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コミュニティサイトのあるべき姿 粉川一郎氏インタビュー2

2010年12月28日
武蔵大学社会学部メディア社会学科の粉川一郎准教授のインタビュー2です。

■コミュニティの価値を見出す グランドデザイン

- コミュニティサイトとしての成長の仕組みは、現状のネットの中で自発的に生まれていくものでしょうか?それとも提供者側が企業としてある程度、整えていくべきなのでしょうか。

自発的にというのは難しいですね。既存のネットサービスというものが企業中心に回りすぎたと考えています。15年前なら自発的にできたし、現在でもぼやっとした組織形態である2ちゃんねるならできると思うんですけれども、大多数の、特に青少年が使うようなサイトというのは、携帯の囲い込みモデルの中で参入してきた企業によって作られてしまったという面があります。だからユーザーの自発的なものを期待するより、携帯に限らず、運営する側の企業がネットというものに夢を見出してほしいんです。自社の携帯サイトでどういうコミュニティの中で、どのようなコミューケーションが行われ、それがどのような価値を生み出しているのかを見てほしいですね。昔、自治体が電子掲示板とかを作っていたのですが、たいていそれは失敗してしまいました。「市民がどのようなコミュニケーションをネットで行って地域のためにコンテンツ、物を生みだしていくのか」というコミュニケーションのグランドデザインが描かれてなかったんですよね。単に掲示板を設置しただけ。本来は、ネット上のコミュニケーションがどんな成果を生み出すか、その成果を生み出すまでのプロセスみたいなものをきちんと考えなければいけないと思います。グランドデザインがあれば、それに合わせてどんな掲示板のシステムを採用し、どういうファシリテーションをする体制をとるかを考えていけば良いのですから。そういう意味で、既存の携帯サイト等を提供する会社側でコミュニケーションのグランドデザインという視点を持つ必要がある思います。たとえば、ユーザーが一対一で親密になる場を作りたいのか、それとも10人、あるいはそれ以上の大規模なコミュニティを作りたいのか、それとも単純に情報をブロードキャストして、多様な人々の知識や生活の知を共有させたい思っているのか、様々な自社のサイトが作り出すコミュニケーションの新しい価値をある程度イメージして頂ければ、それに合わせてどういう管理をしていくスタッフを用意すれば良いのか、それともボランタリーにお手伝いをしてくれるユーザーを発掘をしなければいけないのか、というストーリーになっていくと思うんですね。

私が不勉強なのかもしれないけど、既存の企業にはそれが見えない。

- ネット上のそういったマイニングや、リテラシー教育のためのナビゲーションを行っているところもあるけれど、その仕組みは意外と知られていないですね。日本のコミュニティサイトとアメリカのサイトを比べてみると、アメリカは理念がしっかりとしている企業が多いですが、日本のサイトはその理念が見えにくいかもしれませんね。

本当は圧倒的に、テキストベースのコミュニティ作りは日本の方が長けているはずなのですが、そういう理念をパソコン通信からインターネットに移行するとき無くしてしまったという所があります。特に、私が良くないなと思ったのは1996、97年頃にパソコン通信がすたれてインターネットへ移行する時、コミュニティサイトとしてしっかりとした理念をもつ受け皿がインターネット上になかったんですね。結局あめぞうから2ちゃんねるへの流れへということになってしまった。

ネット上に、もう少し、おせっかいを焼く人を貼りつかせることが必要なんですね。彼らに対するインセンティブっていうのは、そのネットコミュニティの中で一目置かれていたり、顔役であるというようなことなんです。他のユーザーと差別化されたサイト上の少し違った役割を託された人を作れば、寝ずにアクセスしてくれるんですよね。完全にアカウントフリーみたいな匿名性電子掲示板だと成立しないモデルですけど、ネット人格の同一性、継続性がある場では、ネットの上でハンドルネームであっても○○さんとして認知されることがステータスになり、実際の報酬よりも生きるんですね。

そういう人はネット上で自己実現することに満足感を得ることができる。ネットの中での自己実現と現実のものはかけ離れていて全然構わないんです。安部内閣時代に言っていた再チャレンジじゃないですが、ネットの自分にはこういう価値がある、という安心感は、現実社会の厳しさの中での一つのセーフティネットになるかもしれない。そんなこともできるのがインターネットという新たな世界なわけですから。NIFTY時代はシスオペ、議長、そういうある程度の役割を与えているということが、実際にある種の報酬となっていたわけですから。

やり方は多様にあると思いますが、何らかのステータスを参加者の中誰かに与えて、その人が新たなユーザーの指南役、教育者になって循環するようなシステムが必要なんじゃないですか。コミュニティサイトの中でそうしたおせっかいを焼く人が増えることには意味があると思います。

- 魔法のiらんどではユーザーサポート掲示板というコーナーがあって、有志のユーザーがユーザーの質問に答えるサポート掲示板がある。運営側がそのページのウオッチだけしてボランティアの回答者の自治に任せています。こういった仕組みはかなり面白いと思いますが、限られた人しか活用しないですね。またこの仕組みを真似するところはあまりないですね。

基本的に大多数のユーザーは楽なほうがいいんですね。今の時代は全般的にそうですが、関わらなくて済めば関わらない。ネットの中でおせっかいなコミュニケーションをそんなにしたくないんです。昔はそういう人たちがリードオンリーメンバーになって人の発言を読んでいるだけになり、アクティブにやり取りする人々との棲み分けができていた。でも今は、場の多様性が確保されていますから、わざわざリードオンリーメンバーになってそのコミュニティにとどまらなくてもいい。それよりももっと閉じた場の中でコミュニケーションがとれればいい。他の選択肢がたくさんあるわけですよね。そうするとユーザーがそういう仕組みを使わなくなっているのはわかります。

だから、そんな風に楽なコミュニケーションに逃げないように、一段手前に学校的なもの、ネット上でネット社会というものについて学んでいく義務教育的なものが必要だと思います。現実社会の中で自己実現を図ろうと思えばある程度、社会について知っておくべきことがあるわけです。同じようにネット上でも、ネットの中にどういう系統のサイトがあるのか、サイトごとの考え方や構造、社会のメカニズム、システムなどを知る機会があっていい。現実社会では多様な場を学んでキャリアデザインしろって今、やっているじゃないですか。ネット上での自分のキャリアデザインみたいなものがあってもいいじゃないですか。

そうなるとインターネットを免許制にしろという話の方が私にとっては親和性が高いんですよ。ただ、それが○×式で回答するようなものでは意味がない。1年、半年でガラッと変わっていくネットの状況を先輩たちと話をする中で学んでいく。そして、ユーザーがある程度、理解していかないとネットの奥深く中に入っていけない。逆にそこを乗り越えられれば10歳でも20歳でも15歳でもいい。そういう感じでしょうか。

- セカンドライフにそういう島がありましたよね?

セカンドライフの話になってしまうと旗色が悪いですね(笑)。

ただ、自分たちはネットの住民なんだという視点に立って、ネット社会を良くするためにどういうユーザーを現実社会からひっぱってこようかという視点があってもいいんじゃないでしょうか。現実社会からネットを見るんじゃなく、ネット社会の中から、現実社会の人々を見る、という感じです。

次号に続く

(鎌田真樹子 株式会社魔法のiらんど 安心安全インターネット向上推進室 室長)


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