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「ケータイ持たせない」運動の実態

石川県 野々市町保護者インタビュー2

■持たせない運動の実態

- “ののいちっ子を育てる”町民会議の活動は、どれぐらい知られているんでしょう?

K氏:町内の人は大体、町民会議の存在自体は知っていると思います。私も存在自体は知っていましたけど、ネットで検索してみて不所持運動の詳しいことを知ったという感じですかね。もちろん、子ども達が学校からプリントを持ってきたり、携帯についての講演などもありますし、そういった知らせは見て来てはいるんですけれども。私に関しては、あまり意識してこなかったですね。

- 6年前から携帯電話不所持運動が始まったわけですが、お子さんは何かおっしゃってますか?

K氏:大学生の子は、特に何も意識はしていなかったということでした。不所持運動で携帯電話を持たせていないわけではなく、そのころ、本人達が必要としていなかったですね。昨日か一昨日か、たまたま一番下の子と同じ中学校の、3年生のお子さんを持つお母さんに話しを聞いたんですけど、中3ぐらいになると、実際には子ども達の半分ぐらいは携帯電話を持っていると言ってました。不所持運動については、そのお母さん自身も、携帯電話を持たせるのならばきちんとリスクを説明する必要があるというので、評価しているということでした。

- 町役場の方や町長さんは、中学生の所持率も低いとおっしゃいますけども。

K氏:おそらく学校とかには公にしていないだけなんでしょうね。でも子どもたちの間では知っているし、それなりに必要だから持っているんですよね。塾とかは終わる時間が遅いですからね。

- 今中学生のお子さんも、周囲の子の所持率が5割近くなったら欲しいと言うでしょうか?

K氏:うーん、どうでしょうかね。野々市ではまだ普段の生活で、中学生に携帯が必要にならないですし。うちは仕事柄もあって、家に供用のパソコンが2台あります。中学生の子に「携帯電話がいるか」と聞いても、パソコンもメールがあるし、パソコンでブログも書いてますので、「別にいいよ」という感じですね。上の2人の子も、中学校の時に携帯電話がほしいとは全く言いませんでした。このあたりは、家庭の状況によっておそらく違ってくるとは思いますが。

- 町としては、地域全体で子どもを見ていくんだという方向性があるようですけど、PTAとして協力を要請されたことは?

K氏:町全体の動きとは別で、小学校の子ども会では朝、通学路に立ったりですとか、お祭りの時に神輿の後をついていったりとかしましたけど、町からの要請というのは特にないですね。野々市町の場合は見守り隊というのかな、子ども会からもお願いしてお年寄りの方たちが小学生の通学路に立って下さっています。通学路にある途中まで踏み切りのところまでとか、交差点のところとかに立ってくれてます。

- 町役場のお話を伺うと、持たせないという教育よりもリテラシー教育の方を強化されている印象を受けたんですけど。

K氏:子ども達からそういった話は特に聞かないですね。プリントを持ち帰って来て、親に対しての講演などの告知などは見たりしますが、リテラシーに力を入れているかというと、そういう感覚もないですね。このお話を頂いてからネットで調べたところ、インストラクターの講習などをやられたりとかしたみたいです。取り組みとして良い悪いは別にして、そういう機会があるのは良いことだと思っています。

■条例の影響

- 町役場の前に「危険がいっぱい! 子どものケイタイ」という看板が立ってましたけど、町民の方はやはり携帯は悪だと思っているんですかね?

