ケータイ小説家・サトインタビュー3
彼女たちは、ひたむきに自分たちの気持ちや心にあることを、物語を通じて表現しています。きっとケータイがインターネットにつながっていなかったら、この心の表現を同世代の若い人たちと共感しあうということはなかったと思います。彼女たちのとても素直で自然な語りをぜひ聞いてみてください。
■ケータイ小説を書き始めた理由
- では、ここで、サトさんがケータイ小説を書き始めた理由を教えてください。
サト:最初、マンガを描きたくて。でも難しいじゃないですか。人だけじゃなくて背景も描かなきゃいけないからあっけなく挫折して。でも何か書きたくて、小説なら簡単だから。
- それは、他の人のHPの小説を見てこれなら書けそうって思ったんですか?
サト:少し読ませてもらって。こんな感じなんだというのを読んで。
- 小説を書いているときは楽しい?
サト:何か、ノレる話とか楽しそうだなとか想像できているときは楽しいんですけど。書いても終わりが見えない話だとなかなか...。
- 実話を書く人も多いけどサトさんの場合はどうですか?
サト:実話ではないです。
- 自分の経験も入れず、全部創作なんだよね?
サト:でも現実に暗い気持ちの時に書いたら、暗い路線にもいきます。
- 学校生活の中で小説を書いて良かった点とかは?
サト:秘密があるのが楽しかったりします。女の子とかが、たまに、自分の作品のこと「次、どうなるんだろう」って話していたりするのをこっそり聞いたり。知らない顔して聞くのが面白かったり。
後は何ですかね...何だろう、何か、うんと自由な場所というか、余裕を持てる場所なので。現実で焦っていても書いているときは楽になれるというか。
- 実際、学校生活の中で辛かったりした訳ではないんだよね?
サト:それはないです。
- 普通に学校生活の中で落ち込んだ時とかに書くことで自由になれるということかな?
サト:先生とけんかしたりとか、そういうときはイライラするんですけど。先生に知っている風なことを言われるんだけど、「何も知らないくせに」と言い返しそうなときもあるんです。
- 自分は違うんだぞっていう感じかな?
サト:自分は先生が思っているような人間とは違うというのを(先生が)知らないのが嬉しい。
- 余裕とか、自信が持てるのかな? 友達はサトさんが小説を書いているのを知らないんだよね?
サト:知らないです。言うつもりもないです。
- 今の学校の友達もみんな知らない?
サト:友達は一人も知らないですね。
- 一切秘密ですか?
サト:そうですね。
- 秘密にしているってどんな感じ?
サト:私は、楽しいです。
- 友達にケータイ小説書いてみたらと勧めたことは?
サト:ないですね。
- 高校生の時はテスト期間中とかどうしていたの?
サト:親とかに小説を書いていることを知られたら、テストの点が悪かったら絶対そのせいにされるじゃないですか。やることもやっておきたいんで、勉強の時は更新しないときもあったし、読者の人にはこういう事情なんでって書いて更新を少なくしたりとかしていましたね。
- お母さんにも秘密だったんだもんね。
サト:(何かの時に)ケータイ小説を書いているせいだって言われるのが目に見えていたので。
- 成績悪くなったりはしていない?
サト:いつも上がったり下がったりを繰り返していたので、変わらずでした。
●サトさんから、なぜ書くに至ったかの理由を詳しくお聞きすることはできませんでしたが、サトさんが喜びや達成感を感じながら書いていること、また秘密を持っていることの楽しさや自信、やりがいなどを素直に表現してくれていると思います。
■書籍化されたことでの変化
- お父さんとお母さんは、今はサトさんが小説を書いていることをご存知ですよね。書籍化の時に初めて知ったのかな?
サト:はい。最初、意味が分らないって(笑)。
- 書籍化の話が来た時はどう感じました?
サト:「あぁ、はぁ~」みたいな。特に何も考えずにやっていたので。そういうことがあるのを知らなくて。それで、魔法の図書館のトップとか見て、こういう事もあるんだな、みたいな。
- 魔法の図書館のポータルトップを見に行ったということ?
サト:トップを見たことがなくて。こういうサイトがあることもあんまり知らなくて。ランキングもよく分らなかったです。
- 書籍化されたのはいつですか?
サト:2008年の6月ですね。
- お姉さんにもそれまで秘密だった?
サト:秘密で。メール打っているとしか思わなかったんじゃないかな。電池パックがパンパンになって、ケータイが変形しちゃって、お母さんに「何これ?」って言われたことはありましたけど、何も変に思われることもなくって。
- 書籍化されたことで変わったことは?
サト:特にないです。
- 嬉しくはなかった?
サト:ランキングを見ないように、見ないようにしていたんで。
- 見ると気になっちゃうの?
サト:気になっちゃいます。あとやる気にも比例しちゃう。
- 書籍化されて読者の方の反応は?
サト:そうですね。反応もありますけど、誹謗中傷の数も増えてきたので、それで書きこみのスペースを減らしてという感じですかね。
- 今はケータイ小説家って自覚みたいなものはありますか?
サト:特にないです。けど、高校の時に、友達の日記の題名に自分の本のタイトルがもじった感じで使われていたのを見て「私が書いているとは知らないだろうな」って思って楽しかったです(笑)。
- 本屋さんで書籍化された自分の小説を見たときは?
サト:不思議な感じでした。お母さんが「ないのかな」って探すのを「やめて!やめて!」って。地元の本屋さんで探そうとするから「もういいから!」みたいな(笑)。
- お母さんは読んだのかな?
サト:読んでないと思います。読ませたくない。お母さんはインターネットは使わないんじゃないかな。お父さんはネットを使うけど、ケータイ小説とかは見ないです。パソコンも株とか釣りとかそういうのを見るくらい。
● サトさんにとって表現の場があることが、心のゆとりや自信につながっていることを理解できました。多くの子どもたちから魔法のiらんどに寄せられるメッセージの中にも、ホームページは自分の居場所、本当の自分、女の子である自分を表現できる場と送ってくれる子どもたちが多く、ケータイでの表現行為は子どもたちの生活にプラスに働くことはあってもマイナスではありません。また、書籍化された後も、とくに生活が変わることはないようです。書籍化は嬉しいけど、特別なことではなく、一生懸命表現していたことが一冊の本という形になったということなのですね。
次号に続く
(鎌田真樹子 株式会社魔法のiらんど 安心安全インターネット向上推進室 室長)

