■地域活動のあり方
- 子どもたちの活動が広域化しているということは、地域の広い範囲で大人がちゃんと子どもを見ていく活動が必要になりますよね?
川内:そういうことになりますね。学校だけではなかなか対応しきれない。学校間の連携が必要ですし、それだけでは十分でありませんから、やはり地域や保護者に加わっていただき、連携の中で子供たちを見守っていくことが必要になっています。
- 何か市民運動みたいなものは計画しているんですか?例えば長崎県では大規模な声掛け運動などが行われているようですけど。
川内:そういった市民運動が計画されているかどうかは、把握できておりません。
- 第三者の大人が声をかけて不審者扱いされてしまう、いわうる「声かけ事案」の頻発と、地域の大人が子どもを見守るというのはうまくかみ合わない部分があると思うんですけど、そのあたりの対策というか手段はありますか?
川内:難しいご質問で、申し訳ありませんが、根本的な解決方法は思いつきません。
- 石川県では不審者の声かけ事案はあまりないんですかね?
川内:時々あります。車で近づいてきた不審者に、下校中の小学生が声をかけられるということがあります。重大な被害に及ばないまでも、声をかけられたということは時々あります。
「ケータイ持たせない」運動の実態
■条例の効果測定
- 石川県全体で所持規制を行ってしまうと、比較対象が他県になってしまうので、条例の効果測定が難しくなってしまうのではないかと思います。石川県ならではの事情や特性を加味できないですよね。
清水:所持率が下がるのが目的ではなく、青少年が加害者、被害者にならないのが一番大事なので、そういったことが1件でも減ることが一番の効果かなと思っています。
- 消費者センターや警察への相談件数も、効果を測る目安になりますか?
清水:警察の方ではいわゆる青少年に関わる事案が何件かあって、そのうち携帯電話がきっかけという事案が何件あってという統計はとられているので、その辺は参考になると思います。要は青少年が犯罪に巻き込まれないこと、加害者になったりすることはないようにということですんで、その辺は一つの指標にはなるのではと考えております。
- 携帯電話、インターネットに関する意識調査などは行なっていますか?
川内:本県は平成20年10月に、公立の小・中・高等学校、私立の高等学校の児童生徒約13万人を対象に、携帯電話に関するアンケート調査を実施し、そこで児童生徒の利用実態が見えてきました。
また平成21年4月から、ネット上の巡視を行っています。本県の場合は、県立高校の情報技術に詳しい教員8名が4名1組で週に2回、半日かけてパソコンと携帯を使って、ネット上の巡視をしています。アドバイザーとして弁護士、県警少年課の方、携帯電話事業者にも加わっていただいております。
これによって、アンケート調査の数値からでは読み取れない子どもたちの携帯電話の利用実態が見えてきました。誹謗中傷、いじめの書き込みも若干ありますが、個人情報やふさわしくない画像などの掲載が多いです。
問題があると判断した書き込みについては、学校にすぐ連絡して、直接、学校の教員が保護者の協力を得て指導するようにしています。こういう直接的な指導の中で、情報モラルや規範意識を一つ一つ指導していくことが、本来の生きた生徒指導になると考えています。
■情報リテラシーの教育プラン
- 条例を文面通りに読めば、高校で携帯電話を持つことになると思いますが、特に小・中の段階で情報リテラシー教育のプランはありますか?
清水:よく子どもから携帯電話を取り上げといて、いきなり高校で与えてどうするんだというお話をお聞きしますけど、いずれどこかで持つわけですし、それがどの時点で必要かというのは難しいと思います。実際に、小中学生は持っていないのが大半で、高校生になって急に大部分が持つようになって、高校生が事件に巻き込まれてしまう形になっています。情報リテラシーに関しては、今ではパソコン、携帯電話でもインターネットの面では同じになっていますが、そういった教育というのはこれまでやってきたわけですし、持っている、持っていないにかかわらずリテラシー教育は必要です。
「いしかわ子ども総合条例」を実際に所管するのは、石川県健康福祉部少子化対策監室であるという。全国で初めての携帯所持規制条例を運用するにあたり、県ではどのような方策を取っているのだろうか。
今回は石川県庁にて、健康福祉部少子化対策監室子ども政策担当課長 清水健次氏、保護者に対する周知・啓蒙を担当する立場から教育委員会事務局 生涯学習課 課長補佐 宮﨑謙治氏、学校に対する指導を担当する教育委員会事務局 学校指導課 生徒指導担当 課長補佐 川内斉氏にお話を伺った。
■条例のそもそも
- いしかわ子ども総合条例は、いわゆる「青少年健全育成条例」のようなものかと思うんですが、どうして少子化対策監室で所管することになったのでしょう?
清水:以前から青少年健全育成条例は別にあったんですけど、平成15年に「次世代育成支援対策推進法」が出来て、各都道府県で少子化対策のプラン作りをしなさいということになりました。そこで平成17、18年とプラン作りを進めてきたんですけど、ただプランを作るだけではなく、その実効性を高めるために、組織体制づくりを確固たるものにし、条例に恒久的な対策として位置づけていくんだという意味もあって、青少年健全育成、子育て支援、子どもの権利擁護及び若者の自立支援などを一本化して、平成19年に総合的な条例を作ったんですね。これが「いしかわ子ども総合条例」になります。
今回の条例改正には2つポイントありまして、いわゆる所持規制に係わる部分と、フィルタリング規制強化(保護者からの申出書がなければフィルタリングが解除できない)の2点があります。フィルタリングの部分は知事の提案、所持規制は議員さんの提案でありましたが、青少年の健全育成を旨とすることは同じであり、今回いっしょに改正がなされました。
- 改正の内容に関してはかなり細かく精査されたと思われますが、メリット、デメリットはどのように考えられますか?