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町役場入り口に掲げられた看板

 

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石川県野々市町 保護者インタビュー1

 携帯不所持運動を成功させた野々市町は、立地条件といい地域性といい、かなり特殊な地域である。運動の実態や成果については、本当にメディアに伝えられているような実態なのだろうか。我々は実際に野々市町に住む保護者の方にお話を伺うべく準備を進めていたが、不思議なことに取材スタッフが手配した保護者の方が3名とも、前日になって突然取材キャンセルという連絡が入った。
筆者がTwitterで野々市町在住の保護者の方を募集したところ、幸いなことに1名の方がインタビューに答えてくださるという。野々市町役場の一室をお借りして、野々市町で展開する携帯不所持運動の実態と地域事情などについて、お話を伺うことができた。

 仮にお名前をK氏としておこう。金沢市を中心にIT関連の仕事をされており、野々市町に住んで20年近くになるという。大学生、高校生、中学生の3人のお子さんをお持ちで、全員野々市町で育っている。6年前に始まった小中学生への携帯不所持運動の影響を受けたのは、現在高校生のお子さんから、ということになる。

■野々市町の生活環境

- 高校生のお子さんは金沢市内の高校に通われているそうですが。

K氏:長男も同じ高校なんですけど、次男も進学のことも考えて金沢市内の高校を希望しました。中学校を卒業して野々市町の高校(明倫高校)に行く人も多いんですけど、ランク的というと、中ぐらいになる感じですね。

- お子さんは電車で高校まで通ってらっしゃるんですか?

K氏:自転車ですね。公共の交通機関を使うと、一旦金沢まで出てまた戻らないといけなくなりますし。雨が降っていれば、私が一緒に車に乗っけていくこともありますね、私も仕事がそっち方面が多いので。帰りは遅いので、迎えに行ったりします。

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石川県野々市町町長 粟 貴章氏インタビュー3

■いしかわ子ども総合条例改正の影響

- 石川子ども総合条例の改正によって、県全体で子どもの携帯所持規制努力義務が課せられました。野々市町の運動は、この影響を受けるでしょうか?

粟:野々市における取り組みは、そもそも条例化を目指して始まったものではなく、石川県全体の動きとは異なった位置づけであると考えています。難しい問題でね、携帯電話と子どもの関わりでは、これが一番だというような解決策はなくて、それを模索する必要がある。条例化してそれで良いということではなく、それをきっかけに本質に迫る議論が始まれば一番良いとは思うんだけど。

- 他地域からの視察などはどうですか?

粟:携帯不所持運動の取り組みの視察は、野々市が最も多く受けていると思いますよ。特に国で法律が作られた前後は取材などが大変な状況で、時間制約から断るケースが多々ありましたね。

桝谷:当時は仕事にならなかったですね。近隣でいうと、能美市は携帯不所持に非常に熱心ですけど、金沢市ではかなり温度が低いですね。今回の条例が施行されても、金沢市で取り組みはどこまでやれるのか、といった感じです。加賀市などはうちがテコ入れして独自の取り組みをしているんですけれど、石川県と金沢市はどう動くかが難しいでしょうね。

粟:金沢は…大きいですからな。やはり、うちぐらいコンパクトでさっと作って動ける規模だと、すぐ運動が広がっていけるメリットはあります。

桝谷:昨年6月に1回、町民アンケートをとってみたんですけど、携帯の不所持運動の認知率は、保護者よりも地域の中高年の女性層の方が高い。直接、小中学生の保護者ではない50歳以上の女性の認知率が高いということは、小中学生の保護者と先生より、先に地域の外堀が埋まっているんですね。
逆に問題は、保育園などの子どもを持つ世代である30代くらいの若い親たちにどのように啓発していくかが難しい。まだ意識もそんなにないでしょうし、若いうちから携帯電話を持っていた世代ですしね。それに就学前の子どもを持つ世帯は、町民会議に参加する前の年齢層であるし、さらにちょうどそのあたりが他地域から越してくる世帯でもありますし。

- 規制反対派からの突き上げは?

