモラルキャラバン隊」は来年度から「ネットモラルキャラバン隊」へ名称変更いたしますが、変わらないのはモラルの大切さだと思います。ネット利用経験では保護者より子どもの方が先を行っているわけですが、大人たちが学び続けることで子ども達も大人の話に耳を傾けるのではないでしょうか。親の側も変わる勇気を持って子どもと向き合い、コミュニケーションをとっていただきたいと思います。

米田)今の子ども達はデジタルネイディブと言われています。少し上のポケベル世代などはデジタルイミグラント、全くわからない世代はデジタルエイリアンなどと呼ばれているようです。今の子どもの生活では、朝の登校時から下校後まで、学習面・生活面の区別なくデジタル端末を駆使して得られる便利な情報行動が当たり前になっています。私はデジタル教科書や電子黒板の活動などにも関わっていますが、こうした利用の変化により、必ず得られる能力と失われる能力があります。今後の子ども達に求められるのはクリティカルシンキング、つまり答えのない問題に向かい合っていく能力ですから、他者とつながって解決していく能力は重要になるだろうと思います。ネット利用で大人と子どもがつながることにより、親も子どももよりよい発信者になるため、今後も学びの機会に参加していただきたいと思います。

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