清水:所持規制に関する努力義務の規定は、青少年の携帯電話の使われ方について、保護者の方々に問題意識を持っていただくことへのインパクトが大きく、また、特に小中学生に携帯電話を持たせないという運動を地域で活動されている方には、よりどころになるかと思います。デメリットとしては、確かにこれまで他県の条例には規定されていない部分があるので、未知数のところはあります。
■条例の周知の方法
- 新しい改正ポイントの具体的な周知の方法は?
宮崎氏:パンフレットは小中学生の保護者、高校生の保護者向け2種類作りました。前者は所持規制について、後者はフィルタリングの徹底について、それぞれウェイトを置いた形としています。
保護者に対しては、昨年度も携帯電話に潜む危険性から子どもたちを守るために、フィルタリングの徹底と携帯電話の適正な利用を啓発のためにリーフレットを作成しています。これは昨年の夏休み前の保護者懇談会等で配布したもので、担任から直接保護者の方にお渡し頂き、説明もして頂きたいということで、同時に教員向けの解説用資料も作りました。
(画像)小中学生保護者向けパンフレットと、高校生保護者向けパンフレット

小中学生に防災や防犯以外の目的で携帯電話を持たせないようにする保護者の努力義務を盛り込んだ「いしかわ子ども総合条例」。これを決めた県議会で反対討論を行なった盛本芳久県議会議員に、東京でようやくお会いすることができた。09年も押し迫った、12月20日のことである。
盛本氏は公立中学校の先生を経て、県教職組合役員から現職となった、教育畑出身の議員である。忙しい中を縫って、月10本程度blogのエントリーもご自身で書く。条例改正の経緯からその未来に至るまで、携帯所持規制反対派の立場からご意見を伺う。
■条例改正の経緯
- 所持規制を条例に盛り込むという具体的な動きは、いつごろ始まったのでしょうか?
盛本:議員提案の条例を作れるような議会にしていかねば、という話自体は2~3年前からあり、その中で、携帯電話の所持規制というのが出てきました。子どもたちと携帯の関係を考えて、何か条例を作っていこうと。
- いつぐらいのことでしょうか。
盛本:条例が出来る1年以上前かと思います。その時点では継続した話にはならず、各会派の中で何人かが話をしている程度だったと思います。
- きっかけとなるような出来事はあったのでしょうか?
盛本:特にそういうわけではなく、自民党会派の皆さんがとにかく決めねばならない、携帯を持たせない、子どもを守る、と、こういう話になりまして、話は一気に進んだという感じです。僕らもインターネットと子どもについては、事件も問題もあるし、何とかしなければとは考えていました。しかし4月に国の法律が出来たこともあり、フィルタリングの話もあったので、いったん、様子をみて考えようとその時点では思っていました。
規制に関する条例案が自民党会派から出てきて、それをどうするか、という話し合いを行っていくなかで、これ(携帯の不所持を条例化すること)はちょっとなじまないな、という意見を言ってみたのですが、最終的には数で押し切られてしまいました。
- 石川県では、議員提案で条例の改定を行うことはよくあるのでしょうか?
盛本:いや、ないですね。初めてに近いかと思います。県によっては相当作っているところもありますが。やはり自分達で条例を作るとなると、色々調べたり、他の法律との整合性も考えたりしなければならないから、事務局体制などいろいろ作らなければならないのですが、石川県では体制が十分に出来上がっていないのです。
■条例化の問題点
- そもそも条例の目標としては、青少年が犯罪に巻き込まれないようにすることですよね?
盛本:もちろん、それはそうです。また、家でメールばかり打って、本を読むとか、友だちと遊ぶとか、勉強するとかいった時間が、携帯に食われているという話もある。そういうことは携帯がなければやらないわけだから、それも目標にはなるかとは思います。
- しかしそれは、効果測定が難しい目標ですよね。
盛本:それは言えますね。これもまたばかばかしい話だが、全国学力テストの質問項目にも、携帯電話所持が入っています。石川での調査はなくなるかと思うが、石川がいわゆる学力テストの点数が良いのは、携帯不所持のおかげだ、と単純にいいほうに彼らは結びつける。そういうこともあるかもしれないが、単純に朝ごはん食べたら成績がよくなる、みたいなね。そんなふうにして、「親は毎日朝ごはんを食べさせるように努力するように」なんて条例作るのと似ているな、なんて感じがするんだけど。そこまで決めるのかっていう。
- まあ、朝ごはんは作って欲しいと思いますけど、条例化というのは、ちょっと。
盛本:そうでしょう? そういう感覚なんですよ。だから要約すると、感覚の問題なんですよ。やっぱり、ちょっとねえ。今の進んだ市民社会の感覚とはいえない発想だと思うんだよね。もちろん教育界には、「だめなものはだめなんだ」という強制も教育には必要だとおっしゃる方もたくさんいるし、それも、まったく間違いとはいえない。学校で話し合いをしましょう、とか、親に呼びかけるとか、その程度ならいいと思っているのですが。
- 呼びかけなら、昨年石川県PTA連合会が「原則、小中学生に携帯電話を持たせない」という宣言文を発表してますよね?
盛本:そうですね。そういった中で子供達自身が、「やっぱり、これは僕らにとって大切なツールなんだ」といえば、子どもに正当に表現させ、大人は受け止め、対等に議論して、ということが子どもを育てるということになると思っているんですけどね。一方的に、「だめなんや!高校になったら買ってやるし!」というのはちょっと。