粟:携帯事業者の立場からすれば反対に回るのは当然でしょう。ただ我々は、それ以上に携帯電話を取り巻く環境が良くなれば、それで良いんであって。県で条例が出来たからもう終わりというのではなく、お互いに必要な取り組みは続けていかなければならないという方向で受け止めてます。また運動も今までどおりというのではなく、県の条例が出来て、常に現状を見て対応を変えていかないといけない。

桝谷:実際にNTTドコモから支援金をもらって、モバイル社会研究所から講師をよんで進めた活動もあります。携帯の問題は考えず、学校にネット教育を導入してきた。ここではネットの弊害に、子どもを巻き込む可能性という視点がある。ここを考えていくことが大切ですよね。
だから絶対持たせないではなく、義務教育の間は持たせないでなんとかやってみませんか、という提案だと思っています。キャリアさんに対しても、持つなとは言っていない、中学生はちょっと待ってよという話であって、別に不買運動をしている訳ではないんです。

- 東京を始め全国からみると、「不所持」だけにスポットが当っているようですが、そこは誤解を受けているという感じなんでしょうか?

粟:持つ、持たないというのがクローズアップされて、辛い部分がありますね。取り組みの方向なり、取り組みの一つでこういう事やってきたということなんで。他にもいろんな取り組みをやってますし、そういうことが紹介されずに不所持という点だけで言われてしまう。そういう面でも、青少年の携帯、情報化社会の中での影と光も含めて、国民の理解がまだしっかりされてないのかなと感じます。

桝谷:例えば車社会では交通戦争があり、交通安全運動が行われてきたことを例に考えると、情報支出はかなり多くなり、携帯社会は急速に進展している一方で、まだ環境整備は発展途上にあるという中で、子どもらに待ったをかけたということなんです。

■IT化の流れの中で

- 最近、通信機能をもつゲーム端末がありますが、その対応は?

粟:テレビやゲームというものに関しては、当然そういう心配ははしてます。4年前から小学生以下の児童に対しては、第一水曜日にはノーテレビ・ノーゲームデーを設けてるんですよ。
まあゲームは正直言って、いまさら持つなというのもちょっと、あれですけど。ただ使い方によって携帯と同じ使い方が出来る機能を有する物に関しては、携帯であるという認識で。これまで持たせない運動をやってきたから、不所持について保護者が子どもに考えてもらいやすいし、話せる術は身につけているかなと思いますね。何もやっていなければ、野放しになるだけですからね。

桝谷:テレビも本格的な双方向デジタルが始まると、一種のデジタル端末になるんですけど、すでに町民の中から講師を読んで勉強会を開こうという取り組みが始まっています。

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石川県野々市町町長 粟 貴章氏インタビュー2

■町民会議と運動の実態

- 町民会議と行政との関わりは、具体的にどのようなものなんですか?

桝谷:行政は事業委託という形で現在100万、当時120万円の予算を下しています。町民会議の事務局は、町役場の少年育成センター内に置いています。

- この「プロジェクトK」の目的は、最終的には携帯の所持をさせないというところにあるのでしょうか?

粟:基本的にはそういうことになります。持たせないことを家庭の保護者だけに話をしておいても浸透しないので、町民みんながうちの町は中学生までは携帯を持たなくて良い、という意識を作っていけばという感じです。同時に面積の小さな町ですから、携帯を持たなくても子育ての安全や安心を含めて、支援体制が保たれる状態に取り組んでいます。

- こうした運動の周知の方法は?

桝谷:講座を開くといった活動の他に、中学生に隔年で啓発ポスターと標語を書かせる、看板を作るといったことが中心です。

- 保護者の中には、子どもの塾通いのために携帯を持たせたいという考えもあるのでは?

粟:この辺りの塾には理解を頂いて、子どもの入退出を親の方へメール送信するシステムを導入しているところがほとんどで、子ども自体が携帯電話を持たなくても親が子どもの状態を把握出来るようにしているんですね。あえて携帯を持たせなくても、塾の対応が追いついてきている。もちろん、これは塾の方の自主的取り組みですけど。

桝谷:自治体からは特に働きかけはなしです。町民会議の活動の方が早く始まっていますけど、3~4年前からは、塾独自の取り組みで行っています。 

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石川県野々市町町長 粟 貴章氏インタビュー1

 石川県の携帯所持規制努力義務の原点を追って、同県石川郡野々市町にたどり着いた。ここは、平成15年にはすでに小中学生に対して携帯不所持運動「プロジェクトK」を町ぐるみで展開しており、石川県の条例改正にも大きな影響を与えた町である。インターネット環境整備法が検討された時には、全国ネットのニュースでもこの運動が報道され、石川県のみならず他県からも注目が集まった。運動の主体は、“ののいちっ子を育てる”町民会議である。

 しかしこの運動の経緯や実態、あるいは野々市町の立地条件などは殆ど報道されておらず、過剰な規制をいち早く実行した田舎町という汚名を着せられることとなった。ここでは少し筆を割いて、野々市町の立地について述べてみたい。
 
 その立地は巨大都市金沢に隣接、というよりも、金沢市自体が近隣の町村を合併・吸収して肥大化したため、金沢市にめり込むような格好となっている。背後はこれもまた広大な白山市が迫っており、野々市町は2つの市に圧迫されたような状態である。
この土地には、縄文時代の集落遺跡「御経塚遺跡」があり、古代から開けていたことを物語る。鎌倉時代よりこの地の守護となった富樫氏が館を構え、金沢が現在のような行政機能を持つ以前は、このあたりが政治・経済の中心であったという。

 町内には山らしい山もなく、潤沢に平地が広がる。町の面積自体はそう広くはないが、平成21年には人口が5万人を突破、人口密度は本州日本海側で最大、県集計の推計人口では全国4位となる、過密型ベッドタウンである。

 地場産業は特にないが、事業税などの条件が金沢市と比較して安いため、大型店舗や工場の進出が相次いだ。金沢市から合併の話は何度もあるが、すべて断わっている。平成23年には、単独市政に移行する予定だという。
 
 JR金沢駅からわずか2駅の野々市駅で降り、タクシーで野々市町役場に向かう道すがら、我々が想像した北陸の田園風景はまったく見えない。広々とした道路の両脇に立ち並ぶ真新しい巨大店舗、ここは北陸の田舎町などではない。

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まるで米国のような開放感。奥に見える赤い建物が町役場


やがて市役所となる野々市町役場で、携帯電話を持たせない運動「プロジェクトK」の経緯と現状を、市長の粟 貴章(あわ たかあき)氏に伺った。粟氏は平成19年より現職で、前市長からプロジェクトKのバトンを渡された格好である。またプロジェクトK発足当時から活動を見守ってきた、野々市町住民生活部広報情報課 課長補佐 桝谷泰裕氏にも同席願った。

■「プロジェクトK」に至る背景

- 野々市町に暮らす方々は、どういうプロファイルなのでしょうか?

粟:今は農家が、ほとんどないですね。多数というと核家族です。共稼ぎ、子ども1人2人ぐらいですね。町の平均年齢は39歳前後と若い町なので、保育園、小学生が各一人、子どもは放課後習い事に行く感じで。そういった意味では農村ではなく、明らかに都市型ですね。農村が急速に都市化したわけですけど、まだ他に比べれば地域のつながりが残されている土壌は、なんとはなしに残っているかなと。

- 携帯不所持運動を行なっている、“ののいちっ子を育てる”町民会議についてお伺いしたいのですが。

粟:もともとはPTA・学校など教育関連の団体プラス、連合町内会という地域自治組織、交通安全会などの地域ボランティア団体などが組織して、子供たちの健全育成の取り組みをやり出したというのが最初ですね。

桝谷:町民会議は今年で発足22年、携帯電話の活動に関しては平成15年からになります。そもそも昭和62年の発足時にはモーテルが近隣に建ち始め、住民運動に取り組もうというとっかかりがあったんですね。環境浄化ということで、携帯に対する有害情報の取り組みも、必然的な流れの中でやっていたような経緯です。

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